「最近、家でワインを飲むのが楽しくなってきたんだよね」
自分でワインを選んで買うようになったワイン初心者のあなた。そろそろワイングラスにもこだわりたくなってきませんか?
ワイン中級者に進む前に揃えるべき、4種類のグラスをご紹介します。
ワイングラスの各部名称
ワイングラスの説明をする前に、グラスの説明に使われる名称をご紹介します。
ステムのことを「脚」、プレートを「フット」と呼ぶこともあります。
また、ワイングラスを数えるときは「1脚、2脚」と数えます。
家飲みワインを始めるなら、まずは100円で
今回の記事は、ワインを通販で購入し始めた程度の初心者の方を想定して書いています。
もしも「家でワインを飲んだことがない!ワイングラスは初めて買う」という方なら、ワイングラスの前にこのグラスをおすすめします。
ダイソーで売っている、脚のないワイングラスのような形をしたグラスです。
(※取り扱いは店舗や地域で異なる可能性があります)
飲み始めの方は、グラスにお金をかけるよりもいろいろなタイプのものを飲んでみたいでしょう。私もそれをおすすめします。
後述する好みの自己診断にもつながりますが、まず自分が好きと感じるワインを見つけるところからスタートすべきです。
ダイソーには200円か300円でワイングラスを売っていますが、「とりあえず飲んでみる」レベルには使えても、その後は全くの力不足。ゴミにしかなりません。
その点このグラスなら、水飲み用なりなんなり使いまわしが効きやすい。ムダにならないのです。
本当の初心者の方はこちらの記事もご参考までに。
ワイングラスの意義
ワイングラスほど機能性がデザインに優先される飲み物容器はないでしょう。
低価格なものから1脚1万円を超える高級品まで、基本的には無色透明のガラスです。
その理由は、ワイングラスの形状がワインの香り方や味わいに影響を及ぼすからです。
ワイングラスで香りが変わる!
これはもう論より証拠。
細長いボルドー型のグラスと丸いブルゴーニュ型のグラス(詳細は後述)を用意して、同じワインの香りをそれぞれで比べてみましょう。
ほとんどどんなワインでも違いは出ますが、だいたい2000円以上の赤ワインならよりハッキリ感じ取れます。
これは片方に入れたワインを他方に移し替えても、ちゃんと再現されます。
香りの感じ方に引っ張られるのでしょう。
実際に口に含んだ時の味わいも違います。
香りがグラス形状で変化する理由については、明確な理論の記載を見たことがありません。
おそらくワイングラスのメーカーに就職でもしない限り、学ぶのは難しいかと推測します。
ともあれ、経験的に「こういうワインはこんなグラスが適している」というのはお伝えできますので、後ほどグラスごとにご紹介します。
ワインの色合いを楽しむ
ワインは色合いや粘性から様々な情報を読み取れます。
赤ワインなら色合いの濃さから凝縮度を想像したり、色調から産地の温暖or冷涼を予想することができます。
液面の輝きは酸味の高さを反映し、ワインが壁面をつたう涙からはアルコールの強弱や粘性が読み取れます。
故にワイングラスは透明でなくてはいけません。
レーザープリントでワイナリーやお店のロゴが描かれたグラスはありますが、それもワンポイント程度。
機能性が優先されるため、ワイングラスのデザインバリエーションは非常に限定的です。
温度変化を与えないために
ワインは温度によって味わいが大きく変化する飲み物です。
よってワイングラスはワイン自体に温度変化を与えない方が望ましい。
通常ワイングラスは常温で保管されます。
分厚くて重いワイングラスはそれだけ熱を蓄えますから、ワインの温度を上げてしまいがちです。
高級なワイングラスが薄くて軽い理由の一つでもありますし、ワイングラスに模様などが刻まれない理由でもあります。
また、ワイングラスにはステムがついています。
グラスを持つときにステムを持つと、ワインに手の体温を伝えることがありません。
ステムがついていればグラスを倒しやすくもなりますし、保管スペースも大きく占有します。
にもかかわらずほとんどのワイングラスにステムがあるのは、デザイン的な意味もあるでしょうが、機能的な意味が大きいのです。
ワイングラスはステムを持たないとダメ?
ワイングラスを持つ際は、ステムの部分を鉛筆をつまむようにして持つか5本の指で挟むように持つ方が多いんじゃないかと思います。
小さ目のグラスの場合、中指と人差し指でプレートを挟み、人差し指を巻き付けて親指で固定するのも、安定感が高いです。
しかし、「ステムを持たないのはマナー違反だ、ワインの素人だ」と見下すのはいただけません。
中指と薬指の間にステムを通してウイスキーグラスのように持つ、単純にボウルをつかむ。別に構いません。
ワインが冷たすぎたので手の熱で温めるためという場合もありますし、そもそも短時間で飲み切るなら熱伝導は無視できます。
たとえば立食パーティーのような場では、接触によりワインで他人の服を汚さないことが何より重要でしょう。
単純にその人の好みとして、ボウルをつかんで飲むのが好きなのかもしれません。
マナーとはお互いが気持ちよく過ごすための行動の規範です。
自身の行いには理由を持ちつつ、それを他人に押し付けない寛容さを持つことこそ、ワインの場にふさわしいマナーだと考えます。
ワインはグラスの1/3以下
スパークリングワイン以外のワインを注ぐとき、グラスの1/3を超えて注ぐことはまずありません。
なぜならボウルの中の空間は、ワインの香りを溜めて最大限楽しむためのものだからです。
スワリングと言って、ワインはグラスの中で回して空気に触れさせることで、香りが広がります。
グラス内のワインが多いと、このスワリングが十分にできません。
これはワインのマナーとして知っておくことを強くおすすめします。
ワインをグラスになみなみと注ぎ入れるのは、割と品位を疑われる行為だと私は捉えています。
先ほどは「マナーを押し付けないのがマナー」とは言いましたが、さすがにもしも友人がこれをしたら私は止めます。
高級レストランでパスタをズルズルすするのと同レベルだと思ってください。
こちらの動画で、スワリングのやり方を紹介しています。
レストランでちょっといい格好するためにも
ワインの一人分は通常で100ml~150mlです。
たとえばカジュアルなレストランに2~3人で訪れ、ボトルワインを注文したとします。そこは客が自分でワインを注ぐスタイルです。
そんなときさっと「私が注ぐよ」とボトルを手に取れば、ワイン好きとしての株も上がるというもの。
こういうときにはボトル1本3等分してしまうのではなく、上記の容量を目安に同じくらいの量を注ぎましょう。
各自の飲むペースに合わせて、時折継ぎ足してあげると、気遣いをアピールできます。
そのためには、常日頃から自宅で飲む際にも、決めた容量を注いで飲む練習をするといいでしょう。
私は今はワインをサーブする仕事ではありませんが、それでもグラスに関わらず100ml±10mlくらいで注げるはずです。
購入前にワインの好みを自己診断
おうちで先述のダイソーグラスで飲むなり、お店で飲むなりして、まずは自身が好みそうなワインのタイプを把握してください。
赤ワイン、白ワイン、スパークリングワイン。赤ワインならしっかりとしたタイプと上品なタイプ。(お店で注文するなら、カベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワールというブドウ品種のワインを飲めばいいです)
これらをとりあえず飲んでみて、「何種類か飲んだけど全部嫌いだった」というなら、そのワインに適したワイングラスは後回しにしましょう。
「好きなものもあれば、イマイチなものもあった」というのであれば、いろいろ飲み進めるとバッチリな好みが見つかるかも。ぜひグラスを用意しましょう。
例えば炭酸飲料が苦手なのに、スパークリングワイン用のグラスを買う必要はありません。
この段階での自己診断はそれほど難しく考える必要はありませんが、無駄なお金は使わないようにしましょう。
ワイングラスの基本のタイプ4つ
それではワイン初心者がまずそろえるべき、4つのタイプのワイングラスをご紹介します。
苦手なタイプのある方は、この中から不要なものを減らしてください。
ボルドーグラス
フランスのボルドー地方のワインを飲むのに適した形状で、そのほかの地域のワインにも多く用いることができます。
卵型に近い縦長のボウル形状で、口の部分がややすぼまっているのが特徴です。
形状 | 縦長の卵型 口が狭い |
目安容量 | 450~700ml |
適しているワイン | カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、ジンファンデルなどの品種を用いたボディのしっかりとした味わいの赤ワイン |
ワインの口が狭いので、グラスを傾けたときにワインがストレートに舌の奥の方に届きます。
口全体に行きわたりにくいので、渋味の強いワインもまろやかに楽しむことができます。
ブルゴーニュグラス
フランスのブルゴーニュ地方のワイン、ピノ・ノワールを飲むのに最適なのがこのグラス。「ピノ・ノワールグラス」とも呼ばれます。
基本的に一番容量の大きなグラスであり、ワインが空気に触れる面積が最大です。
形状 | 球形に近く大型 |
目安容量 | 600~900ml |
適しているワイン | 世界中のピノ・ノワールの他、オーク樽熟成した高級なシャルドネやネッビオーロなど。 |
香りにボリュームのあるブドウ品種に適しており、その香りをより豊潤に楽しむことができます。
グラスを傾けたときにワインが舌全体に広がりやすく、酸味に魅力のあるブドウ品種の特徴をしっかり捉えることができます。
フルートグラス
スパークリングワインを飲むための細長いグラスをフルートグラス、またはスパークリンググラスやシャンパングラスと呼びます。
他のグラスに比べて、注いだ時にワインの高さができるので、その水圧もあって炭酸の泡が美しく上ります。
この泡をより美しくたたせるため、底部にあえてキズがつけてあるものもあるといいます。
形状 | 縦長のほっそりとした形、ものによってはチューリップ型 |
目安容量 | 150~250ml |
適しているワイン | 手ごろなスパークリングワイン |
この泡の美しさがフルートグラスの1番の利点ですが、逆に利点はほぼそれだけということもできます。
特に細いタイプは高級なスパークリングワイン、特にシャンパンを飲むのにはあまり向いていないのです。
香りがあまり広がらず、味わいが硬い印象。場合によっては苦味を感じやすくなることもあります。
そんなフルートグラスですが、ビールを飲むグラスとしてつかうとなかなか優秀ということは付け加えておきましょう。
白ワイングラス
形としてはボルドーグラスと同じ。ただしサイズが小さめです。
実はこの形が一番使いやすい。
「適さないタイプのワインが非常に少ない」というのが、白ワイングラスの特徴です。
形状 | 縦長の卵型で小ぶり |
目安容量 | 300~450ml |
適しているワイン | 手ごろなワイン全般、大多数の白ワイン、高級スパークリングワイン |
例えばテイスティングセミナーのような、同じ形のグラスが大量に必要なとき。
まず間違いなく使われるグラスは白ワイングラス、あるいは小ぶりなボルドーグラスです。
よく家に友人を招くような方が来客用グラスを1種類考えているとしたら、この白ワイングラスが最適でしょう。
グラスが大きすぎる場合もある
飲むワインのグレードに比してグラスが大きすぎる場合、香りがぼやけてむしろ感じにくくなってしまうこともあります。
例えばこちらのワインなど。
ブドウ品種はピノ・ノワールなので、普通に考えたらブルゴーニュグラスが適しています。
しかし、約1000円と廉価であるゆえ、それほど香りのボリュームがありません。
ブルゴーニュグラスでは香りがほとんど感じられません。白ワイングラスにしたほうが香りがハッキリします。
グラスは大きければいいというものではありません。
いろいろなグラスが家にあれば、最適なものを見つける楽しみがあります。
通販ワインショップのいいわけ
今回ご紹介したグラス、当店の扱っているものは6脚セットだったり高価だったりと、手の出しづらいものでしょう。
それは承知しているので、お住まいのお近くにワインショップや食器店があるのであれば、そちらでぜひご購入下さい。
(ホームセンターはおすすめしません。たいていの場合、グレードが低すぎます)
目安として、1脚1000円以上は出すべきでしょう。
発送がネック
ではどうして葡萄畑ココスが手ごろなグラスのばら売りをしないかというと、発送の問題です。
ワイングラスという脆い商品を発送するには、梱包にも気を使います。
また、メーカーから送られてくる手ごろなグラスは6脚セットが多いです。
店頭で販売するなら緩衝材で包むだけでいいでしょうが、宅配便で1脚単位で送るなら箱が必要です。
ワイングラスはいろいろな形があるので、場合によっては数種類の段ボールを購入して保管する必要が出てきます。
1脚1000円のグラスに、100円の箱を使っていては手間ばかりで利益が出ません。
遠慮なく他店を利用してください!
そんなわけで、ワイングラスは手近なところで入手していただいて結構です。
4種類の基本的な形と、後述する安価・高級品の違いを知って頂き、グラス選びに役立ててください。
もし近くに入手できるところがなくて通販に頼るにせよ、食器屋さんの方が安いです。価格競争するのがバカらしくなるほどに。
当店はほかにないようなワイン提案に自信を持っております。
ワイン初心者の方が自分で選んでワインを楽しめるようになるお手伝い。そちらにこそ力を注ぎたい。
ワイングラスの供給といった他店でも代替できることは、お任せでいいかと考えております。
ワイン中級者を目指す高級ワイングラスは何が違う?
ワインは楽しんでいくうちに、なぜかグラスが増殖しているものです。
一人暮らしの私の家には、なぜか20脚を超えるグラスがあります。これでも自重しているつもりです。
その理由はもちろん、グラスによる味わいの変化が面白いから。
より美味しくワインを飲むために。
ワインの中級者、上級者向けのグラスは、どう違うのでしょうか?
品種ごとに細分化される
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローに適したグラスと、ジンファンデルに適したグラスは違う。
ピノ・ノワールに適したグラスと似ているが、樽熟成シャルドネに適したグラスはもっと平たい。
ピノ・ノワールでもヨーロッパのものとニューワールドのものは別。
特にリーデル社のワイングラスは、ブドウ品種ごとに細かく分けて最適なグラスが用意されています。
集めだすと本当にキリがありませんので、他にいろいろワイングッズをそろえてからでいいでしょう。
薄くなる
ワイングラスは1脚5000円くらいを超えたあたりから、一気に薄く軽くなります。
グラスが薄くなると、リムの部分も当然薄くなるので、口当たりがよくなります。
口に当てたときに、グラスの存在感が希薄になるからでしょうか。単純に美味しく感じます。
正直この原理は分かりませんが、ぜひ体感していただきたい。
高級レストランのワインが美味しいのは、一つにはグラスがいいからかもしれません。
ただし、薄いグラスは当然割れやすいです。
割れたときのショックも大きいので、リーデル社などは「飲んだらその日に洗わず、水につけておいて翌朝洗う」ことをおすすめしています。
ハンドメイド
高級なワイングラスは職人が1脚1脚手づくりします。
ゆえに多少の製造誤差は出ます。
しかしマシンメイドでは到達できない薄さと美しいフォルムは、多くのワイン愛好家のあこがれです。
ワイングラスは自分の飲み方に合わせて
Googleで検索すれば、ワイングラスのおすすめ記事がたくさん出てくるでしょう。
だいたいどの記事を見ても、「白ワイングラスは万能型だから持っておいた方がいいよ」と書いてありますが、具体的におすすめされているワイングラスは様々。
ワインの飲み手の数だけワインの飲み方があり、好みがあるのですから、最適なグラスも様々です。
ワイングラスは比較的お金をかけるべきところだと考えます。
薄いグラスで飲んだ方が、やはり全般的に美味しく感じるからです。
だからと言って、高級なワイングラスを割らないように恐る恐る使うくらいなら、ほどほどのグラスを気軽に使った方がワインを楽しめるでしょう。
好んで飲むワインのタイプも、飲んでいるうちに比重が変わってくるでしょう。
昔は赤ワインが多かったけれど、近頃は白ワイン中心になった、など。
それなら、白ワイングラスだけ高級なのを買うのが効率的です。
ワイングラスの最適解は飲み手の数だけあります。
自己分析に基づいて、自分なりのベストが探せるようになるまで、まずは今回ご紹介した4種類を1000円台くらいで手に入れるところから始めてみてください。
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