ワイン初心者にとってお気に入りワインを探す近道は、他のお酒や飲み物の好みをヒントにすることです。
安い物をとりあえずいろいろ飲んでみるのもいいですが、目星をつけられるなら越したことはない。
口に合うタイプが一つでも見つかれば、飲んでいくうちに好みの幅は広がって聞きます。
ビールやウイスキーなど甘くないお酒がお好きな方へ、似た特徴を持つ手頃なワインをご紹介します。
安い物をとりあえずいろいろ飲んでみるのもいいですが、目星をつけられるなら越したことはない。
口に合うタイプが一つでも見つかれば、飲んでいくうちに好みの幅は広がって聞きます。
ビールやウイスキーなど甘くないお酒がお好きな方へ、似た特徴を持つ手頃なワインをご紹介します。
梅酒やカクテル、チューハイなど甘いお酒が好きな方へのおすすめはこちらの記事で▼
好みのお酒別 初心者におすすめワイン
あなたがワインは飲みなれていないけれども、何かしらのきっかけで興味を持ったとします。山ほど種類のあるワインの中で、何から飲んでいきましょう。どう選べばお気に入りを見つけやすいでしょうか。
この記事ではビールやハイボールのような、甘味の少ない次のようなお酒が好みである方へのおすすめをご紹介します。
ビールののど越しとほのかな苦みが好きな方におすすめ
ビールといってもクラフトビールを含めるといろいろな味があります。そのなかでも大手メーカーの缶ビール、スーパードライやプレミアム・モルツ、黒ラベルなどがお好きな方を想定します。
こういったビールは、その味自体が飛びぬけて美味しいかというと、そういうわけではないはずです。
ビールが好きな理由
〇味が濃くないからゴクゴク飲めること
それがゆえに毎日何杯も飲んでも飽きにくいこと
〇加えて料理をあまり選ばないこと
定番で飲み続ければいいので、選択する労力がないこと
〇炭酸とほのかな苦みによるスッキリ感
手頃な価格
上記のうち「〇」をつけた特徴を備えるのが、このかわいらしい見た目の微発泡ワインです。
スパークリングワインは常温で6気圧程度の泡の強さがあります。それゆえグビグビ飲むにはちょっと泡が強すぎる。「ペティアン」くらいが喉を鳴らして飲むにはちょうどいい炭酸の強さなのです。
品種特性ゆにそれほど複雑で豊かな風味は持たず、爽やかでシンプルな風味。そして余韻に心地よい苦みが残ります。夕食時に飲むにはこれがちょうどいいでしょう。小難しいことを考えず、気軽に開けて飲むのに適したワインです。
このタイプを気に入ったなら
あまり似たような味わいのものがたくさんあるタイプではありません。微発泡ワイン = ペティアン自体は珍しくありませんが、もう少し甘いフルーツの印象があるものが多いです。
「しっかり辛口のペットナット」で探せば、近いものが見つかりやすいでしょう。
スタウトやIPAなど濃厚系ビールがお好きな方におすすめ
同じビール好きでも、スタウトやIPAタイプのクラフトビール、ギネスなどの黒ビール系がお好きな方はまた好みが別でしょう。
味わいにパンチが欲しい。少しの量でも満足したい。余韻が長く続くのが好き。・・・
このような味わいが好きな方には、ワインの中でもどっしり重量感があるものがおすすめ。渋味の刺激は苦みとはまた別なので避けて、濃厚でありながら渋味穏やかな赤ワインを提案します。
ワインにおける「ビッグ」という表現は、アルコール度数高く樽熟成の風味もしっかり現れ、パワフルな味わいのものに使われがち。「ビッグでスムース」というのをコンセプトにつくられており、その通りの味わいです。
この味が気に入ったなら
カリフォルニアのレッドブレンドやジンファンデル、プティ・シラーなどの品種で3000円以下のものを探すといいでしょう。5000円くらいになるとまたスタイルが変わってくるので要注意です。
果実の濃厚な風味がしっかり現れる赤ワインです。プティ・シラーのワインはやや種類が少ないものの、よりどっしりとした口当たりです。
ウイスキーの香ばしい樽香がお好きな方におすすめ
ウイスキーの琥珀色はオーク樽熟成に由来し、香りの方向性においても樽は非常に重要です。
ウイスキーで「ホワイトオーク」と呼ばれるものは、ワインにおいては「アメリカンオーク」と呼ばれます。ヴァニラのような甘い香りを感じるワインは、シャルドネでつくる白ワインならたくさん見つかります。フレンチオークをつかって熟成する者に比べ、より明確に甘く香ばしいヴァニラ香を感じます。
こちらはシャルドネの産地としては温暖なスペイン産。熟したトロピカルフルーツのような風味を包むように、アメリカンオーク由来の豊かな樽香を持ちます。ウイスキー好きの方にとっては、きっとなじみのある香りに近く感じるでしょう。
この味が気に入ったなら
オーク樽熟成したシャルドネは、1500円程度以上ならあらゆる価格帯で見つかります。候補が多すぎて1本選ぶのが難しいほど。熟成に使う樽の種類が記載されていない場合も多いのですが、もし書かれているならアメリカンオークのものを。加えて新樽比率の高いものを選ぶと、樽が甘く豊かに香る白ワインが楽しめるでしょう。
糖質を気にしてもっぱらハイボール派な方におすすめ
健康に対する意識が年々高まりつつある昨今。お酒に関しても糖質を気にする人が増えてきました。そういう方が選びがちなのがハイボール。30g/L程度の糖質を含むビールに比べて少なく、罪悪感なく飲み続けられるからでしょう。
ただしアルコール自体にカロリーがあるので、ダイエット目的ならそもそも飲まないのが一番。とはいえこの記事を読んでおられるかたは、分かっていてもその選択はできないはず。私もです。
完全に発酵したワインの糖質は1Lあたり2g以下なので、糖質の少ないお酒の一つ。ただし白ワインの中には数グラムの糖分を意図的に残して発酵を止めているものもあります。またスパークリングワインは仕上げに12g/L以下の甘味を加えているものが多いです。
その仕上げの甘味を加えないタイプ、極辛口のスパークリングワインがこちらのカヴァ。熟度の高いフルーツの風味があるのでやせ細った印象はなく、キレのいい後味が楽しめます。
糖質を気にせずシュワシュワを楽しみたいあなたに!
この味が気に入ったなら
「ブリュット・ナチュール」「ブリュット・ナチュレ」などの表記のものを選べば、極辛口のスパークリングワインです。ただし奮発してシャンパンでブリュット・ナチュールを選ぶと、酸味がシャープで厳格な印象を持つものも多いので玄人向け。同じスペインの「カバ」から広げていくのがおすすめです。
焼酎のふわっと香る甘い香りがお好きな方におすすめ
「焼酎」にもいろいろありますが、ここで私がイメージしたのは広く流通しているような芋焼酎です。
特に芋自体の香りがあるわけではなく、癖のない純粋な甘い香りがアルコール感とともに漂う。味わいにアルコールの甘さはあるものの、糖質自体はほとんどない。アルコールの刺激自体は強いが、風味の複雑さはさほどなくシンプルな味わい。
そんな芋焼酎の特徴に合わせて、オーク樽熟成により甘い香りのある辛口赤ワインを選びました。
このワインはアルコール発酵のあと、新しいオーク樽に入れてされます。この熟成期間にオークの樽材に由来する成分がワインに添加され、ヴァニラやココナッツのような甘い香りがつきます。
しかしブドウ由来の糖分は完全にアルコールへと変わっているので、香りは甘いのに味わいはドライ。なので鼻をつまんで飲んでみると、甘さの印象がずいぶん変わります。
樽の香りと熟したベリーのようなフルーツ香が調和した、濃厚で飲みごたえのある赤ワインです。
この価格帯の赤ワインとしては適度に渋味がある方です。ただ焼酎の味に慣れた方には、これくらいの刺激はあっていいのではないかと考えました。
この味が気に入ったなら
似たワインを探す大きなヒントは新樽による熟成です。ですが100%新樽にこだわる必要はありません。ベリー系果実の風味表現が使われているものであれば、品種や産地が違っても共通点の多いワインは見つかります。
酸味や渋味が強いものでは、このワインの親しみやすい雰囲気と異なってしまいます。「上品な」「引き締まった」のような表現が使われるワインは避けるといいでしょう。
「全ての初心者におすすめのワイン」は存在しない
「ワインに不慣れな人がみな美味しいというタイプ」
そんな味があるのなら話は単純で分かりやすい。でもそんなものは存在しません。
ワインの好みは人それぞれだから。それに応じて世界中で多種多様なワインがつくられているからです。
初心者に優しくないのがワイン
ワインを販売する者として、ワインの魅力がもっと広めたいとは常々思っています。
一方でワインは楽しみ始めるのにハードルが高いお酒、初心者に優しくない飲み物であるのは否めません。
●種類が多くて何を選んでいいのかわからない
●きちんと楽しむにはいろいろなグッズが必要
●基本輸入されるものなので名前が憶えづらい
●専門用語が難解で説明が意味不明
●1人で飲むには1本の容量が多く、抜栓後は劣化する
●何といっても金額が高い
この事実は変えられない上で、それでも魅力を感じてのめり込んでいる方はたくさんいます。
だからこそあなたの好みにあわせて、手頃でもそこそこ美味しいワインを紹介し、入口のハードルを下げたいとこの記事を書いております
味が様々、好みも様々
ワインの種類がこれほど多いのは、一つにブドウをそのまま発酵させたものだからというのがあります。米や麦、芋などを原料とするお酒は、炭水化物を糖に変える「糖化」の工程があり、さらに必ず水を加えます。
原材料と工程がシンプルな分、原材料の質が出来上がりの風味をダイレクトに左右するのでしょう。
ブドウ品種や生産地域が同じだったとしても、大きく風味の違う味になる。混ぜて1種類の製品とするより別々の商品とした方が、よりたくさん買ってもらえるかも。種類を増やすメリットがあるのです。
他のお酒に比べたらおそらく醸造所設立の初期投資も少ない方で、それゆえ小規模生産者も多いのでしょう。
これだけ多種多様なワインの販売が成立するのは、それぞれを好んで飲む消費者がいるからです。もしもみなが好んで飲む味のタイプが決まっているなら、生産が集中して種類はもっと少ないはず。
好みが人それぞれな上に、多くの人は好みのタイプばかりではなくいろいろなタイプを飲むことを選ぶ。需要と供給がマッチしての種類の多さなのです。
食の好みは経験が影響する
人は慣れ親しんだ味を好む傾向にあります。逆にほとんど経験のない味を「美味しい」と感じることは稀です。
ゆえにあなたの経験次第でワインの感じ方は変化します。
特に赤ワインのタンニンによる渋味の刺激は、あまり他の食べ物・飲み物には感じないものです。だからワインを飲み始めたころは、強いタンニンを苦手とする人はとても多いです。
でもタンニンの穏やかな赤ワインから飲みなれていくと、舌がその刺激に慣れてきます。だんだんと渋いワインも楽しめるようになります。その上でタンニンの強弱には好みがありますが、飲み始めのころとは好みの傾向は変わるはずです。
ワインだけでなく食べ物・飲み物の感じ方は経験の影響を受けるので、万人に勧められる絶対はないのです。だから飲み手抜きに「間違いない初心者向けワイン」を議論するのはナンセンス。20歳でお酒を飲めるようになったばかりの人と、他のお酒は飲んでいたけれどワインには触れてこなかった40歳の人とでは、おすすめするものは当然違います。
好きなものとの共通点から選ぶ
だからこそあなたの好みに合わせることをおすすめします。ワインの好みはまだよくわからないでしょうし、言葉にするのも難しいはず。だからこそワイン以外の好みで考えましょう。
自分にとって経験豊かな味わいの方が「美味しい」と感じやすい。「美味しい」と感じるから頻繁に口にする。
そんな食べ物・飲み物と共通点のあるワインを選ぶことは、経験値の低いワイン選びをより失敗の少ないものにする方法です。
お気に入りのタイプから広げていく
これだけワインの種類が多く味わいの幅も大きいのに、お気に入りのタイプばかり飲むのはもったいない。そう感じるかもしれません。
でもワインの経験値が低いうちは、無理に美味しいと感じないワインを飲む必要はない。私はそう考えます。
好きなタイプのワインだけ飲んでいても、自然と好みは広がっていくからです。
段々とタンニンの刺激に慣れるように、好きなタイプを飲んでいるうちに他のタイプの感じ方も変わってきます。最初のころは苦手と感じるものが、いつの間にか美味しく感じ始めるかも。
「経験を積むとともに酸味が高いものも大丈夫になってきた」という話はよく聞きます。
嗜好品なのですから、美味しいものだけ飲んでいきましょう。
「同じ味をいつまでも」はワインに期待しないで
スーパードライやプレミアムモルツに代表される大手メーカーのビール。リニューアルされない限り、基本的にはいつでもどこでも同じ味です。
だから一度気に入ったなら、何度でも期待通りの味を楽しめます。だからビールを箱買いする人は珍しくありません。
お気に入りを見つけたら、その味をずっとリピートし続ける。
ワインでそれをするのは、実はややハードルが高いです。ワイン自体が変わるからです。
ワインは「いろいろな味がある」ということに喜びを見出せる方に向いたお酒です。
「同じものを大量につくる」のが難しい
ワインは画一的なものを大量につくることが難しい飲み物です。工業製品としての品質管理は、なかなか難易度が高い。
それは先述のとおり、ブドウ自体の風味・品質がなかなかそろわないから。栽培環境が変われば味わいが変わります。巨大で均一な栽培環境というのはなかなかありません。
巨大なタンクにワインをまとめてブレンドするにも限度があります。
1つの銘柄の年間生産量が1億本以上というのは、私は聞いたことがありません。1千万本というのもほとんどないでしょう。
対してアサヒスーパードライの2022年の出荷本数は約17億本。サイズが違うとはいえ、桁が違います。
ヴィンテージというものがある
ブドウの出来は年によって異なります。気温の推移や雨の量にタイミングなどが、一つとして同じ年はないからです。
ゆえに同じ銘柄でもヴィンテージが違えば風味が異なります。「前に飲んだ時は美味しかったのに・・・」というのは残念ながらよくあります。
ヴィンテージが違えば別の製品。だからこそほとんどのワインにヴィンテージ表記があるのです。
スパークリングワインは複数のヴィンテージをブレンドしてつくることも多く、「NV ノンヴィンテージ」つまりヴィンテージ表記のないものが多いです。でもメインとなるヴィンテージは当然あり、ロットによってやはり味が違います。
味が時間で変わっていく
ヴィンテージで味が変わるので、気に入った銘柄が見つかったならたくさん買い貯めしておくのも一つの手です。ただしワインはきちんと保管していても時間経過で風味が変化します。この変化は蒸留酒などよりはるかに大きいです。
ワインは高温に弱いので、ワインセラーなどで一定の低い温度に保たないと劣化してしまいます。
セラー保管したとしても数年単位で風味は変化していきます。良い方向に変化し『熟成』していくものもありますが、それは概ね中から上級のワインにおいてのみ。3000円以下の手頃なワインのほとんどは、緩やかに劣化していきます。
(これはワインの商品説明にあるテイスティングコメントと、あなたが感じる風味が違う理由にもなります)
- フルーツのフレッシュな風味が弱くなる
- 渋味が弱くなって締まりがなくなる
- 酸化のニュアンスを感じるようになる
手頃で美味しいお気に入りの銘柄も、その美味しさをずっと保つことはできません。
その時その時にしか味わえない。一期一会であることもワインの魅力であり、面倒くささなのです。
お気に入りワインを味わい続けることはできない。だからこそ「いろいろ飲む面白さ」を魅力に感じている人が、ワイン好きには多いのです。
タイプで絞り込んでいろいろ試す楽しさを
いろいろな味があるのがワインの魅力とはいえ、買ったけれども口に合わなかったワインを飲み切るのは苦行です。かといって捨ててしまうのももったいないし生産者に申し訳ない。
何千本とワインを買って飲んできた人でも、「おや?想像してた味と違うぞ」ということはあります。良い方にも悪い方にも。
でも経験を積めばおおよそのタイプは推測できます。
通販で手に入るワイン数十万種類から1本を選んで買うなんて無理です。
でもあなたが好きそうなタイプ、手を出しやすい価格で絞ることができれば選べる。数十種類なら時間をかけて順番に試すこともできますし、口に合わないものは少ないはず。
好みのタイプに絞って選んでも、やはり銘柄によって風味の違いを感じます。どちらも美味しいのに比べれば違う。それが面白い。
そのように絞り込むためのヒントが、今回ご紹介した「この味が気に入ったなら」であり、当ブログで常々紹介している選び方のヒントです。提供している知識が、あなたのワイン選びをより快適にできることを願っています。