
ストレス社会の荒波に疲れた1日の終わり、ほんのり甘みを感じるワインでほっと一息つきませんか。元気が出ない夜には、高級感たっぷりの濃厚ワインより、カジュアルでやさしい味がしみわたります。みずみずしく軽快な飲み口は、気張らずに飲めて、心と体をふっとゆるめてくれる存在。手頃な価格のやや甘口ワインなら、スルスル飲めて心地よく酔え、心のリセットになることでしょう。
COCOSおすすめのやや甘口ワイン6選
甘味を感じるのはブドウ由来の糖分が残っているから。発酵を途中で止めているので、少しアルコール度数が低め。それが軽い口当たりにつながっていて、今回ご紹介するワインの共通点です。
選び方のポイントは後味のキレ。スッキリと消えていくのがいいか、まったりなめらかなのがいいか。好みで選んでみてください。
日本ワインらしい親しみやすさ
後味まろやか
これぞまさに「ほっとする味わい」。
もともと糖度の上がりにくい甲州種で発酵と止めているので、凝縮感はありません。普段濃厚なシャルドネなどを飲んでおられる方には「薄い」と感じられるかも。その淡くソフトな味わいがいいんです。
生食用としても親しまれてきた日本のブドウ、その香りにどこか懐かしさも感じます。


「ピュアな甘味」はカナダワインの誇り
後味すっきり
カナダのワイン法による原産地を保証する規格として「VQA」というものがあり、このワインもネックに記載があります。輸入元情報によると、このVQAの認証は辛口では取得できないのだとか。
アイスワインを特産とするカナダにとって、甘口ワインこそが誇り!その意志のあらわれでしょう。みずみずしいフルーツの香りを持つ軽快な味わいは、飲みすぎ注意です。
可愛いラベルと爽やかな香りにニッコリ
後味まろやか
お酒の神様「バッカス」の名前を持つこの品種は、ドイツで1933年に開発された交配品種です。当時の需要に応じて、多収量で糖度の上がりやすい品種です。
その分というべきか高級ワインに相応しい風味の複雑さはなく、畑は減少傾向。ソーヴィニヨン・ブランにも通じるハーブ感を持ちますが、酸味ややさしくソフトな印象です。
前から人気、やっぱり美味しい
後味すっきり
輸入元の売上ランキングを出すなら、ずっと昔から毎年ベスト5には入っているという定番銘柄。それだけ多くの人に愛され、飽きずにリピートされる味ということです。
モーゼルのやや甘口リースリングとして、傑出・突出したところはありません。教科書的であり、想像通りで安心する味。だからこそあまり冒険したくないお疲れモードの時にピッタリです。
上品な香り、なのに味わいは・・・
後味まろやか
赤ワイン
赤の甘口ワインは、チョコレートのような甘い香りを持つものが多いのですが、このワインはちょっと違う。私は口に含むまで、甘味があることを感じられませんでした。
香りはカベルネ・フランらしい、ちょっと青いニュアンスを持つ華やかなもの。しかし味わいはまろやかなやや甘口で、ほっとするようなやわらかさです。渋味もほぼありません。
夏場は冷やして飲むのもいいでしょうが、個人的には真冬にコタツで飲みたいです。
思わず笑顔になるフルーティーさ
後味まろやか
カナダでアイスワインによく用いられる「ヴィダル」。ヨーロッパ系ブドウとアメリカ系ブドウの交配品種であるためか、いろいろなフルーツに交じって、ほのかに嗅ぎなれない香りがあります。それがまたいいアクセント。
フルーティーさが際立っていて、他の銘柄に比べるとやや濃いめ。一口目からフルーティーさが爆発するので、試飲販売の場ではとっても人気な銘柄です。
疲れた心にやや甘口が効く理由
高級ワインの大半は甘味がほとんどない辛口です。やや甘口ワインは決して人気のあるジャンルでもなければ、高いお金を払いたくなるタイプでもありません。
だからと言って全く飲まないのはもったいない。力強いワインが好きな方も、上品で土地の個性を表したワインが好きな方も、やや甘口ワインの良さを知っていただきたい。
とりわけ美味しく感じるのが、身心ともに疲弊して癒しを求めるような気分のときです。


ほっとひと息、やさしさに包まれる時間がつくれる
ピュアな甘味とシンプルな風味、それからアルコールの軽さ。それがやや甘口ワインが「やさしい」印象を与える理由です。


やや甘口ワインの多くは、特別に甘いブドウを使うわけではありません。通常の糖度のブドウを用い、発酵を途中で意図的にストップさせます。そうすることでブドウ本来の甘味が残ります。ただし貴腐ワインに代表されるデザートワインと違い、その甘みの強さは控えめです。
発酵・熟成の容器には、多くの場合ステンレスタンクが使われます。オーク樽が使われる場合もたいていは大きな古樽で、樽香はつきません。なのでブドウ本来の風味が感じられ、複雑さはあまりありません。
発酵を途中で止めるので、アルコール度数は低めです。それが口当たりの軽さにつながっています。
構えて飲むワインではない
特級畑や一級畑のブルゴーニュワイン。格付けシャトーの熟成したボルドーワイン。入手困難なナパ・ヴァレーのカルトワイン・・・・。そういったワインは文句なく美味しいです。もし購入出来たなら、飲むのが楽しみ!
そういう高級ワインって構えて飲みますよね。「よ~し、今日は○○を飲むぞ!」と。高級ワインなのだから、大いに期待します。


そういうワインは、元気なときに楽しみたいと思いませんか?体調もメンタルも万全なときに、しっかり向き合いたい。
今回ご紹介するワインは、構えて飲むワインではありません。
疲れて帰宅し、冷蔵庫に冷えてたら、「今日は疲れてるから、これでいっか」と開けるようなもの。そんな肩ひじ張らずに気楽に開けて、それでいてちゃんと満足させてくれる味わいなのです。
この「構えずに飲む」という点では、高級デザートワインではダメ。手頃な価格でシンプルな風味だからこそ、小難しく考えず気軽に飲めるのです。
結局みなが好きな甘口
「甘口なんてワイン初心者が飲むもの」そんな決めつけに、筆者は全力で異を唱えます。
確かに甘口ワインは初心者に好かれやすい。それはそもそも、人間の本能として甘い飲み物・食べ物を好むからだと考えます。なぜなら糖質はカロリーの源であり、生き物が本能的に求めるからです。
ワインをたくさん飲む人で「もっぱら甘口ワインばかり飲む」という人は稀。辛口ワインがメインという人が大半です。
でも試飲販売のような少量の味見ができる場では、甘口ワインってよく売れるんですよね。普段は飲まなくても、たまに飲んだら美味しく感じてしまうのです。
甘口ワインを避ける人の心理とは
なぜ美味しいと感じるはずの甘口ワインを避けるのか。
一つは健康上の理由があるかもしれません。
辛口ワインの糖質はビールや日本酒と比べてかなり低く、カロリーは主にアルコール由来のものです。しかし甘口ワインには当然多くの糖質が含まれます。糖質制限をしている方、ダイエット中の方は避けたくなるでしょう。


あるいは「辛口ワインの方が違いが分かりやすく面白い」という理由かもしれません。
甘味という強い味があれば、他の繊細な風味が相対的に感じにくくなります。極端な話、「甘いワインはどれも同じ味」と感じやすくなるのです。ワインを飲み比べるのが楽しい方にとって、どれも同じような味ではつまらないでしょう。
こういった真っ当な理由があるにせよ、筆者はこう考えます。
「たまにはいいじゃん、お疲れのときくらい」
やわらかな果実味が、心にそっと寄り添う
やや甘口の低アルコールワインがやさしいところは、酸味のシャープさも抑えられることです。
ブドウの糖度は収穫を早めれば抑えられます。完全発酵させた辛口ワインでも、アルコール低めの軽やかなワインはつくれます。しかしそういうものには、フレッシュでシャキっとした酸味があります。
気分をリフレッシュしたいときにはそれもいい。身体の疲労と夏のジメジメを吹っ飛ばしたいときは、そんなキレのいい酸味を持つワインがピッタリです。


でも心もおつかれモードのときには、そのシャキっと感はそぐわない。ほのかな甘味のあるやさしい味わいだからこそ、構えて飲まなくていい。そのやさしい味わいが、心にそっと寄り添うように感じるはずです。
やや甘口ワイン、選び方のポイント
一口に「やや甘口ワイン」といっても、じつはその中身はさまざま。今回の特集では、あえておすすめから外したタイプもあります。
本記事で扱う「やや甘口」の定義とあわせて、選び方のポイントをご紹介します。
「やや甘口」とはどれくらい?
「やや辛口/やや甘口/甘口/極甘口」といった甘味の表記は、明確な定義はありません。
本記事でいうところの「やや甘口」は、次のように定義します。
明確に甘味を感じつつも、食中酒として無理なく楽しめる程度
ここでいう甘味とは、発酵を途中で止めることで残った“ブドウ由来の糖分”によるもの。
オーク樽熟成からくるヴァニラ香や、熟した果実の香りで“甘く感じる”タイプのワインとは別物です。
やや甘口を見分ける表記とは
やや甘口ワインを選ぶ際に、それがラベルにきちんと書いてあれば簡単なのですが、表記のないものも多いのが実情です。
やや辛口/やや甘口は英語で「Off-Dry」と言います。「Semi-Sweet」も使われますが、ラベル表記されているのは稀です。
ドイツワインにおいては「Harbtrocken / ハルプトロッケン」や「Feinherb / ファインヘルプ」という表記が規定されています。ただどちらかというと「やや辛口」寄りです。
フランスワインにおいては「Demi-Sec」がやや甘口に当たります。


こういった規定はあります。でも今回ご紹介したワインには、どれ一つ書いてないんですよね。
表記のないやや甘口もたくさんあります。
夕食時の甘口ではなく、やや甘口
日常的に食事と一緒に甘い飲み物を飲む方は稀でしょう。コーラや100%のフルーツジュースなどです。栄養バランスが糖質過多になりやすく、早くお腹いっぱいになってしまいがちです。
それに強い甘味が料理の繊細な味付けの邪魔をします。
しっかり甘味のある甘口ワインを料理に合わせるのは、あまり一般的ではありません。もちろん甘口ワインに合う料理はあります。でも普段の夕食のお供には、ちょっとバランスが取れないでしょう。


甘さ控えめなやや甘口なら、あまり食事の邪魔をしません。特に砂糖を入れて甘辛く仕上げた料理や、ピリっとスパイスが効いた料理などには、ほのかな甘味が料理をやさしく包んでくれます。
食中酒としては辛口ワインが一般的ですが、やや甘口でも悪いことはあまりありません。
アロマティックさは控えめがいい
ゲヴュルツトラミネールに代表されるアロマティック品種は、今回はあえて外しました。「ほっとするやさしい味」ではないと考えるからです。


アロマティック品種はグラスに注いだ瞬間から香りが溢れます。甘い香りを持つものが多いため、味わいも糖分を残してやや甘口に仕上げることが多いです。
一方でその香りの強さから、風味がグイグイ迫ってくるように感じることが多いです。なので1本飲むころには飲み疲れするかも。
パーティー用途にはピッタリなのですが、癒しを求める一人晩酌には強すぎるかも。
癒しを求めて飲むなら、アロマティックさはほどほどがいいです。
スッキリ感をどれほど求めるか
やや甘口ワインをつくるのに適したブドウ品種の代表がリースリングです。
リースリングは高い酸味を持ちますが、程よい甘味があることでシャープさが抑えられ、やわらかい口当たりになります。それでも酸味自体は高いので、後味のキレはいいです。
酸味の感じ方には、好みの幅があります。「スッキリ」と「すっぱい」のボーダーラインは人それぞれ。
後味がキュっと締まって爽やかに消えていくのが好みなら、リースリングのやや甘口を。
なめらかな口当たりからまろやかにフェードアウトするのが好みなら、他の酸味が高くない品種を選ぶといいでしょう。
酸味の高さ・後味のキレが、やや甘口ワインを選ぶ重要なポイントです。
高級ワインばかりでない楽しみ方を
「お金に余裕があるならば、高級ワインばかり飲んでいたらいい」
私はそれは違うと考えます。決して高価なワインがあまり飲めないひがみではありません。
高価なワインよりむしろ手頃なワインの方が美味しく感じる。
身心のコンディションが万全でないなら、そういうシチュエーションもあるはずです。


そんな疲れた身体と心にしみるのが、やさしい味わいのやや甘口ワインです。
濃厚ではなくシャープでもない、ソフトで軽快な味わいが、あなたの心にそっと寄り添ってくれるはず。日々のストレスを消化し、明日も頑張る活力をチャージしてくれることでしょう。