ワインの楽しみ方ガイド

冷やして美味しい赤ワイン 温度による風味変化から賢く選ぶ

2024年8月20日

 
赤ワインのタイプによっては、冷蔵庫で冷やしても美味しいものもあります。
温度による風味の変化を知れば、冷たい温度でも魅力を発揮する特徴がわかります。
スムースな口当たりでスッキリとした味わいは、暑い季節でも美味しく感じるでしょう。
冷やして美味しい赤ワインは、ワインの楽しみ方の幅を広げてくれるはずです。
 

温度による風味の変化を知る

 
ワインのタイプに関わらず、一般にその風味は温度によって次のように変化します。
 
ワインの味わいは温度で大きく変わります。
 
ワインによってその魅力を最も発揮する「飲み頃温度」が変わるのはこのためです。
 
※香りのボリュームに関しては、大まかにはこの傾向ですが例外も多いです。
 
 

一般的なワインの飲み頃温度

 
ワインのおおまかなタイプごとに推奨する飲み頃温度は次の通り
 
ワインのタイプ 飲み頃温度
熟成した赤ワイン 17~20℃
渋味の強い赤ワイン 15~18℃
軽い口当たり or 果実感の強い赤ワイン 13~15℃
樽熟成した白ワイン 10~12℃
スッキリとした白ワイン 7~10℃
高級なシャンパン 10℃前後
手頃なスパークリングワイン 5~8℃
 
このように赤ワインは白ワインよりも高い温度で飲むのを推奨されます
その一番の理由は赤ワインに含まれるタンニンです。
 

※飲み頃温度はどの時点?

一般的な飲み頃温度の記載に対して、当店のおすすめはやや低めかもしれません。
COCOSはワインショップですので、利用者様はご自宅で飲むのがメインだと想定しています。ゆえに抜栓して飲み始める際の推奨温度を記載しています。赤ワインならワインセラーの温度設定を飲み頃温度にしていただくのがベスト。
ワインはグラスに注いだ際や時間経過で徐々に温度が上がります。飲み始めではなく、1本のボトルの序盤から中盤にかけて最も美味しくなると想定しているのです。その方が1本飲み終わったときの印象が良いと考えるのです。
飲食店のグラスワインで提供するなら最初の1口の印象が大事。あと1、2℃高めでもいいでしょう。

 

 
 

冷やして美味しく"ない"赤ワインとは

 
赤ワインが白ワインに比べ高めの温度を推奨されるのは、冷やすと美味しくない赤ワインがあるからです。多いからです。
その「美味しくない」原因を探れば、裏返すことで冷やしても美味しい赤ワインの特徴が浮かび上がります。
特にカギとなるのは、渋味と樽香です。
 
 

渋味の強いものはNG

 
ワインの渋味のもとはタンニンです。タンニンとはタンパク質などに結合しやすい性質を持つ水溶性成分の総称。口に含むと口内粘膜と結びついて洗い流すので、口の中が乾いたような刺激を受けます。
歯茎が引っ張られるように感じたり、飲みこんだ後に口がギシギシする、ザラザラするように感じるのはそのためです。
 
タンニン刺激はワインが冷たいほど強く感じます。強さだけでなくタンニンの質も荒々しく感じます。
赤ワインのなめらかさが損なわれるので、渋味の強いワインは高めの温度で飲む方が圧倒的に心地よく感じます。
 
 

酸味に関してはバランス次第

 
ワインの酸味も冷やした方が強く感じます。ただ酸味は強ければ悪いというものではありません。他の要素とのバランス次第です。
そもそも赤ワインの酸味は、一般的に白ワインよりも穏やかです。なので冷やしたからといって白ワインより強くなるわけではないのです。
果実味の強さや風味との調和によっては、通常温度でも冷やしても両方美味しいということも考えられます。
 
 

樽香が強いワインも非推奨

 
オーク樽熟成したリッチなシャルドネを冷蔵庫でキンキンに冷やして飲むと、あまり美味しくないことがあります。木材のような風味が強く出てしまい、ヴァニラのような甘い香りやフルーツの香りを覆い隠してしまうのです。
 
同じようなことが赤ワインにも言えます。冷やしたときにフルーツの香りは引っ込みがちで、樽の香りが変に目立つことが多いのです。焦げた木のように感じるかもしれません。
 
 
樽熟成を行わず、ステンレスタンクやコンクリートタンクで発酵・熟成を行ったワイン。あるいは樽を使っても古樽のみのものを選んだ方がいいでしょう
 
 

高価なワインはもったいない

 
高価なワインの中には豊かな香りを持つものが多いです。しかしワインを冷やすと香りのボリュームはどうしても控え目になります
 
もともとそれほど香り豊かなワインでなければ、その魅力が減ったとて問題ない。
でも豊かな香りを楽しめたはずのものを冷やして飲むのは、もったいないですよね。
 
冷やして飲むなら手頃なワインを推奨します。
 

冷やして美味しくない赤ワインを検証してみた

 
上記のような特徴を持つワインは、冷やすと本当に美味しくないのか。
実際に比較テイスティングしてみました。
 
試したのはこちらのワイン。
 
 
小瓶に移して片方はセラー温度15℃設定で保管。片方は冷蔵庫の冷気吹き出し口近くで保管しました。グラスに注いだ瞬間にも温度が上がるので、ワイングラスも冷蔵庫・ワインセラーで保管しています。
グラスに注いだ後非接触温度計で計測し記録しています。
 

〇飲み頃温度

【13.6℃】香ばしい樽材やヴァニラの香り。控えめにベリーの甘い香りも感じます。口当たりは滑らかで、余韻にほのかな酸味と樽の香ばしさを感じます。

 

〇冷やしたもの

【7.8℃】ベリーの甘い香りは弱くなり、わずかにトーストや木の香り。口に含んだ時の滑らかさがなく、ひたすらに強い渋味が残ります。酸味の強さは気になりませんでしたが、もったいない飲み方と言えるでしょう。

※検証時のヴィンテージは2022年 
 
 

冷やして美味しいワインを検証する

 
冷やして美味しく"ない"ワインの特徴をふまえ、冷やして美味しいワインはこのように選んで検証しました。
 

冷やして美味しそうなワイン

〇手頃な価格
〇渋味がほとんどない
〇酸味は高くても穏やかでも
〇ステンレスタンク熟成
〇甘いフルーツ感 あり/なし

 
ジューシーで甘やかな果実味のあるタイプは、冷やし目の温度で甘味が抑えられてスッキリと感じることが予想できます。
一方でそういった甘いニュアンスが控えめなワインは、冷やすことでバランスが崩れるのかどうかも、先ほどと同様の方法で検証しました。
 
 
 
 

冷やして美味しいように設計されました

 
 
コンセプトがそのものズバリ「冷やして美味しい赤ワイン」。東南アジアからの要望で開発されたそうです。
このグループのワインはだいたい明るく明確な果実味を持ったものですが、このワインは低温発酵によりそれが強調されています。
味わいとしては少し残糖を感じるような、ベリー感あふれるジューシーなもの。渋味を感じないやさしい口当たりです。
 
 

〇セラー温度

【15.0℃】少し甘いベリーの香りを感じますが、それほど香りのボリュームがあるわけではありません。ほのかに薬品のようなニュアンスもあります。甘いベリーの果実味が豊かにあり、渋味や酸味はあまり感じません。

 

〇冷蔵庫温度

【7.0℃】もともと香りのボリュームはあまりなかったので、冷蔵庫温度でもあまり変化はありません。口に含むと甘いベリーのニュアンスがよりスッキリとフレッシュになり、わずかに感じるタンニンがちょうどいいバランスです。

※検証時のヴィンテージは2022年 
 
さすが冷やして飲むことを前提につくられているだけあり、冷蔵庫温度の方が優れたバランスに感じました。ほんの僅かの渋味がちょうどよく全体をまとめています。
 
 

甘濃く渋味のない赤ワイン

 
先ほどのワインと同じようなものとして、カリフォルニアの低価格なジンファンデルが思い浮かびます。ストロベリーのようなピュアな果実味を持つものが多いです。
ただ、ジンファンデルはオーク樽熟成してつくらえるものが多いです。中には2000円程度でも一部新樽を使っているものもあります。
このワインはオーク樽熟成してはいますが、新樽を使っているとの表記はありません。味わいとしても樽香の印象は強くなかったため選びました。
 

〇セラー温度

【13.4℃】先ほどのファンティーニよりさらに甘いベリーの香りを感じます。それに隠れて樽香はほぼ感じません。この品種らしいプルーンみたいな甘い果実味が広がり、それが「親しみやすい」とも言えますが、ちょっとぽってりしすぎている印象も。

 

〇冷蔵庫温度

【7.8℃】冷やした方がまとまりが良くなりました。ブルーベリーのようなフレッシュな果実香に、よりスムースになった口当たり。甘さが控えめになってスッキリと楽しめます。

※検証時のヴィンテージは2021年 
 
冷やしたときと一番違いが大きかったのがこのOZVです。ただこれは好みの問題かも。ジンファンデルの甘い感じが好きなら、冷やして甘味を抑えてしまうのはもったいないと感じるかも。酸好きの私は断然冷やした方が好みでした。
1本で違った好みを持つ人に対応できると考えるとお得ではないでしょうか。
 
 

甘濃い系とは対極のものでもイケる!

 
キアンティに使われるサンジョヴェーゼという品種は、もともと渋味も酸味も強い品種。上質なものは長期熟成できます。
しかしそんなタイプばかりでは、低価格帯のものがつくってすぐ売れなくて困ります。手頃なものはどうやら渋味を抑える工夫をして醸造している模様。
このワインも上品で軽やかな味わい。渋味はほとんど感じません。あとは酸味とのバランスがどうでるかですが、はたして・・・。
 
 

〇セラー温度

【14.0℃】やや熟したベリーとバラのドライフラワー、赤土のような香り。口当たりはそれほど強くなく、中程度の酸味と弱い渋味。少し余韻にザラっとした感触があります。

 

〇冷蔵庫温度

【6.6℃】香りは引っ込んでしまい、ほぼ感じません。口に含むとベリーのニュアンスは弱くなります。ただ口当たりのスムースさはむしろ上がった印象。酸味の強さは気になりません。余韻にほのかに苦みを感じますが、料理と一緒ならまず気にならないでしょう。

※検証時のヴィンテージは2022年 
 
総じて予想よりも変化が少ない結果となりました。香りが弱くなるくらいで、飲み頃温度と同じ印象のまま冷たくても楽しめます
冷蔵庫保管しておいて、食事時はテーブルに置きっぱなしで味わい、温度が上がるに任せる。そんな飲み方で問題ないでしょう。
 
 

冷やすことでよりスムースに

 
 
ツヴァイゲルトという品種はオーストリアで最もメジャーな黒ブドウ。口当たりは軽くスマートなもので、どっしり重たいパワフルなものは飲んだことがありません。
少し酸味の質は違いますが、先ほどのキアンティと似たようなバランス感。しかもステンレスタンク発酵・熟成なので、冷たい温度でもあまり変化はないものと予想し選びました。
 
 

〇セラー温度

【13.8℃】ラズベリーやイチゴのような赤いベリーの香りなのですが、少し暗い印象を受けます。先ほどのキアンティに比べるともう少し果実のジューシーさがあり、タンニンはほぼ感じません。

 

〇冷蔵庫温度

【7.8℃】ベリーの甘い印象が抑制されて、より引き締まった感じ。このワインも冷やすことで口当たりの艶やかさが増しました。酸味は強くなりますが、気になるほどではありません。このワインは冷やしても苦みは感じませんでした。

※検証時のヴィンテージは2021年 

 

冷やすことでフルーティーさが少し抑制されて、より大人な印象に。ただキアンティと同じで、14℃前後の時とそう大きくは変わりません。セラー温度で保管しても冷蔵庫でも同様に楽しめるワインと言えるでしょう。
  
 

赤ワインを『冷やす』選択肢で広がる楽しみ方

 
赤ワインをあえて冷蔵庫温度で飲むというのを、考えたことがなかった方もいらっしゃるのでは。
初めからワインを適温で飲むことに慣れていたならなおさらです。
 
冷たいワインが飲みたければ、別に赤ワインじゃなくてもいい。白ワインやスパークリングワインはもともと冷やして美味しい。
そもそもワインである必要すらないかも。ビールやハイボールでもいいわけですから。
 
あえて冷やして赤ワインを飲む『必要』はありませんが、選択肢に入れておくことに損はありません
 
 

温度変化でもっとワインを理解する

 
その赤ワインが冷やして美味しいかどうかを検証するのは簡単です。
小瓶などに1杯分取り分けて、冷蔵庫で冷やせばいい。通常の温度のものと飲み比べると違いがハッキリするでしょう
もし美味しくなかったら、その一口のあとは温度が上がるのを待って飲めば、失敗も痛くありません。
 
 
ワイン1本飲み切る前に、ものによっては飽きてしまう
一人でワインを飲む方の中には、そんな悩みを持つ方もいるでしょう。味に敏感で好奇心旺盛な方ほど、単調に感じやすいかも。
そんなときには温度変化で『味変』してみるのはいかがでしょうか。冷やすことで今回の検証のように違った表情を見せてくれるワインもあります。特に甘味の印象は大きく変わります。
 
その1本をもっと楽しみ切ることができるでしょう
 
 

アウトドアにてすぐ美味しいワインを

 
赤ワインの飲み頃温度、15℃前後にキープするというのは、なかなか難しいことです。特にアウトドアでは。
かといって外気温で放置するのは、味わいがダレて風味もぼやけ、アルコールが目立って美味しくありません。
むしろ冷やす方が楽。クーラーボックスに白ワインや他のお酒と入れておけばいいのです。
 
 
多くの赤ワインは、そこから出してしばらく温度が上がるのを待って飲む方が美味しいです。でも冷やしても美味しいのであれば、クーラーボックスから出してすぐ楽しめます。飲んでいるうちに温度が上がってきますが、もともと少し高めの温度で飲むのですから問題ありません。
 
冷やしても美味しい赤ワインは、アウトドアでの取り扱いが楽です。
 
 

チェーンレストランのグラスワインに

 
ワインを美味しく提供する上で温度管理は重要ですが、それを多くのアルバイトスタッフに教育するのは簡単ではありません。
ワインの扱いがメインではないレストラン、居酒屋などでは、赤ワインが室温で提供されることも多くあります。
 
温い赤ワインを飲むくらいなら、まだ白ワインと同じく冷蔵庫に入れてた方がマシ。「ワインは冷蔵保管」とする方が品質管理できます。
提供方法にあわせて、冷蔵庫保管しても美味しい赤ワインをグラスワイン用に選ぶというのもいいでしょう。
 
 

温度を変えてより幅広いワインの楽しみを

 
一般にワイン屋の8月の売り上げは、1年の中でも低い数字です。その理由の一つに、「蒸し暑い中で濃い赤ワインは飲む気分にならない」というのがあるでしょう。
 
白ワイン、スパークリングワインにシフトする手もあります。
暑い時期でもあまり気にならない、軽やかなタイプを選ぶのもいいでしょう。
夏場はワイン以外のお酒にする方も多いはず。
 
 
それらの選択肢に、「冷たくて美味しい赤ワインを飲む」というのを加えてみてはいかがでしょうか。
白ワインより美味しいからではありません。ただ、娯楽の選択肢は多い方が心は豊かになるはずです。
 
時にワインの常識を疑ってみるのは、楽しみ方の幅を広げてくれるでしょう。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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