
ワインにおける1年で最大のイベントといえば、ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日。ワイン好きだけでなく初心者も楽しみやすい、収穫を祝うお祭りです。その概要と味わい方のポイントを知れば、周りの方と一緒により一層楽しめるでしょう。ボジョレー・ヌーヴォーの基礎からその意義まで、丁寧かつ詳しくご紹介します。
フランス語の「ヌーヴォー Nouveau」とは英語の「new」にあたり、今年取れたばかりのブドウでつくる新酒のことです。
「ボジョレー Beaujolais」は産地でありワインの名前。ブルゴーニュ地方の南部、ボジョレー地区でつくられる、「ガメイ」というブドウでつくられるワインのことです。
法律上では「プリムール Primeur」と同義であり、どちらも表記可能。例えば「メゾン・ルロワ」のものは「プリムール」の表記を採用していますが、同じものです。

ボジョレー・ヌーヴォーとボージョレ・ヌーボー、正しいのは
フランス語の発音に日本語のカタカナを当てはめるため、表記の揺れがあります。
「Beaujolais」について、「ボージョレ」「ボジョレー」「ボジョレ」などあります。
「Nouveau」も「ヌーヴォー」「ヌーボー」など様々。
これらはどれも同じであり、何が正しいというものではありません。いろいろな書き方がありますが、気にしなくていいです。
ボジョレー・ヌーヴォーの種類とは
ボジョレー・ヌーヴォーにはいくつかの種類があります。
「ボジョレー ”ヴィラージュ” ヌーヴォー」というのがそれ。ボジョレー地区の中に、より高品質なブドウが生まれるとされる「ボージョレー・ヴィラージュ」という地区があります。つまりボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーはより上級なのです。
とはいえボジョレー・ヴィラージュの認定地域は、ボジョレー全体の40%程度と結構な広さがあります。なので上級といっても価格差はわずかです。
どちらもロゼワインをつくることもできます。
なので広い意味で「ボジョレー・ヌーヴォー」といえば、「ヴィラージュ」を含む赤ワインとロゼワイン。狭い意味では「ヴィラージュ」がつかない赤ワインのことを指します。
ボジョレー・ヌーヴォーに白ワインはない
ボジョレー地区ではシャルドネから白ワインもつくられています。しかし法律上、それを新酒として11月にリリースすることはできません。
なのでボジョレー・ヌーヴォーに白ワインはありません。白ワイン好きの方のために、お隣マコン地区の白の新酒が、一緒に紹介されているのを時折見かけます。
ボジョレー・ヌーヴォーにはなぜ解禁日があるの?
ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日は、ワインの品質を保つために設定されています。
解禁日がない場合、一部の生産者がいち早く発売して、競争相手が少ないうちに売り抜けようとするかもしれません。そうすると、品質の低いワインが出回り、消費者をがっかりさせてしまう恐れがあります。
「解禁日」を設けることで、すべての生産者が同じスタートラインに立ち、無理なく一定の品質を保ったワインを提供できるようにしているのです。
これはボジョレー・ヌーヴォーに限らず、多くの季節限定の農産物や水産物でも同様に行われています。高品質なブランドイメージを守るための、大切なルールなのです。
2025年のボジョレー・ヌーヴォー、解禁日はいつ?
2025年のボジョレー・ヌーヴォーは、11月20日(木)に解禁されます。
当日の0時00分解禁なので、深夜営業のレストランやバーでは、解禁イベントが催されることもあります。
解禁日は11月の第3木曜日と決まっています。これは日にちで決めてしまうと配送業者の休業日などにより、解禁日に品物が届かないことがあるからだそう。
日本でその心配はないでしょうが、ヨーロッパならありそうですね。
時差の関係で、主要な消費国の中では日本が最も早く日付が変わります。「世界でもっとも早く新酒が楽しめる」その特別感は、かつてのボジョレー・ヌーヴォーの大流行を後押ししました。
おすすめのボジョレー・ヌーヴォー5選
当店COCOSで予約・購入できるボジョレー・ヌーヴォーをご紹介します。
予約しておけば解禁日に到着するように発送します。いち早く新酒を楽しみたい方は、予約しておくのが便利です。
凝縮度高めの2本、クラス違いで
当店が昔から取り扱っている生産者、ルイ・テット。今年も2種類のボジョレー・ヌーヴォーが入荷します。
生産者の特徴として、他と比べてちょっとだけ果実味の凝縮感が強い傾向です。その分酸味は穏やかで飲みごたえのある味わい。ただあくまで「他の生産者と比べたら」という話なので、ヴィンテージの影響は当然受けます。
その上で「格安」とは言えませんが、価格はちょっと抑えめ。これは輸入元さんの企業努力なのかなと感じております。
2種類の違いは樹齢。「サントネール」の方は一部樹齢100年超えの区画からつくられます。過去に飲み比べたときは、やはり「サントネール」の方が香りに奥行きがあった印象。
価格差が200円もないため、個人的には「サントネール」の方をおすすめしています。
父から子へ、その名声を受け継いで
ずいぶん前から定番かつ人気のボジョレー・ヌーヴォーとして親しまれてきた「マルセル・ラピエール」ブランド。マルセル氏亡き後は、ワイナリーは彼の妻と息子が引き継いで、「シャトー・カンボン」と名前を変えてつくっています。
偉大な父のあとを継ぐ息子は、常に比較される運命にあります。だからこそその未来に注目し応援したい。華やかでみずみずしい果実味と、透明感のある味わいが魅力です。
昨年多くの予約をいただいたため、今年は数量を増やしてご用意しております。
ブルゴーニュきっての巨匠が選ぶ味
高級品揃いのブルゴーニュワインにおいても、ルロワのつくるものは別格です。味はもちろん優れていますが、何より値段が・・・。
主要株主であるため、高島屋さんに行けばルロワのワインは豊富に並んでいます。目玉の飛び出るような価格で。
それらと比べるならば、ボジョレー・ヌーヴォーは「ルロワのワイン」としてはまだ手が出ます。
「秋の風物詩なんだから、1本は飲んでおこうか。どうせならなるべく美味しいものを・・・」と考える方にとっては、まず検討すべき選択肢でしょう。


メゾン・ルロワですので、マダム・ルロワ氏が手掛けるわけではありません。ワインの状態で試飲して仕入れると聞くメゾンブランドですが、ボジョレー・ヌーヴォーについてはそれはできないはず。さすがに毎年の仕入れ先は決まっているでしょう。
それでもブルゴーニュきっての巨匠が、自らの看板を掲げるにふさわしいと選んだ味です。期待が持てます。
※この商品は少なからずラベルに擦れが見られるものがあります。ご了承ください。
一人暮らしのちょい飲みに!
ボジョレー・ヌーヴォーは軽快でスルっと飲める味わいとはいえ、「1人で1本飲むのは多い」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
また解禁日は木曜日です。「解禁日に飲みたいけれども、どうせなら週末に同僚や友人と飲みに行きたい」という場合も。
そんな「一人でちょっと飲み」に便利なのがこちら。187mlのミニサイズで、グラスワインでいうと2杯弱。ちょっと物足りないくらいで飲み切ってしまうでしょう。
とりあえず今年も飲んだことにしたい方にもおすすめ。


風味の点ではそりゃあ先に紹介した4本に劣るでしょう。でもボジョレー・ヌーヴォーを季節のイベントととらえるなら、たまにはこんなワインもいいのではないでしょうか。
※小さなパックですが、それでも通常のワインと同じ送料がかかります。他のワインとあわせてのご注文をおすすめします。
ボジョレー・ヌーヴォーの味わいとその理由
普段からワインを飲みなれていない人でも楽しみやすい、飲みやすい味。ボジョレー・ヌーヴォーが日本中でたくさんの人に飲まれるのは、それが大きな理由です。
その味わいは新酒であることに大きく関係しています。
ボジョレー・ヌーヴォーの典型的な味わい
イチゴやスモモ、クランベリーのような赤系果実の香り。バナナのような甘い風味も。口当たりは軽く、タンニンはほぼ感じません。フレッシュ&フルーティーが基本の味筋です。
果実味に厚みがあって酸味が低いか、シャープで上品な酸味を持つかは、そのヴィンテージの特徴をよく反映します。
赤ワインながら強い渋味はないので、ワインに不慣れな方にも楽しみやすいのです。


新酒だからこその味わい
ボジョレー・ヌーヴォーは「マセラシオン・カルボニック」という醸造法でつくられます。
この製法では、二酸化炭素を使い酸素を遮断します。詳しいことは省きますが、この手法により発酵初期の短期間に赤ワインの色や香りを引き出すことができます。その後プレスで搾って果皮や種を取り除き、ジュースだけで発酵を完了させます。


普通の赤ワインは果皮や種を果汁に漬けたまま発酵を完了させます。それゆえしっかりとタンニンが抽出されます。
ガメイはもともとしっかりタンニンのある品種です。でもボジョレー・ヌーヴォーは、マセラシオン・カルボニックをするから渋味がほとんどありません。熟成期間をおかず、新酒として楽しむ。そのための手法なのです。
ボジョレー・ヌーヴォーは美味しくない?
一部のワイン通の中には、「ボジョレー・ヌーヴォーなんて美味しくないよ」という人もいます。
前提として、ボジョレー・ヌーヴォーは決して高級ワインではありません。新酒用に短期間で醸造されたものです。ボジョレー・ヌーヴォーよりももっと美味しいワインがいくらでもあるのは事実です。
ボジョレー・ヌーヴォーはいろいろなメーカーがつくります。その中には品質の差は当然あります。味わいの好みもあるので、その人にとってのアタリ・ハズレはあるのでしょうが、それはボジョレー・ヌーヴォー以外のワインだって同じです。
それゆえボジョレー・ヌーヴォーをまとめて「美味しくない」と言うことには、感心しないなと筆者は考えています。
ボジョレー・ヌーヴォー、2025年の出来栄えは?
2025年のボジョレー・ヌーヴォーの味わいは期待が持てそうです。
春先にありがちな霜害の話は、今年は耳にしません。
5-6月にかけて、開花の時期に雨が多かったそうです。そのため「花ぶるい」といって、雨で受粉が妨げられる被害がでました。収穫量が減少するのですが、その分残ったブドウに栄養が集中し、風味の詰まったいいブドウになる傾向があります。
8月は晴天に恵まれながら、極端な猛暑の話は聞きません。適度に雨もあったようです。
まだまだ情報を集めている段階ですが、比較的期待が持てるヴィンテージと言えるでしょう。


こういう年は品質の下限が上がります。ハズレに感じるワインが少ない年と予想されるのです。例年とは違う生産者のボジョレー・ヌーヴォーを試してみるのに適した年と言えます。
収穫を祝う”お祭り”として楽しもう
ボジョレー・ヌーヴォーは初心者も楽しみやすい味ですが、初心者向けワインというわけではありません。
むしろ普段からワインに親しんでいる方こそ、日本にワイン好きを増やすイベントとして、このお祭りを楽しんでいただきたいと考えます。
ワインが日本中の話題にのぼる日
特定のお酒が日本中の話題になる。テレビのニュースになり様々なメディアで取り上げられる。
普段はワインを飲まない人まで、「季節ものだから飲んでおこうか」という気分になる。そんなイベントはボジョレー・ヌーヴォー以外にありません。
中には「周りが盛り上がっているから」と、つられて口にする人もいるでしょう。それがきっかけでワインが好きになるという人だっているはずです。


今年のヌーヴォー、もう飲んだ?
そうやって身近な人と話を広げるきっかけにしてはいかがでしょうか。
後世に残したいイベント
ボジョレー・ヌーヴォーの人気は、確かに以前のピーク時に比べたら減少しています。
2004年には104万ケース1200万本あまりが輸入されていたそうです。単純計算、日本人の10人に一人は飲んでいたことに。
それに対して昨年2024年の輸入量は、推定で16.5万ケース。最盛期の1/6以下にまで縮小しているのです。かつては世界中に出荷されるボジョレー・ヌーヴォーの半分が、日本で消費されていたころもありました。今でも主要消費国ですが、比率はずいぶん下がっています。
その大きな理由は、多くの人にとってワインが当たり前のものになったからでしょう。年に一度、思い出したように飲むのではない。普段から好みにあわせて選んで飲んでいるお酒だからです。


とはいえ今なお、ボジョレー・ヌーヴォーはワインにおける最大のイベントです。このイベント・お祭りは、日本人にとってワインを身近なものにしています。ワインを知って飲むきっかけになります。
ワインに携わるものの一人として、このイベントは後世まで続いていってほしいと考えています。
身近な人と今年の収穫を祝おう!
ボジョレー・ヌーヴォーはボジョレー地方の新酒であり、その発売を記念するお祭り。今年も実ったブドウに対する喜びを、新酒を飲むことで表現するのです。
初心者にも嫌われにくい味わいですし、各種メディアでニュースに上ることで、多くの人の関心を引きます。


いつも飲んでいる人も、そういえば最近飲んでなかったなという人も。身近な人を誘ってボジョレー・ヌーヴォーで乾杯しませんか?
ワインの美味しさに酔いしれる人が、身近に増えることを願って。