ワインの味わいはワイングラスにも大きく左右されます。
一通りのワイングラスをそろえた方は、よく使うタイプで高級なワイングラスに手を出してもいいでしょう。
同じワインでも、グラスが上質なら一段階高級な味わいに感じさせてくれます。
高価なワイングラスは何が違うか。選び方のポイントをご紹介します。
まずは4タイプをそろえよう
よほどワインの好みが狭い方。「ブルゴーニュのピノ・ノワールしか飲まない」という方は、最初から高級ワイングラスを買うのもいいでしょう。
でもいろいろワインを飲みたくて、ワイングラスをあまり持っていない方は、まずは基本の4タイプをそろえることをおすすめします。
初心者が揃えるべき4タイプ
基本の4タイプとは、次の4つです。
- 白ワイングラス(ユニバーサルグラス)
- ボルドーグラス
- ブルゴーニュグラス(ピノ・ノワールグラス)
- フルートグラス(シャンパングラス)
ワインの味わいは非常に多様です。だからその魅力を発揮させることのできるグラスも様々。上記のタイプにおおまかに程度分類できるということです。
自分の好みを見つけて上級へ
たくさんワインを飲むにつれ、自分の好きなタイプのワインがわかってきます。そうすると好きなタイプのワインを飲む頻度が増えます。
使う頻度の高いタイプのグラス。そのグレードを上げることで、同じワインでも効率的により美味しく飲むことができます。
そう、1万円2万円するような高級グラスがあるのは、何もかっこつけだけではありません。適切なグラス選択をするなら、そのワインの魅力をより引き出すことができる。それを実際に消費者が感じているからこそ、高価なワイングラスが売れていくのです。
高級ワイングラスの目安
いくらのグラスから『高価・高級』と言えるか。価格の感じ取り方は人それぞれでしょうが、だいたい1脚5000円くらいからハッキリと違いを感じられると私は考えます。
基本の4タイプのグラスについては、「1脚1000円以上」を目安としました。それ以下のグラスは往々にして小さすぎて、ワインの香りの特徴を発揮しにくいのです。
その点1脚1500円程度になってくると、「コストカットのために小さくする」ということはありません。では高級ワイングラスは何が違うのでしょうか。
高いワイングラスと安いワイングラスは何が違う?
ワイングラスは薄くて軽いほど高価です。そして大きさにも違いがありますが、先ほどサイズについて述べたことと矛盾はしません。
そして一部の高級ワイングラスは、向いているワインのタイプを4つ以上に分類します。
薄さが違う
高価なワイングラスを持ってまず驚くのが、大きさの割に圧倒的に軽いことです。それはガラス自体がとても薄いから。
脚の部分も細くて、シルエットが非常に上品です。
「ワイングラスのリムが薄いほど口当たりがいい」と言われています。
グラスを口につけるとき、確かに飲み口が薄いとグラスの存在感があまりありません。よりワインの味わいに集中することができます。
これは別にワインに限りません。ビールもグラスが薄い方が美味しいです。
リムの薄さがワイングラスの価格による一番の違いです。
素材が違う
ワイングラスはプラスチック製を除きガラスでつくられるのですが、ガラスの中にもいくつかの種類があります
食器全体で一番メジャーで手ごろなのが「ソーダガラス」。
二酸化ケイ素、酸化ナトリウム、酸化カルシウムが主成分です。酸化カリウムが入ることもあります。
それに対して高級なワイングラスに用いられるのが「クリスタルガラス」。
酸化鉛を多く含有し、比重が重くなり、屈折率の関係でより美しくなります。
バカラやロブマイヤー、リーデルの「ソムリエ」「ヴェリタス」シリーズなどはこのクリスタルガラスをつかっています。
軽くて強いとされているのが「カリクリスタル」です。
鉛の代わりにカリウムを使ったガラス。環境保護の視点から、鉛の使用が忌避される傾向にあるからか、素材としてよく見かけます。
当店のグラスでは「WINEX HTT」シリーズや「TSURU」、木村硝子店の「サヴァ」などがカリクリスタルです。
価格としてはミドルレンジのワイングラスに使われます。
参考文献:株式会社 湘南洋食器様
耐久性が違う
高価なワイングラスほど長持ちしてもらいたいものですが、残念ながら薄いガラスは当然割れやすいです。
1000円以下のグラスも素材の性質上割れやすかったりするのですが、それ以上の価格帯では高価なものほど割れやすかったりします。
ワイングラスのメーカーによっても結構違います。私が噂を聞く限り、とりわけ「割れやすい」と聞くのは「リーデル」です。
経験的にリーデルのワイングラスは少なくとも「丈夫」とは言えません。しかしリーデル社がワイングラスのメーカーとして大手であり多くの人が使っていることを考えると、必ずしも「脆い」とは言えないのかも。たくさんの人が使っていたら、それだけ「割ってしまった」の声はよく聞くものですから。
数値化はできない耐久性
ワイングラスの「割れにくさ」って、本当に経験的なものなので、私もそれほど多くは知りません。
どんなグラスも机から落とせば割れます。(プラスチック製でもない限り)
軽い衝撃で割れてしまったとき、「あ、このグラスは割れやすいんだ」と強く印象に残るものです。でも実はそのショックはとどめの一撃で、衝撃が蓄積してのことなのかもしれません。
「新品で空の状態で机の上で倒して割れない」なら一定以上は丈夫と言っていいでしょう。割れやすいものはこれだけで割れます。
とはいえワイングラスの耐久性は数値化できるものではありません。
大きさが違う
同じ系統のワイングラスにおいて、高級なものの方がよりサイズが大きいことが多いです。
例えばブルゴーニュのピノ・ノワールに適したワイングラス。
当店で取り扱いのあるこのグラスの容量は705mlです。
そしてこの上級にあたる「リーデル ソムリエ ブルゴーニュ グランクリュ」(お値段5倍!)
このグラス容量はなんと1050mlです。ワイン1本まるまる余裕で入ります。
これは決して「大きいから高い」のではありません。
「このクラスの高級ワイングラスを購入される方は、高級なワインを飲んでいるだろう」
⇒「高級なワインは豊かな香りを持つものが多い」
⇒「ボリュームのある香りを最大限発揮させえるには、もっとグラスを大きくしなければ」
つまり簡単に言うと「高いから大きい」のです。
ワインの種類によっては、それほど大きなグラスを必要としない場合も多くあります。手ごろでそれほど香りが強くないワインに大きすぎるグラスを使うと、香りがぼけてしまうことだってあります。
だから高級グラスといっても用途によってはそう大きくありません。
より専門的になる
高級なワイングラスの方が、シリーズの中に多くの種類がある場合があります。
例えばリーデルの「ヴェリタス」シリーズ。当店で取り扱いのないものも含めると10種類もあります。「ソムリエ」シリーズは16種類です。
リーデル社は「ブドウ品種によって適したワイングラスの形は違う」というのが信条です。だから主だったブドウ品種ごとにワイングラスが展開されています。ピノ・ノワールなどはオールドワールドとニューワールドでも違いがあります。
品種ごとの展開という点ではリーデル社が飛びぬけています。しかし他のメーカーも高級なグラスに割と種類があるところが多いです。
いろいろなワインを飲む方は、次々に高級グラスが欲しくなってくるので、お財布が大変です。
マシンメイドとハンドメイド
もう一つワイングラスにおいて重要な要素は、マシンメイドかハンドメイドかです。
当然機械で大量生産するほうがお手頃で、職人が1脚ずつつくると高価になります。
ハンドメイドグラスは薄い
現状機械でハンドメイドより薄いグラスをつくることはできないようです。
ですのでハンドメイドグラスの方がマシンメイドより薄い。言い換えると手作りで分厚いグラスをつくっても価値がないので、製品化されないのです。
持った時に「軽い!」と感じるグラスは、おおよそハンドメイドと思っていいでしょう。
薄いワイングラスは絶対「チンっ」しない!
乾杯の時にはグラスをカチャっとする。
分厚いガラスでできたビールジョッキなら問題ありません。でもワイングラスは基本「チンっ」しないのがマナー。特に高級ワイングラスは絶対やめてください。簡単に割れてしまいます。
グラスを目の前に掲げて「乾杯」という。
私はあまりマナーについて細々言いたくないほうですが、これに関しては危険が伴うので、強く止めます。
ハンドメイドグラスは製造誤差がつきもの
手作りならではの宿命。ハンドメイドグラスには製造誤差がつきものです。重さも微妙に違います。
1脚買うだけなら比較対象がないので気になることはありません。
でも数脚セットで買って棚に並べて保管するなら、細かい方は気になるかもしれません。
「実店舗で現物を見て買いたい」という気持ちもわからないではないです。
グラスの薄さと食器洗浄機
飲食店で使用される方にとっては、食器洗浄機を使えるかどうかは重要なポイントでしょう。
家庭で食洗器を持っておられる方も、わざわざそれだけ手洗いするのは面倒に感じられるはず。
そういった方はグラス購入の際に食洗器可能かどうかは必ず確認しましょう。通常は販売ページに記載があります。
耐熱ガラスであれば基本的には大丈夫とされていますが、個人的には疑問を持っています。
食洗器はしっかり脂分を洗い流すため、最大80度くらいの熱湯が使われます。室温だったグラスが数分の間に80度まで熱されて、洗いあがって冷めていくのです。その温度変化は、1回では割れなくても蓄積するのではないか。グラスの寿命を縮めているように感じるのです。
私は割れてショックの大きい価格のワイングラスは手洗いしたいのですが、皆さんはどうでしょう?
おすすめ上級ワイングラス
初めて高級ワイングラスを購入するなら、2つの考え方があります。
①自分の好きなタイプのワイン専門のグラスを購入する
②なるべく使いまわしの効くグラスを購入する
使いまわしをするなら、やはり白ワイングラスが一番でしょう。
自身の好みと飲むワインの偏り具合で判断されることをおすすめします。
ブドウ品種で選ぶ上級ワイングラス
好みのタイプの比重がかなり高い方は、ブドウ品種に応じたワイングラスを購入されることをおすすめします。
当店でなら、リーデルの「ヴェリタス」シリーズです。
例えば樽熟成したシャルドネ。丸く膨らんだグラスが適しており、ブルゴーニュグラスでもある程度楽しめます。
しかし並べて比べるなら、ボウルの背丈が低い「オークド シャルドネ」グラスの方がやはり香りをハッキリと感じます。
ピノ・ノワール用のグラス、オールドワールド用とニューワールド用でリムのところが少し上に伸びているかどうか。これだけの違いで確かに向き不向きが分かれるのが面白いところ。
もし余裕があるなら、両方揃えて比較するととても面白いです。
スパークリングワイン用のグラスは、「フルートグラス」とも呼ばれて細長い形状です。
でもシャンパンの豊かな香りを広げるには、容量が小さすぎます。
だからこそ、白ワイン用とあまり見分けのつかないこのグラスです。
「ヴェリタス」のシリーズはマシンメイドながら結構リムが薄いです。
グラスのサイズが大きめなので軽さはあまり感じませんが、下級クラスと比べるとこのカベルネ/メルローグラスも口当たりがハッキリ違います。
いろいろ使いまわしたい上級ワイングラス
当店の上級グラスの中で、1脚で使いまわしを考えるならこのWINEXの白ワイングラスがおすすめ。
私自身が家で使っているグラスで、かなり軽いです。ピノ・ノワール以外はたいていこのグラスで飲んでいます。
5000円強という価格は、一般人の金銭感覚からすると高価でしょう。でもワインフリークの狂った金銭感覚からすると、「ハンドメイドで5000円くらいならお手頃だね」なんです。
「リムの薄さによる口当たりの差」はしっかり感じられますので、2000円以下の手ごろなグラスからのステップアップにちょうどいいグラスでしょう。
自分の飲み方にあわせた高級ワイングラスを
基本的に高価なワイングラスの方が、よりワインを美味しく感じさせてくれます。
しかし自分にとって高すぎるワイングラスはあまりおすすめしません。
なにせワイングラスは割れてしまう・割ってしまうことがあるからです。
落ち込んで3日で立ち直れる価格で
洗い物の時に他の食器にぶつけた。
拭き上げの時に力を入れすぎた。
酔っぱらって手をひっかけテーブルから落とした。
全て体験済みです。3つ目は買って2週間程度のハンドメイドグラスでした。
価格に寄らずワイングラスを割ってしまったら落ち込みますよね。もちろん高価なグラスほど、買ってすぐであるほど落ち込みは深いでしょう。
目安として、割ってしまったとしても3日くらいで立ち直れる価格。「高級」といってもそれくらいの価格で抑えておくべきだと私は考えます。
でないとせっかくのいいグラス。「割るのが怖くて使えない」ということになりかねない。
ワイングラスはつかってこそ価値があります。無理に高いものを買わないことを推奨します。
ワイングラスは翌朝洗う
リーデル社は「ワイングラスには水をためておき翌朝洗う」ことを推奨しています。
なにせ酔っぱらった状態で繊細なワイングラスを洗って拭き上げるのは、そりゃリスクが高い。なら翌日に素面の状態の方がいいと。
グラスのためにもケガをしないためにも、「酔ったら洗わない」でもいいんじゃないでしょうか。
高級ワイングラスで一歩進んだワイン体験を
当店で扱っている5000円程度のワイングラスも、全体からみればせいぜいミドルレンジ。
1脚2万円、3万円するようなもっと高級なワイングラスもあります。
中には見栄えの違いで高くなっているものもありますが、きちんと機能的な理由もあるのが高級ワイングラスです。
そんなグラスは、見た目から、手に持った軽さから高級感が伝わってきます。そうすれば自然とグラスを大切に扱いますし、ワインとその時間を大切に味わうでしょう。
高価なワイングラスは、あなたのワイン体験を一歩進んだものへと導いてくれるはずです。