ワインの楽しみ方ガイド

2本の白ワインを飲みながらタラ白子を食べつくす!

2021年12月20日

2本の白ワインを飲みながらタラ白子を食べつくす!
 
 
突然ですが、私は冬の味覚の中でタラの白子が一番好きです!
口に含むとプニュっとあふれ出す濃厚な旨味。これを味わい尽くしたい。
でもその濃厚さゆえに、白子単体ではそうたくさん食べられるものではありません。
今回はタラ白子に合いそうな2本のワインと共に、調理法を変えながら検証していきます。
 
 

そもそも白子とは

 
白子とは主に魚類の精巣を食材とするときの呼び名です。
タラの白子はスケトウダラかマダラからとれたもの。
魚類あるあるですが地域によって呼び名が違います。とれるタラの種類で「助子(スケコ)」と「真子(マコ)」と区別されたり、「タチ」「タツ」「ダヅ」「きく・きくわた」「だだみ」「雲子(くもこ)」という呼び方もあるそうです。
 
 

白子の入手

 
タラの白子は保存が効かない食材です。
それもあってか、仕事帰りにスーパーに寄っても、なかなか売っていません。
今回は検証に量が必要だったということもあり、業務用のお店で買ってきました。
 
 
1kgパックで3800円ほど。
飲食店への卸しをメインにしているお店なので、鮮度抜群です。
 
今回は2種類のワインに対して4種類の調理法で相性を検証していきます。
 
 

合わせるワイン2種

 
白子がワインに“合わない”としたら、合わせることで生臭さが目立つ場合でしょう。
なので「魚介類全般に合う」とされるワインから選ぶのが無難。
 
真っ先に思いつくのがシャブリ。「牡蠣にはシャブリ」という定説があるのですから、生臭くてとろっとしたものを上手にまとめるシャブリはまず第一候補。
シャブリの中でも、ステンレスタンク熟成のみのスタンダードクラスのシャブリを選びました。
 
もう一つの候補が「チャコリ」。
スペインのバスク地方のワインで、その中心都市サン・セバスチャンは港町であり美食の街。
そこで楽しまれているワインなら、魚介料理全般に合うはず。そう考えチョイスしました。
チャコリは泡や赤・ロゼなどもありますが、今回はスタンダードに白のチャコリ。
ムニエルなど油をつかった料理とも合わせることを考えて、樽熟成したチャコリをチョイスしました。
 

チャコリについてはこちらの記事で詳しく

 
 
まずはワイン単体についてご紹介しましょう。
 

まずは魚介にあうワインの定番、シャブリ

 
低い温度ではあまり香りが上がってこず、レモンやスイカズラをかすかに感じる程度。軽やかでスムーズな味わいは、なるほど、「川底の小石を舐めるような」という表現がわからんでもない。ほのかにレンゲのはちみつやマリーゴールドの香りが鼻を抜けていきます。
 
 
全体としては良く整った“優等生的な”シャブリという印象です。おったまげるような美味しさはありませんが、2000円前後のシャブリと比べると雑味のなさ、スムースさが一段上と言えるでしょう。
 
 

写真の銘柄は無くなってしまったので、代わりにこちらをおすすめ

 
 

「なんでもあう!」と噂のバスクワイン、チャコリ

 

エチケットデザインが大きく変わりました

 
ミシュラン三ツ星レストラン「アスルメンディ」経営のワイナリー。
きんかん、オレンジピール、ごくわずかにバニラの香り。グレープフルーツの皮のような、苦味と酸が舌を刺激する口当たり。比べるなら上記のシャブリの方がスムースです。
 
 
程良くリッチで酸はシャブリよりむしろ高く感じます。
1日目はワイン単独はそれなりのレベルに感じてたのですが、2日目以降に樽のニュアンスが顔を出し、より複雑に、リッチに感じます。
 
 

湯引きポン酢

 
白子の料理法としてまず最初に思いつくのが、多くの方にとってこの「湯引きポン酢」ではないでしょうか。
もっともシンプルかつ白子の美味しさを十全に楽しめます。
 
 

調理法

 
他の料理の下ごしらえも兼ねて、湯引きポン酢をつくります。
まずは白子をひと口大に切り分けます。
 
 
このとき、白子を筋から外すと記載するレシピも多いです。その方が仕上がりは柔らかくなるのですが、白子がバラバラになりすぎたり潰れることがあります。
私は食感があった方が好きなので、この筋の部分は目立つものを除く程度で残しています。
 
このとき、小さな粒になってしまったものは別の容器にまとめておきましょう。ペペロンチーノに使います。
 
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、塩と酒(白ワイン)を加えた沸騰直前くらいのお湯に白子を通していきます。
30秒~1分程度でしょう。何度かに分けて湯通しを行います。
お湯から上げたものは、すぐに氷水で冷やして水をきります。
他の調理法で食べるものもまとめて湯引きしておくと便利です。
 
 
器に湯引きポン酢として食べる分だけを取り分けます。
今回ポン酢はちょっとだけいいもの「ひろた」のポン酢を使いました。
仕上げに刻んだあさつき(なければ細ネギ)を散らして完成です。
 
 
 

ドロワンのシャブリとの相性・・・・〇

 
悪くないが良くもない印象
生臭さが引き立つことはなく、白子のねっとり感をワインが切ってくれるため、もう一口が進みます。食中酒として十分な役割を果たしているといえるでしょう。
ただ、風味の相乗効果などはありません。白子の湯引きポン酢は、別にこのワインを必要とはしていない。
「合う」と言えなくはない、くらいのレベルです。
 
 

G22との相性・・・・△or◎

 
ほのかに生臭さが引き立ちます。しかし私は注意していたら気づくレベルに感じました。ここは個人差があるところでしょう。
一方で白子のうま味が重層的に感じられ、料理のグレードが少し上がったような印象も受けます。白子の風味をワインが増幅しているのは確かです。
 
この原因は、G22が樽熟成したチャコリだからかもしれません。
チャコリ自体は湯引きポン酢によく合っているが、樽の要素が邪魔をしているのかも。樽熟成していないチャコリならもっと良かったかもしれません。
 
 

ムニエル(ケッカソース)

 
個人的にタラ白子の一番好きな食べ方がムニエル。表面をカリッと揚げ焼きにした香ばしさととろっとした食感のギャップがたまりません。
 
 

調理法

 
湯引きした白子に塩コショウで下味を強めにつけ、小麦粉をまぶします。
私はタッパーに材料を入れたうえで振っています。粉をべったりつけすぎないのがコツです。
 
 
小さ目のフライパンに多めのオリーブオイルとバターを溶かし、バターが溶けて泡がフライパン表面全体を覆ったくらいで白子を投入します。
フライパンを傾けて、油をスプーンですくっては白子にかけるのを繰り返しながら焼きます。湯引きで火は通っているので、表面がカリッとキツネ色になってきたらOKです。
 
 
まずはムニエルに何もつけずワインを飲んでみます。
 
 
 

ドロワンのシャブリとの相性・・・・△

 
ムニエルの味を受け止めきれていない印象です。
ムニエルを食べてワインを口に含み、飲み込んだ後、もう一度ムニエルの小麦粉とバターの風味を感じるようになります。
白子自体との相性は悪くないのですが、バターなどの要素がかみ合っていません。
 
 

G22との相性・・・・◎

 
相性としてはこれが今日イチでした
口の中で混然一体となり、余韻がとても長く続きます。
ムニエルとワインが上手に同調し、極めて芳醇かつなめらか。うめー!
 
 

ケッカソース

 
タラの白子はその濃厚な味わいが魅力ですが、油をつかったムニエルをそう何切れも連続で食べられるものではありません。胸やけしてきます。
だからこそ大事なのは酸味。口の中をさっぱりさせてくれるものが必要です。
 
バルサミコソースを添えられることも多いのですが、今回はケッカソースを作ってみました。
フレッシュトマトを使ったソースで、トマトがあればすぐできます。
 
 
トマトを小さ目に賽の目切りにして、塩コショウとオリーブオイル、白ワインビネガーでマリネします。
今回はトマトのみでつくりましたが、アレンジとして玉ねぎやパプリカなどを加えてもいいでしょう。
 
トマトとビネガーの酸味で、ムニエルをさっぱり頂くことができます。
もしワインが飲めない方と一緒に食べるなら、こういったソースで一工夫するといいでしょう。
 
 
ただ、今回のワインとの相性は×でした・・・。
 
 

ムニエル×ケッカソースとドロワンの相性・・・・×

 
口の中で酸味が渋滞しているような印象です。
喉に嫌な刺激が突き刺さります。ダメ。
 
 

ムニエル×ケッカソースとG22の相性・・・・×

 
これもダメです。喉に酸味が突き刺さっていがらっぽくなります
このワインを合わせるくらいなら、炭酸水の方がずっとマシでしょう。
 
 

湯引きを使うか生からつくるか

 
生の白子からムニエルを作った方がいいのか、湯引きをしてからで問題ないのか。
少し疑問に思ったので比べてみました。
 
結果的には湯引きしたものの方が若干良さそう。
生からつくるものは水分が出るのか、衣の部分がべちゃっとした感じに仕上がりました。
食べた時の食感もそう変わりはないので、両方つくるのなら湯引きしたものを使った方がよさそうです。
 
 
 

春巻き

 
ちょっと変わった調理法として、タラ白子の春巻きをつくってみました。
白子のプニュっとした食感。そこに「パリっ」とした食感と「シャキっ」とした食感が加わると面白いのではないか。
白子は何かに包まれた状態から飛び出てくる方が面白い。
 
そう思って検索して見つかったレシピを参考にしています。
 
 

調理法

 
 
レンコンを薄くスライスして、塩を振ってレンジでさっと火を通します。
春巻きの皮を広げ、大葉、レンコン、海苔の佃煮、そして湯引きした白子を乗せて巻きます。
 
 
これも具材は火を通す必要のないものばかりなので、いい色合いになるまでさっと揚げます。
 
 
結果として、料理単体としては非常にいい出来だと思います。
海苔の佃煮なしのものもつくってみましたが、断然入っていた方が美味しいです。
 
 
 

ドロワンのシャブリとの相性・・・・△

 
これもイマイチ。酸味が尖って感じます。
春巻きの皮の香ばしさと合っていない感じです。ムニエルに引き続き、シャブリは小麦粉×油に弱そうです。
 
 

G22との相性・・・・?

 
これが、よくわかりません
白子、のりの佃煮の風味をより複層的に感じさせてくれる瞬間もあれば、酸味が尖って感じるときもあります。
どうにも安定しない。
口に含むワインの量なのか、具材のバランスなのか・・・
合っていると言っていいのか悪いのか、なんとも不思議な組み合わせでした。
 
 

ペペロンチーノ

 
最後はタラ白子のペペロンチーノです。
具材はシンプルに白子だけでつくります。
 
 

調理法

 
パスタのお湯を沸かしながら、オリーブオイルに潰したニンニクと種をとった唐辛子を入れ、弱火で香りを出します。
 
 
今回はディチェコのリングイネを使いました。ペペロンチーノにはスパゲティやスパゲティーニが使われることが多いですが、濃厚なソースになるので私はリングイネぐらいが好きです。
目安の湯で時間マイナス2分くらいでタイマーをセットして茹でます。
 
 
油に香りが出たら白子を入れます。今回は最初の切り分け時に細切れになってしまったものを取り分けておいたものを投入します。
ある程度火が通ったら、白ワインで香りをつけるとともに、鍋肌にくっついてしまった白子を剥がします。
ここにパスタのゆで汁をたっぷり入れます。白子が溶けだした濃厚なソースになります。ゆで汁に塩分が含まれますので、仕上げまで塩は使いません。
 
 
ソースが真っ白に入荷して沸騰しているところにゆであがったパスタを投入します。
うま味がつまったソースをパスタが一気に吸水するので、それを見越してシャバシャバのソースでなくてはいけません。この水分量は経験なので、ちょうどいいを見つけるのはなかなか難しいです。
 
 
パスタとソースをしっかり絡めて、味を見て塩加減を調整し、オリーブオイルで吸水を止めたら完成です。
見栄えのためにあさつきとブラックペッパーを振りました。
 
 
 

ドロワンのシャブリとの相性・・・・〇

 
うま味のつまった濃厚なパスタがよく進むというだけで、ワインは十分な役割を果たしています。
春巻きのときのような酸味が尖ったりということもありません。
ワインを炭酸水に置き換えたとしても、こうも心地よく食べることはできないでしょう。
 
 

G22との相性・・・・〇~◎

 
ベースとしてはシャブリとあわせたときと同じです。
ただ、G22の方がより風味を増幅してくれているように感じます。
ただしムニエルほどの鮮烈さはありませんでした。
 
 
 

結論

 
この2本で比べた時、タラ白子のより良きパートナーは、G22のチャコリでした
特にムニエルなど油を使った調理法のときに素晴らしい相性を感じさせてくれました。
これは軽い樽熟成によるリッチさが、上手くバターの香ばしさを受け止めたのだと考えます。
 
 
ケッカソースをかけたときは良くない結果となってしまいましたが、原因はワインビネガーかもしれません。
酢酸、つまりお酢はワインと相性が良くないと言われています。酸味材料をレモン果汁に置き換えてやると、あるいは結果は違ったかもしれません。
 
とはいえ世の中には数えきれないワインがあります。
ほのかな樽熟成のチャコリを超えるものが、どこかにあるかもしれません。
 
シャブリをもってして抜群の相性はみせられなかったので、おそらくシャルドネでピッタリのものはなかなか見つからないでしょう。
あるとすれば、スペインのアルバリーニョか南仏のピクプール・ド・ピネか。ドイツのジルヴァーナーも試してみたい。
あるいはベースワインが樽熟成されているスパークリングワイン。シャルドネ主体のものが期待できるでしょう。
 
もし「こっちの方が白子に合うよ!」というものをご存知でしたら、教えて頂けるといち白子好きとして嬉しいです。
そして痛風が怖いのでしばらくビールやいくら、あん肝などは控えようと思います。
 
 
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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