ワインのできるところ

「オーパス・ワンみたいなワイン」はどうやって探す?ナパ・ヴァレーのテロワール解説

2023年2月5日

「オーパス・ワンみたいなワイン」はどうやって探す?ナパ・ヴァレーのテロワール解説
 
オーパス・ワンは有名で人気で美味しいけど、いかんせん高い!
何がそれほど特別なのか、テロワールとワインの味わいの関係を紐解きます。
5000円のナパ・カベと味が違うのには、きちんと理由があります。
ワインの味わいの原因を知って、好みのワインを選ぶヒントとしましょう。
 
 

ナパヴァレー・ワイン・エキスパートとは

 
ナパ・ヴァレーのワインを啓蒙しそのブランド価値を高めることを目的とした、「ナパヴァレー・ヴィントナーズ」という生産者団体があります。
日本ソムリエ協会がそこに協力する形で、「ナパヴァレー・ワイン・エキスパート」の認定試験が行われました。
2022年が初回で2023年1月に2回目が行われ、片山もなんとか合格することができました。(昨年は撃沈しました)
 
 
その試験を通してナパ・ヴァレーのワインや歴史・気候などに詳しくなることができました。
今回はワイン選びに関係するところに絞って、その知識をシェアしたいと思います。
 
※次回の認定試験は2年後の2025年に行われると聞いています。
 
 

オーパス・ワンとはどんなワイン?

 
オーパス・ワンはナパ・ヴァレーでつくられるボルドーブレンドの赤ワインです
ボルドー・ブレンドというのは、フランスのボルドー地方で一般的なブレンドのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンを中心として、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドがブレンドされます。ときにマルベックも使われます。その比率は作柄によって毎年変更されます。
 
 
こんなワインはとってもたくさんあります。ボルドーやナパ・ヴァレーはもちろん、世界中でボルドーブレンドのワインはつくられています。
果たして何が、オーパス・ワンを特別にしているのでしょうか。
 
 

名前の一人歩きもある・・・・けど

 
オーパス・ワンは確かにいいワインだけど、今の値段の価値はないよ
昔から様々な高級ワインを飲んでいる方の中には、そう言う方もおられます。
 
気持ちはわかります。
オーパス・ワンの2010年が最新ヴィンテージだったころ、3.2万円くらいで販売されていた記憶があります。それが今や楽天市場で2019年は7万円前後です。ヴィンテージがリリースされるたびに10%ずつくらい価格が上がっていった計算です。
何か特別、大きく品質が向上する出来事などはありません。もちろん細かな改善は日々されているでしょうが、価格が倍になるほどの劇的な変化はないはずです。
 
値段を上げてもみなが買うから、市場原理で価格が高騰していったのです。その理由は「有名だから飲みたい」「持っていることがステータス」のような、名前の一人歩きが少なくないでしょう。
 
 
しかし決して名前だけのワインではありません。今の価格が適正化は別として、ナパ・ヴァレーを品質でリードしてきたのは間違いないのです。
 
 

オーパス・ワンの味わい

 
オーパス・ワンの公式サイトより、2019年ヴィンテージのテイスティングコメントを引用します。
 

2018年は完売です。

 
オーパスワン2019 は、ブラックプラム、ブルーベリー、黒スグリ、乾燥したバラの花びらのアロマが高く、かすかなミネラルのニュアンスが感じられます。きめ細やか なタンニンは、クリーミーでサテンのような質感をもたらします。優しく広がる酸味とフレッシュさが、ダークフルーツ、サボリーハーブ、エスプレッソ、カカオなどの風味を引き立てています。余韻に長引く、繊細なダークチョコレートの心地よい苦味が印象的です。
 
 
 

5000円のナパ・カベとは違う

 
オーパス・ワンは7万円ですが、同じナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなら5000円出せばいろいろ手に入ります
何が違うのでしょうか?
 
「厳選したブドウから、もっと丁寧につくられている」というのもウソではありません。ところが実のところ、オーパス・ワンの味わいは5000円のナパ・カベの延長線上にはありません。方向性が違うのです。
 
比較対象として、当店で最も多く売れるナパ・カベである「ナパ ハイランズ カベルネ ソーヴィニヨン」のテイスティングコメントを引用します。
 
フレッシュなベリー系果実味、ハーブ、ミント、森林、たばこなどの複雑ながらナパのヴァレーフロアのカベルネにある典型的な香りが立ち上がる。香ばしい樽のニュアンスと十分に熟したフルーツやモカの風味とハーブの香りが印象的。滑らかな口当たりからきっちりと引き締まったタンニンまでその特徴をしっかりと示し格上の味わいに仕上がっている
 
中川ワインHPより引用
 

 
 

違いのポイントは酸味

 
文字に起こしたときにはその違いは分かりにくいです。同じレベルでコメントを考えられる人でないと、テイスターの真意はなかなかつかみ取れません。
では『酸味』について注目して、テイスティングコメントを読み解けばどうでしょう。
 
オーパス・ワンの方には「ブルーベリー」「黒スグリ」といった、酸味を予感される香り表現があります。直接的に「優しく広がる酸味」との記述もあります。
それに対してナパ・ハイランズは酸味に触れられておらず、「熟したフルーツ」と酸味の低さを意味する表現があります。
 
 
熟したフルーツの果実味と樽熟成の甘い風味がドカンと押し寄せる。私が感じる5000円程度のナパ・カベの印象です。
それに対してナパの上級ワインはもっと上品。1口目のインパクトに注力するのではなく、一歩引いた控えめな気品を感じます。
 
この違いは単純に作り手の意図ではなく、ナパ・ヴァレーのテロワールが原因です。
 
 

海・山・霧・土壌・・・ナパのテロワールを形成するもの

 
ナパ・ヴァレーにおいてブドウの生育環境を決めるもの。
一つはナパ・ヴァレー内の南北のポジション。もう一つは東西の位置、正確には東西の山からの距離です。
それによって明確に生まれるワインのクラスが異なります。
 
 

ナパのカベルネはなぜ高い?

 
ナパ・ヴァレー産カベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、相場としてだいたい実売4000円くらいから。3000円台なら安い部類です。
1000円台2000円台が珍しくないカリフォルニアの他地区と比べてなぜ高いのか。それは原料ブドウが高いからです。
 

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

 
ナパ・ヴァレー産カベルネ・ソーヴィニヨンの平均取引価格は、1トン当たりおよそ$8,000だといいます。1$=130円で計算するとして、搾汁率(※)を70%と仮定します。
1トンのブドウから約930本のワインをつくることができる計算なので、ワイン1本あたりのブドウ原価が1110円程度ということになります。
実際にはここに醸造費用やボトル・パッケージ代、そしてワイナリーの人件費やプロモーション費用、利益など様々なものが乗っかって、「セラードア価格」となります。これが多くの人の手を経て数倍の価格となり、ワインショップに並ぶのです。
 
もちろんこの1トンあたり$8,000というのは平均価格。詳しい数字は資料がありませんが、そのブドウがどの地区・どの畑のものかで販売価格は大きく上下します
 
※単位量あたりのブドウをプレスして果汁を絞ったとき何リットルのワインが得られるか。
 

ナパ・ヴァレーのネステッドAVA

 
ナパ・ヴァレーの地理を説明するにあたり、その地形図と「ネステッドAVA」の紹介が必要です。
ナパ・ヴァレーのエリア内に含まれる、それぞれに個性的なワインを生むより限られたエリアのことです。
 
ブルゴーニュワインでいうと、広域「BOURGOGNE」の中に村名ワインをつくる村があるとイメージすればいいでしょう。
ひとつづつの解説はいたしませんが、下記に記載する地名についてはこの地図をご参照ください。
 
 
 

ナパ・ヴァレーの霧と海からの距離

 
オーパス・ワンがあるナパ・ヴァレーの中心地オークヴィルは、およそ北緯38度くらい。これは日本だと仙台市のあたりに相当します。
フランスのボルドー市がある北緯約45度と比べるとずいぶん南にあり、日差しは強くて温暖から高温になりやすい位置です。
しかし気候というのは緯度だけでは決まりません。独特の地形がナパ・ヴァレーの気候を多様なものにしています。
 

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

 
その代表格が、海からやってくる霧です。
カリフォルニア沿岸を流れる海流は寒流であり冷たいです。サンフランシスコからナパ・ヴァレーの間にあるサン・パブロ湾。そこから冷たい風が吹き込み、朝夕には霧がかかります
谷が霧に覆われると、霧に包まれたブドウ畑にはあまり日光が届きません。そうするとブドウは熟しにくくなります。ただし日中になると温度の上昇によって霧は晴れます。そうすれば豊富な日照でブドウの木はしっかり光合成を行い、ブドウは甘くなっていきます。
 
 
寒い地域ならブドウが熟しにくくて困ります。でもナパ・ヴァレーの気候は夏に乾燥し冬にまとまった雨が降る地中海性気候雨によってブドウが熟さない年なんてものは基本的にありません。むしろ暑くて早く熟しすぎるのが問題。ゆっくりと酸味を保ったまま熟した方が品質が高くなります。
 
冷たい風が吹き込むこと。霧が日光を遮ること。この2つの理由で、ナパ・ヴァレーでは南にいくほど冷涼で北に行くほど暑いのが特徴です。
 
 

霧の影響を受けない山のAVA

 
ナパ・ヴァレー全てが霧に覆われるわけではありません。
標高427m。ナパ・ヴァレーで霧に覆われるのは、高くてこのラインまで。つまりこの標高より高い畑では、霧に太陽が遮られることがないんです。
ブドウの実は直射日光を受けると、紫外線から実を守るために果皮を厚くします。そうすると果皮に含まれるタンニンが豊富になり、それはワインの味わいに現れます。
さらに夜間には谷底で暖められた空気が上がってきます。山岳部の方が谷底よりも夜は暖かいのです。気温の日較差が小さく、ブドウはよく熟します。
一方で斜面の畑は土壌が流出しやすいので、栄養価に乏しく収穫量はなかなか多くなりません。
 

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

ハウエルマウンテンんでは霧を見下ろす

 
ゆえに山岳部の地区で育つブドウを使えば、凝縮感が高くて風味がよく熟しており、タンニン豊富で力強いワインが出来上がります。
ハウエル・マウンテンはその全ての畑が標高427mより高所にあります。そのテロワールを見事に表現しているハウエルマウンテンAVAのワインが、この「ラ ホタ ヴィンヤード ハウエル マウンテン カベルネ ソーヴィニヨン」です。
 

 
他に「ダイヤモンド・マウンテン・ディストリクト」「スプリング・マウンテン・ディストリクト」「マウント・ヴィーダー」「アトラス・ピーク」などが山のAVAです。
 
 

山のAVAのカベルネはブレンドに重要

 
タンニンの強いブドウを使うと、それ単体でバランスをとるのは簡単ではありません。「ハウエル・マウンテン」「マウント・ヴィーダー」「アトラス・ピーク」などのネステッドAVAが表記されたワインは、そこまで多くは出回っていません。
 
しかしブレンド材料として使われることは非常に多いです。冷涼な地区で育つ繊細な口当たりのワイン、または果実味主体のワインに加えることで、力強さと味わいの立体感を与えることができるのです。
 
地区をまたいでブレンドする「Napa Valley」表記のワインが、より地区を限定したネステッドAVA表記のワインと比べて、必ずしも劣るとは限らない。それが広域「Bourgogne」と村名ワインとの関係とは違うところです。
 
 

ナパ・ヴァレーの土壌形成

 
山の上はむしろ暖かくて力強いカベルネを生む。では他の地区はどう違うか。それを説明するには土壌の話が必須です。
 
ナパ・ヴァレーは南北にはしる2つの山脈、西のマヤカマス山脈と東のヴァカ山脈にはさまれています
谷底部分の平野をつくる土は、東西の2つの山脈から運ばれてきました。雨が降り風が吹いて山を形作る岩石は風化していきます。水に流されて山のふもとから谷底へと土砂が運ばれ、そこに堆積します。
 
ナパ・ヴァレーでは山が風化して谷底の土壌をつくった。大きな石は麓に堆積し沖積扇状地を。細かな砂や土は遠くまで流されてヴァレーフロアになった
 
その際、粒の大きな石は山に近いところに堆積し、細かな砂や土がより遠くまで運ばれます。
 
 

谷底のヴァレーフロアが手ごろなブドウの供給源

 
細かな土の方が保水性が高く、植物に多くの栄養を供給できます。肥沃な土が深く積もった谷底平野では、ブドウの木は多くの栄養を得てたくさんの実をつけます。ゆえにヴァレーフロアの畑の生産量は高い傾向にあります。
 
小売価格で4000~8000円程度のワインに使われるブドウは、ほぼこのヴァレーフロアから供給されているとみて間違いないでしょう。
我々が「ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニョン」と聞いて想像する味は、正確には「ヴァレーフロアの」カベルネなのです。
 

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

 
写真はおそらくホーニッグ ヴィンヤード&ワイナリーのワイナリー周辺の畑だと考えます。だとすればラザフォードに位置する谷の中心よりやや東側にある畑で、典型的なヴァレーフロアです。
 

 
 

手ごろなナパ・カベの酸味が低い理由

 
東西に山脈があるため、ナパ・ヴァレーでは日の出が遅く日の入りが早くなります。
 
ヴァレーフロアの中心部では、山脈が太陽を遮る時間が一番短くなります。ゆえに畑は一番温暖です。
 
ナパ・ヴァレーでは中心部が最も暑く、朝日が遮られる東側斜面が次に厚く、西日が遮られる西側斜面が最も冷涼。
 
次に暑いのが西向き斜面、つまりナパ・ヴァレーの東側です。
夏の時期、その部屋が東に面しているか西に面しているかで暑さが違いますよね。西日の方が暑い。
ナパ・ヴァレーでも同じことが言えます。西日が当たる山の斜面は木がまばら。反対側の東向き斜面は木が生い茂っています。
 

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

西向き斜面のアトラス・ピーク

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

東向きの斜面

 
西側の山麓エリアにある畑が最も涼しく、ブドウがゆっくりと熟して高品質なワインを生みます。
 
 

最高の畑は山麓にあり 沖積扇状地

 
先ほどの風化により土壌が形成されるお話。山のふもとではその組成が違います。粒が大きい小石や砂利は、遠くまで運ばれず山のふもとのあたりに堆積するのです。
 
小石や砂利の土壌は水はけがよくて栄養素に乏しいのですが、それは悪いことではありません。そこではブドウの収穫量は少ないものの実は小粒で、素晴らしく香り高いワインが生まれます。実はナパ・ヴァレーにおいて最高の銘醸畑とされるものは、この山のふもとに広がる沖積扇状地にあるのです。
 

ナパヴァレー・ヴィントナーズHPより引用

 
水はけのいい砂利の土壌は、まるでボルドーのメドック地区。フランスからやってきた作り手たちが早くからこの山麓の畑に目を付けたのは、メドックと土壌が似ていたからでしょう。
 
 

ナパのグランクリュ ト・カロン・ヴィンヤード

 
1868年、ラザフォード地区にある沖積扇状地に目を付けたハミルトン・ウォーカー・クラブ氏がブドウを植樹します。これが後にナパ・ヴァレー最高峰の畑と言われるようになる、「ト・カロン・ヴィンヤード」の始まりです。
 
時代は下り、ト・カロン・ヴィンヤードは複数のオーナーが分割して所有するようになりました。実はオーパス・ワンもそのひとつです。設立の際にロバート・モンダヴィ・ワイナリーが所有していた区画の一部を継承したのです。主にト・カロンのオークヴィル内にある区画です。
 
この畑を所有しているオーナーの一つが「ベクストファー・ヴィンヤーズ」というナパ・ヴァレー屈指のブドウ栽培農家です。ベクストファーが所有している区画であることを示して、「ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤード」という畑名を冠したワインがつくられています。
商標の関係で「ト・カロン」の名前を使えるのは、ベクストファーとロバート・モンダヴィが所有する区画だけだそうです。
 
 

オーパス・ワンみたいなワインを探して

 
オーパス・ワンみたいなワインを飲みたければ、オーパス・ワンと同じ畑からつくるワインを探せばいい
オーパス・ワンの美味しさのワケは、霧や西側の山脈によって日照が制限される環境、そして沖積扇状地の土壌によるものが大きいと考えるからです。
 
区画は違うとはいえ、同じト・カロン・ヴィンヤードからつくるワインは有力候補です。上記の条件は同じだからです。
(オーパス・ワンはワイナリーの周りの自社畑の他に、契約畑からもブドウを調達しています。なので厳密に同じ畑からワインをつくることは不可能です)
 
では「To Kalon」の名の付くワインを見てみましょう。
 
 

 
 

オーパス・ワンと大して変わらない価格となってしまいましたね~。
「オーパス・ワンみたいなワインを~」という方は、似た味わいをもっと手ごろに楽しみたいはず。これじゃあ意味がありません。
 
 

別の沖積扇状地を探して

 
ト・カロン・ヴィンヤードはあまりに銘醸畑すぎて、そりゃ美味しいんだろうけど高すぎる
なので気を取り直して、オーパス・ワンの近くに畑を持つワイナリーを探してみましょう。
 
「Oakville Winegrowers」というサイトにて、地図から畑の所有者を確認できます。
 
(ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードやスクリーミングイーグルなど、いくつか記載のない畑もあるようです)
 
見つけました!オーパス・ワンの建物および畑から、道挟んで南側。「Napa Wine Campany」所有の「Pelissa Vineyard」。しかも当店で約6000円とオーパス・ワンの1/10以下!ゴースト・ブロックがつくるこちらのワイン。
 

 
ただし品種はジンファンデルです。
 
そうですよね?言いたいことはわかります。カベルネが飲みたいんですよね。
 
他にもオーパス・ワンの隣の畑からとれたブドウを使うワインはあります。
こちらの「テキストブック」というワイナリー。所有するHolmes Vineyardが、ト・カロンの中でオーパス・ワンが南側に所有する区画と隣り合っています
 

 
ただし!テキストブックに使われるのは、Holmes Vineyardのメルローのみ。このワインに入っている10%のメルローの中の幾分かが、オーパス・ワンの隣の区画のブドウです。それで「似ている」と言えるかというと・・・
 
もっと直接的に、味わいも似ているものはないのか。
ト・カロンの中にあるオーパス・ワン所有の北側の区画から、さらに北に1kmほど。
スタッグリン・ファミリー・ワインズの醸造所と畑があります。地域区分としてはオークヴィルではなくラザフォードに分類されますが、同じ沖積扇状地であり共通点がみられます。
 

 
このスタッグリンのフラッグシップ「カベルネ・ソーヴィニヨン」は、当店で現在3.5万円ほどとなかなかに高価。
しかし注目すべきはその下のクラスにあたる「サルース・カベルネ・ソーヴィニヨン」。
 

 
熟成の段階までは上級クラスと同じつくりをしており、ブレンドの段階でより分けるのだとか。
それで価格が約1.5万円まで下がるのですからお買い得というもの。
 
非常に香り高く様々な風味を感じながら、豊かな酸味が全体を上品にまとめています。
実際に比べて飲んだことはありませんが、私の中でのイメージではオーパス・ワンと同じ方向性にあると感じています。
 
 

オーパス・ワンをディスってワイン売るの、やめませんか?

 
ここまでご紹介したように、オーパス・ワンが高く評価されるその原因には、ナパ・ヴァレーのテロワールが深く関わっています。純粋に畑がいい位置にあるから、ブドウの質が高くてワインが美味しい。
 
消費者としては、原因がどうのこうのよりも結果としての美味しいを求める。それも理解できます。
だから「ブラインドテイスティングでオーパス・ワンよりも高得点だった。勝った!」のような宣伝文句に踊らされがち。
オーパス・ワンはそうやって手ごろなワインを売る踏み台にされることが最も多いワインの一つです。
 
 
そろそろ、そうやってオーパス・ワンをディスるの、やめませんか?それでワインを選ぶの、やめませんか?
そのワインを売りたいなら、そのワインのいいところアピールしたらいいじゃないですか。
畑の場所が違えばブドウの味わいやワインのスタイルも違います。それを一緒くたにした「美味しい/美味しくない」に意味があるとは思えません。
 
 

もっと「期待通りの味わい」を

 
ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンが、価格帯でそのスタイルに違いがあるのには、理由がありました
 
手ごろなナパ・カベのブドウはヴァレーフロアから供給されます。温暖でブドウの熟度が高くなりますが、酸味は控えめ。収穫量が多くなるため風味の奥行や複雑さ、余韻の長さには欠けがちです。
 
山岳地帯でつくるワインは、霧がかからないことでむしろ畑は温暖になり、豊富なタンニンを持ったワインが生まれます。一方で作業効率は悪く収穫量も少ないため、価格は高くなりがちです。
 
山の麓に位置する沖積扇状地の畑では、ナパ・ヴァレーを代表する最高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンが生産されます。ワインは香り高く、上品な酸味を持ち、何十年後も美味しく飲めるでしょう。一方でガツンと濃厚な風味はあえて控えめであり、ヴァレーフロアのカベルネとは方向性が明らかに違います。
 
 
ナパ・ヴァレーの東西どこに畑があるかでスタイルが変わる。さらに南北でも霧の影響の強弱で味わいが変わります。
実際の土壌組成は、今回ご紹介したものよりもっともっと複雑です。
だからこそブルゴーニュよりずっと小さなエリアにて、驚くほどの多様性があるワインがつくられるのです。
 
ナパ・ヴァレーのワインは全般に安い買い物ではありません。
だからこそハズレたくない。畑の位置とワインの味わいの関係を知ることが、期待通りのワインを選ぶ手助けになれば幸いです。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




YouTubeバナー

-ワインのできるところ
-, ,