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英国王室御用達「ランソン」違いを感じるシャンパンの楽しみ方

2025年1月25日

英国王室御用達「ランソン」違いを感じるシャンパンの楽しみ方
 
英国王室に愛され続ける伝統のシャンパン「ランソン」は、フレッシュな味わいで食中酒として活躍するのが魅力です。その美味しさと他にはない個性は、特色のある醸造法によってつくられます。シャンパンの特徴やラインナップとともに、最も魅力を発揮するシーンをご紹介します。日常の贅沢から特別なイベントまで、あなたと大切な人との時間をより華やかなものにしてくれるでしょう。
 
 

こんな人に、こんなシーンで飲んでほしいシャンパンです

  • 爽やかな酸味でリフレッシュしたいとき、特別な一杯として
  • 2人だけの優雅なディナータイム、料理とともにゆっくり楽しむために
  • 夏の青空の下で、明るい昼下がりのパーティーに

 

 

ランソンを飲むなら「ブラック・クリエイション」から

 
「ランソンといえばこれ」というような、最初に飲むべき1本はこちら。
 
 
昔は「ブラック・ラベル」と呼ばれていましたが、2023年にラインナップが一新され「ブラック・クリエイション」となりました。
複数の収穫年のワインからつくる「NV ノンヴィンテージ」のシャンパンですが、代わりに番号が表記されるようになりました。これはランソンのファーストヴィンテージから数えた通し番号で、執筆時なら258年目の作品ということです。
 
 

テイスティングコメント

 
グラスに顔を近づけるなり、香りが軽やかに鼻の奥をくすぐります。
リンゴや洋ナシなどのフレッシュなフルーツのアロマが控えめに香ります。時間がたって温度が上がるにつれ、ほのかなトーストの香ばしさも漂います。
口に含んでまず感じるのは鮮烈な酸味。舌の中心部を軽やかに刺激するスマートな味わいで、マンダリンオレンジのようなみずみずしい果実味。余韻には心地よい苦みを伴い、透明感をもって消えていきます。
 
 
 

 ランソンを特別たらしめる製法

 
何千種類とあるシャンパンの中で、ランソンに似た味筋というのはそれほど多くありません。その理由は特色のある次の2つの醸造ポイント。
ベースワインの醸造は主にステンレスタンク
マロラクティック発酵をしない
 
これが何を意味しどう味わいに影響しているのか、詳しくご紹介します。
 
 

マロラクティック発酵とは

 
ブドウの果汁は糖分がアルコールに変わることでワインとなります。アルコール発酵のあとにはマロラクティック発酵が起こります。果汁の中にある酸味成分である「リンゴ酸」をバクテリアが食べて「乳酸」に変える反応です。
 
リンゴ酸はシャープな酸味を持ちます。それが乳酸に変わることで酸味がまろやかになります。
このマロラクティック発酵をあえてブロックすることもできます。スッキリとした酸味をキープしたいのか、まろやかなものにしたいのかという醸造オプションです
 
マロラクティック発酵についてはこちらの記事で詳しく▼
 
シャンパーニュ地方はフランス北部の寒冷地域にあり、ブドウは高い酸味を持ちます。さらにシャンパン用のブドウは他のワイン用より早めに収穫することもあり、シャンパンのもとになるワインは非常に高い酸味を持ちます。
ゆえにシャンパーニュ地方では、マロラクティック発酵を行う醸造法が主流です。
 
 

マロラクティック発酵を行わない狙いとは

 
ランソンはあえて、このマロラクティック発酵をほとんど行いません。NVのスタンダードクラスで最大25%、上級のヴィンテージシャンパンでは0%です。
 

生産者Instagramより

 
この狙いはまさに「フレッシュ」な風味のため。ピュアな果実味と高い酸味、キレのいい後味が際立つスタイルを目指すゆえです。特に「ブラック・クリエイション」にハッキリと感じる青りんごのような爽やかさは、この製法によるところが大きいでしょう。
 
 

ステンレスタンクによる醸造

 
伝統的なスパークリングワインの製法は、まずベースとなる白ワインをつくり、それを1本1本のボトルで瓶内2次発酵・瓶内熟成します。
その白ワインの醸造に使う容器も重要なポイントです。
 
基本的にはステンレスタンクかオーク樽。
ステンレスタンクは空気を通さないので、嫌気的な環境で醸造されます。フルーツや花のような風味がよりピュアに現れると言われます。
一方でオーク樽に入れて発酵・熟成すれば、木目を通して緩やかに酸化します。それが風味の複雑さやボリューム感を生むと言われます。
 
 
ランソンのベースワインは主にステンレスタンクで醸造されます。特徴的なスマートで軽やかな味わいは、ステンレスタンク醸造によるものが大きいでしょう。
 
 

畑別の精緻な醸造

 
ステンレスタンクはオーク樽に比べて大型化できるので、大量生産に向いています。しかしランソンはその目的では使っていません。
 
ランソンの自社畑・契約畑はおよそ100もの区画に分けられています。しかもその50%がグランクリュ、あるいはプルミエクリュに分類される優良な畑です。
それぞれの畑ではブドウの性質も収穫日も異なります。畑ごとになるべく緻密な醸造するため、55個ものステンレスタンクが用意されています。
 
 
栽培条件のいい畑でとれる良質なブドウと、近代技術を活かした丁寧で精密な醸造が、ランソンの安定した品質を支えています。
 
 

個性を魅力に変える長期熟成

 
ノン・マロラクティック発酵による高い酸味と、ステンレスタンク醸造によるスマートな味わいがあわさると、「酸っぱい」と感じられてしまう恐れがあります。
それを補うかのように、ランソンは一般よりもずっと長い熟成期間を経てリリースされます
 
 
瓶内熟成の期間は、ノンヴィンテージのシャンパンは15か月以上と規定されています。それに対して「ブラック・クリエイション」の熟成期間は48か月。これがランソンで"スタンダードクラス"です。
トップクラスの「ノーブル・シャンパーニュ」に至っては、リリースされるまで15年もの歳月が費やされます。
 
 

地下につくられたワイン貯蔵庫で長期熟成されます。


 
瓶内熟成の期間、シャンパンは瓶内2次発酵で生じた澱(おり)とともにあります。酵母の死骸である澱はタンパク質の塊。それが長い時間をかけて自己分解し、アミノ酸となってワインのなかに戻っていきます。
高級シャンパンほど熟成期間が長いのは、この酵母の自己分解(オートリシス)の風味を狙ってのこと。高い酸味とバランスをとる風味の豊かさやうま味感がもたらされるので、バランスのとれた美味しさに仕上がるのです。
どんな熟成期間は長ければいいというものではありません。ポテンシャルの低いシャンパンを長く熟成させすぎると、味わいがボケてひねた風味になってしまいます。ノン・マロラクティック発酵によるキレイな酸味を持つがゆえ、この長期間の熟成に耐えられるのです。
 
 
ステンレスタンク醸造・ノンマロラクティック発酵・長期熟成。この3つがランソンの美味しさを支えるポイントです。
熟成期間を長くとるというのは、それだけ資金回転率が悪化するということ。このスタイルをマネしたくてもできないというメーカーは、きっとたくさんあります。歴史が長く財政基盤のしっかりとしたランソンだからこそできることです。
 
 

世界で賞賛されるシャンパンブランド「ランソン」

 
このようにただ高品質なだけでなく特色のある味わいにつくられるランソンのシャンパンは、各所で非常に高い評価を受けています。特にイギリスでの地位は確固たるものです。
 
 

英国王室御用達のステータス

 
シャンパーニュやボルドーのワインの発展は、イギリス市場の存在抜きには語れません。その中でも特別な箔といえば、何といっても「英国王室御用達」でしょう。
英国王室御用達のことを「ロイヤル・ワラント」というそうで、数多くのブランド・会社が選ばれています。現在の御用達はこちらのリンクからご覧いただけます。
(2024年12月時点)
 
ランソンはその「ロイヤル・ワラント」の称号を、1900年に獲得して以来なんと120年以上にわたって守ってきました。これほど長くにわたって品質を認められ続けてきたのはランソンだけ。「英国王室御用達」としてよく名前の挙がる、ポル・ロジェ、ボランジェ、クリュッグ、ルイ・ロデレール、モエ・エ・シャンドンなども、一度ならずロイヤル・ワラントを外れたことがあります。
 
 
ランソンとて120年間ずっと安定だったわけではありません。モエ・エ・シャンドンの傘下に一時的に入るなど、その経営は幾度も変化してきました。それでもシャンパンの品質は認められ続けてきたのです。
 
ただし現在上記のリンク先のリストに「Lanson」の名前はありません。エリザベス女王が2022年にお亡くなりになり、チャールズ3世が引き継いだ後、「英国王室御用達」のリストに大幅な改定がありました。クリュッグなどそれまで選ばれてきた生産者とともに、ランソンはそのリストから外れることとなりました。
 
だからといってランソンは変わらず。120年以上にわたって英国王室に愛され続けた唯一のシャンパンである事実は変わりません。
 
 

ウィンブルドン公式シャンパン

 
ウィンブルドンといえばテニスの4台世界大会の一つ。ロンドンのウィンブルドンで開催されます。
ランソンはそのウィンブルドン公式シャンパンの称号を、1977年から40年以上にわたり守り続けています
この点でもいかにランソンがイギリスで愛され続けるシャンパンであるかがわかります。
 
 

ランソンを楽しむおすすめのシーン

 
この通りランソンは間違いなく高品質なシャンパンですが、美味しいシャンパンなら他にもたくさんあります。
数ある銘柄の中でランソンを選ぶべきシーン、あるいは選ぶべきでないシーンをご紹介します。
 
 

フレッシュな味わいで気持ちを切り替えたいとき

 
人生楽しいことばかりではありません。悲しいことがあったり、仕事でどうもうまくいかなくて落ち込んでしまうこともあるでしょう。自分に非があるのなら、逃げずにそれを見つめて改善すればいい。でも中には自分に非がない不可抗力で不幸がふりかかることもあります。
 
 
そんなときは気分転換がいちばん。どうしようもないことを考え続けても事態は良くならないのですから。
鮮烈な印象を与えてくれる、フレッシュな味わいの上質なシャンパンは、気持ちを切り替えるきっかけをくれるはずです
気持ちをキュっと引き締めてリフレッシュしたい。そんなときはランソンのようなステンレスタンク発酵&ノン・マロラクティック発酵のしシャンパンが最適です。ピュアで元気のいい味わいが、あなたの心を明るくしてくれるでしょう。
 
 

特別なディナータイムのお供に

 
ランソンの酸味が高くスマートな口当たり、風味が派手すぎない味わいは、食中酒として使いやすいタイプです。
 
コース料理と一緒に数種類のワインを楽しむなら、シャンパンはまず乾杯に使われます。
シャンパンには一般的に味わい調整のための糖分が添加されており、ほのかな甘みがあります。それが料理とあわせない食前酒・乾杯の飲み物として、単体の満足度を与えてくれるからでしょう。
そういうことであれば、美味しいシャンパンならだいたいのものが、乾杯用の飲み物としての役割を果たせます。
 
 
一方で食中酒としてはどうか。
シャンパンは割と幅広い料理のお供として適しています。少なくとも濃厚な赤ワインなどより、ずっと苦手とする料理は少ないです。
ただし単体として満足度が高いシャンパンであるほど、その風味が派手で料理の味に勝ってしまいがちです。料理と合わないわけではないけども、ちょっと風味が強すぎるという場合もあるかもしれません。
ベースワインを樽熟成し、マロラクティック発酵を実施するタイプなどは、その豪華な風味が食中酒として適さないこともあるでしょう。
 
 
その点でランソンは、特に「ブラック・クリエイション」などは、食事と合わせてこそ活きるシャンパンと言えるでしょう。
例えばあなたにとって大切な人と2人きりでディナーを囲む場合。ワインボトルを開けるなら、乾杯のワインはコース料理の中ほどまでは続けて楽しむこととなります。それならばワイン単体の味の満足度より、料理との相性を主眼に選ぶのもアリでしょう。
 
 

夏のよく晴れた日の終わりに

 
ランソンのシャープでフレッシュな味わいは、決して単体で劣るわけではありません。ただし季節は少し選ぶと考えます。
最もイメージに合うのは夏。それも夜ではなく昼下がりや夕方から。じとっと暑い日本の夏にこそ、すがすがしいランソンの味わいはフィットします。太陽がさんさんと降り注ぐ夏。炎天下から木陰に避難してランソンを開ければ、その味わいは「五臓六腑に染み渡るぜ」と言いたくなるものでしょう。
 
 

ランソンを選ぶべきでない人・シーン

 
一方でランソンにも適さないシーンはあります。
 
例えば寒い季節に開催されるパーティーでの乾杯シーン
7人以上で開催されるものなら、乾杯のワインは一人1杯以下です。その量ではランソンの魅力は十全に味わえない。細身な味わいゆえに物足りないまま飲み切ってしまうかもしれません。
シャンパン単体での満足度で勝負するシーンなら、ランソンよりもっと適したものがあるでしょう。
 
 
また、ワイン初心者への贈り物としては、私は決してランソンを選びません
ワインに不慣れな方の中には、シャンパンの高い酸味に抵抗を覚える人も少なくありません。だからせっかくの高価なシャンパンも「酸っぱい」と言われてしまうかも。
初心者へのプレゼントなら、ステンレスタンク発酵&マロラクティック発酵ありのシャンパンを選びます。
 
だからこそワイン好きの方へのプレゼントとして、ランソンは失敗の少ない選択肢です。昔から有名なブランドゆえ、驚きは与えられないでしょう。しかし英国王室に愛される「ワイン好きが好む味」は、普段高級ワインをたくさん飲んでいる方であっても、贈り物として十分な満足を与えてくれるはずです。
 
 

ランソンのラインナップ紹介

 
ランソンがつくるシャンパンは、「ブラック・クリエイション」だけではありません。まずお飲みいただき、気に入っていただけたなら、他のシャンパンもぜひお試しください。
「ブラック・クリエイション」」とどう違うかに主眼を置いて、ラインナップをご紹介します。
 
 

ランソン ロゼ クリエイション

 
試飲会で全てのラインナップを一度に試飲した際、最もコストパフォーマンス良く感じたのがこの「ロゼ・クリエイション」です。
 

ランソンInstagramより

 
その評価はあくまで「試飲会でワイン単体で一口だけ飲んで」という前提で考えてください。
赤ワインをブレンドしてつくる製法のロゼです。豊かなベリー系のフルーツ感にあふれる味わいは、「ブラック・クリエイション」よりも風味が横に広がる印象です。
 
マロラクティック発酵の比率などは「ブラック・クリエイション」と変わらず、酸味は高いのでしょう。そのシャープさをロゼはあまり感じず、華やかさとフルーティーさが際立ちます
 
 

ブラン ド ブラン

 
「ブラック・クリエイション」に比べて違う点が3つ。
一つはその名の通りシャルドネ100%のシャンパンであること。さらに優良畑の証である「特級」「一級」に格付けされる畑のブドウの比率が高まり70%であること。もう一つは最低熟成期間が4年から5年になることです。
 
その結果としてシャープでスマートな味わいはそのままに、洗練さや美しさに磨きがかかる印象です。繊細さやチョークのようなミネラル感が際立ち、ブリオッシュのような複雑な香りもわずかに感じられるようになります。
 
  
ライムやゆず仕上げた魚介類のカルパッチョ、特にホタテなどとは抜群の相性です。
 
 

ヴィンテージ

 
特級畑、および一級畑のピノ・ノワールとシャルドネのみからつくられるこの「ヴィンテージ」は、卓越した年のみにつくられる特別なシャンパンです。
最低熟成期間は9年におよび、『ブラン・ド・ブラン』よりも長い時間をかけて仕上げられています
 
 
このクラスから長期熟成によるボリュームの豊かさが前面に現れてきます。ピノ・ノワールが持つ黒ブドウのふくよかさと合わせて、ランソンのラインナップとしては非常にリッチな味わい。カスタードクリーム、あるいはアカシアのハチミツのようなほのかに甘い香りと、酸味とボディ感が見事に調和したバランス感が魅力です。
 
ワイン単体で飲んでも非常に満足度が高い一方で、料理とあわせるなら「ブラック・クリエイション」などより一段味の濃いもの。甲殻類のグラタンや鶏肉料理がいいでしょう。
 
 

ノーブル / ノーブル ブラン ド ブラン

 
ランソンの最高峰に位置するのがこの2本。違いはピノ・ノワールをブレンドするか否かです。
澱引き・出荷までなんと17年もの期間がとられる高級品。それだけの年月が経てばわずかに泡感が弱くなりますが、それを補って余りあるほどの風味の広がりを持ちます。
こちらは先ほどの「ヴィンテージ」よりもさらに厳しい選別をパスした年のみつくられるシャンパン。グラン・クリュのブドウのみからつくられます。
 

ランソンInstagramより

 
酵母の自己分解による複雑な香りは一層強くなり、いかにも「高級なシャンパン」の雰囲気を醸し出しています。
2種類の違いとしては、やはりピノ・ノワールがもたらす味わいのふくよかさ。「ノーブル」の方がより横にひろがる風味の豊かさを持ちます。対して「ノーブル ブラン ド ブラン」の方は、熟成感の中にもほのかなフレッシュさを持ち、より気品あふれる味わい。
 
どちらも特別な記念日に飲むのにふさわしい味わいです。あえて使い分けるなら、5名以上のときはよりふくよかな味わいの「ノーブル」、4名以下の少人数で囲むなら鮮烈な印象の「ノーブル ブラン ド ブラン」がおすすめです。
 
 

違いの分かる愛好家のための「ランソン」

 
「シャンパンであれば何でもいい」
そのように総体として捉えており、風味の違いにあまり関心がない方には、ランソンをおすすめしません。もっと小難しさがなくてわかりやすい味わいのシャンパンは他にあります。
 
一方で「シャンパンにもいろいろあって、比べるのが楽しくなってきた!」という方には、ランソンはピッタリです。この記事で述べてきたように、ランソンは醸造法に特色があり、それゆえに個性際立つスタイルを確立しているから。
「だからこんなに味が違うんだ!」と納得して楽しめるからです。
 
 
気分をリフレッシュしてくれるような鮮烈な味わい。少人数で楽しむのに向いた食中酒としての魅力。
ランソンがつくるシャンパンは、あなたとあなたの大切な人との時間を、より思い出深いものとしてくれるでしょう。
 
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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