《ワインの値段と「濃さ」》
風味の濃厚さは最も分かりやすい「高いワインの特徴」です。濃い味わいにするためには、ブドウの樹に実る房の数を減らして風味を凝縮させる必要があります。1000円のワインでそれは難しい。だからこそ「高いワインは濃い」というイメージがあります。
しかし本当に高価なワインは、実は濃くありません。1口目からガツンとくるアタックは弱いのです。それでいて風味は素晴らしくち密。細い糸で丁寧に織り込まれたシルクのように、薄いけど丈夫でしなやかな布のようです。
ナパ・ヴァレーにおいて、だいたい3万円くらいからそういった濃厚さよりエレガンスを重視したワインが多くなってくる印象があります。しかしクロ・デュ・ヴァルのこのワインは、1.5万円ほどでありながらそのしなやかさを備えます。
《生産者について》
クロ・デュ・ヴァルは1972年、ともにフランス人のベルナール・ポーテ氏とジョン・ゴレ氏によって設立。最初の自社畑のあったその一帯は「スタッグス・リープ・ディストリクト」と呼ばれるようになりました。
1976年にあった「パリスの審判」および10年後にあったそのリベンジマッチにて、クロ・デュ・ヴァルの名前は世界に知れ渡りました。
創業当初から一貫して、パワフルさではなくエレガンスを追求。ボルドーワインのスタイルをカリフォルニアで表現しています。
《このワインについて》
ボルドーのスタイルに倣うので、クロ・デュ・ヴァルのカベルネ・ソーヴィニヨンは基本的にブレンド。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドをブレンドします。しかしこの2016年に関してはカベルネ・ソーヴィニヨンの出来がすばらしかったので、単一でつくったそうです。
1日目は引き締まった上品な香りに、細かなタンニンによる口当たりのしなやかさが魅力。しかし2日目から風味の複雑さが爆発します。パーティーシーンはもちろん、この価格ですがあえて1人で味わう価値も十分にあります。
Hirondelle Vineyard Cabernet Sauvingnon Napa Valley Clos du Val