「エルギン=ブランド地区」にした立役者
「南アフリカで最も急速に伸びているワイナリーのトップ10」
「最もエキサイティングで大発見のトップ10」
「ベストバリュー・ワイナリーのトップ10」
(以上、 Wine Report 2007 by Tom Stevenson)
「南アフリカの優秀なワイナリー」
(ジャンシス・ロビンソンMW)
多くの専門家がポール・クルーバーを称賛するにはワケがあります。
もちろん、このワインを美味しいと感じているのは、専門家だけではありません。
むしろ一般消費者こそ「このワインすげー!」と喜びリピートしています。
ワイン通だけじゃない、多くの人の心をつかむヒミツに迫ります。
ポール・クルーバーといえばまずこのワイン!
このワインをきっかけに「南アフリカのシャルドネってすごい!?」となった人続出のようです。
美味しさのヒミツその1 エルギンの冷涼気候
ポール・クルーバーが栽培しているブドウ品種は、どれも冷涼な気候を好むものです。
それは温暖な南アフリカにあって冷涼な産地、エルギンのテロワールに合わせたから。
南アフリカ、西ケープ州でブドウ栽培の中心地であるステレンボッシュ。
その市街からエルギンまでは、車で1時間ほど。山をひとつ超えたらほどなくです。
温暖で乾燥しているステレンボッシュと比べると、気温が急に5度ほど下がります。
この急激な変化は、海からの風とエルギンの地形がもたらします。
エルギンが冷涼なわけ
南アフリカはその名の通りアフリカ大陸の南端。
西ケープ州の緯度は高い方、つまり涼しい方です。
とはいえ南緯34度付近で、日差しは日本と比べるとずっと強く感じます。
よってそこが冷涼か温暖化を決める要因は、海からの冷たい風が入ってくるかと日当たりです。
エルギンは盆地になっており、そのすぐ南側は南大西洋。
そこを南極方向から北上する寒流が流れています。
海側から冷たく湿った風が山を越えて吹き込んできます。
それが気温を下げるとともに、雲となって日光を遮るのです。
曇り空が多いのも、エルギン地区の特徴です。
更に盆地という地形は、朝日が昇るのも遅く、夕日は早く沈みます。日照時間の短さが畑の冷涼さにつながっています。
なぜ冷涼産地が優れているのか?
ブドウの糖度は生育期の気温が高いほど早く高くなります。
そのスピードは品種によって大きく異なります。
ピノ・ノワールやシャルドネといった、いわゆる"ブルゴーニュ系"ブドウ品種は涼しい環境を好みます。
暑いところだと早く糖度が上がり過ぎて、風味の未熟なワインになるか、アルコールの高すぎる酸のないワインになってしまいます。
ブドウのハンギングタイム(ブドウの房が繋がっている時間)が長い方が、より質の高いブドウとなるのです。
酸を保つための工夫として行っているのがナイトハーベスト。
気温が低いうちに収穫することで、ワインの味わいを爽やかにする成分が多く含まれているといいます。
また、ブドウの温度が低いということは発酵の初期がゆっくり進むということ。低温でゆっくり時間をかけて発酵させることで、よりフルーツ感にあふれるワインとなります。
エルギン地区のパイオニア
もちろん寒ければいいというものではありません。
冷涼な地域は霜害、春に急に氷点下まで気温が下がって、ブドウの新芽が死んでしまうリスクがあります。
また、秋になってもブドウが熟さなければ、青臭い風味のワインになってしまいます。
安いワインを大量に作りたければ、暑く乾燥した地域のほうがはるかに容易です。
涼しく湿ったエリアでのブドウ栽培には、より手間と技術が要求されます。
だからこそエルギン地区のパイオニア的な存在であるポール クルーバーがほめたたえられるのです。
今ではエルギン地区のワイナリーも30社を超えました。
キャサリン・マーシャルやロングリッジなど、ワイナリーはステレンボッシュでもブドウの一部をエルギンから調達している生産者もいます。
エルギンは今や、南アフリカきっての銘醸地となりました。
美味しさのヒミツその2 大大大自然!
雲の多いエルギンは当然雨も多く、ステレンボッシュに比べて植生豊かです。
日本で見かける山のようにうっそうと樹が生い茂るというのは南アフリカでは多くありませんが、エルギンは別。
ポール クルーバーの敷地の中には様々な動植物が生育しています。
なんと2000haもある所有地の大半が国立公園で、畑にしていい場所はごく一部。
ブドウ畑は100haに満たない面積です。
ポール クルーバーを囲む大自然
ポール クルーバーの敷地の一部を写真でご紹介します。
敷地の広いワイナリーは数あれど、その中を電車が走って駅があるところはめったにないでしょう。
広大な自然公園に囲まれるポール・クルーバーの畑は、認証こそありませんが環境に配慮した栽培を実践しています。
環境汚染とは無縁の畑。それは間違いなくワインの美味しさにつながっていることでしょう。
美味しさのヒミツその3 受け継がれる哲学
ワールドクラスのワインをつくること。
それもクルーバー一家だけの力によるのではなく、チームで達成すること。
家族経営の企業としてチームを導き、100年以上にわたって成功を収めてきた価値観を守り続けること。
ポール クルーバーはこれを社是としています。
そのための行動の一つが「タンディ・プロジェクト」です。
タンディ・プロジェクト
1990年代に入ってアパルトヘイト(人種差別政策)が廃止されました。
それを受けてポール・クルーバー氏は、所有する果樹園やワイナリーの黒人労働者、その地域の住民達の生活向上を目的としたタンディ・プロジェクトを始めます。
「タンディ」とは、アフリカ系コーサ人の言葉で「愛」を意味します。
その一環として、オリジナルブランドのワイン「タンディ」を生産しました。
その販売利益により、彼らの住む地域の生活環境を改善して行くことを目指しています。
今では、そのタンディ・ワインも国際的にも高く評価され、タンディ・スタッフも自分の仕事に誇りを持てるようになりました。
こうしたポールクルーバーのユニークな企画とプロジェクトは、今では南アフリカ国内だけにとどまらず世界からも注目されています。
自然・社会貢献型のワインは美味しい?
こうした自然保護や社会貢献は、それ自体は直接ワインが美味しいことにはつながりません。しかし関係ないとも言い切れない。
畑の環境がずっと健全であることは、様々な栽培上の工夫を同じ条件で比較できるということ。より良い栽培法を見出すことにつながります。
労働者の生活が向上すれば、将来的により多くの賃金が必要になるかもしれません。しかし意欲的に働いてくれる労働者は、そのコスト以上の利益をもたらしてくれるでしょう。
長期的に見た場合、自然・社会に貢献しているワイナリーのワインは、ずっと我々を満足させてくれる見込みがより高いと言えるでしょう。
美味しさのヒミツがつまったワインたち
ポール クルーバーのラインナップは全9種。
看板ワインであるピノ・ノワールが3つのクラス。
シャルドネが3つのクラス。
それからソーヴィニヨン・ブランとリースリング。
そしてよくできた年だけリリースされるリースリングの貴腐ワインです。
ポール クルーバーのワインの方向性をあえて言葉にするなら、『みんなに好まれる味わい』。
キュベによっては12本1ケース換算で1万ケースを超える量を生産します。
それだけ生産され消費されているという事実。ポール クルーバーの品質の表れです。
人々の好みの真ん中狙い。
なかなか美味しくてリピートしたくなる。
それこそポール クルーバーのワインの魅力です。
スタンダードな『エステート』シリーズ
ポール クルーバーを飲み始めるなら、入り口となるのは『エステート』シリーズ。
評価が高いのはピノ・ノワールなので、まずはこれから飲み始めるのをおすすめします。
もし初心者の方におすすめするとしたら、わたしならこのリースリングを選びます!
通常の辛口白ワインよりちょっとだけ多めの残糖値。
しかしエルギンならではの豊かな酸味に支えられ、スッキリとした味わいです。
限りなく「辛口」よりの「やや辛口」です。
SNS上でやたらと評価の高いシャルドネ。ひそかに一番生産量の多いソーヴィニヨン・ブランも見逃せません!
トップキュベ 『セブン・フラッグス』
エステートのシリーズを飲んでもし気に入っていただけたら、その次は特別なときに『セブン・フラッグス』の2種を試していただきたい。 まるで雰囲気・スケール感が違います。
例えるならお母さんが家で腕によりをかけてつくる料理と、フレンチレストランのフルコース。
どちらがいいとかではなく、飲むシチュエーションが全く違うのです。
一口飲めば、「あ!わたし今、高いワイン飲んでる!」と感じさせてくれる説得力。
違いを感じてください。
その他のワイン
価格も手ごろで、スクリューキャップで気軽に楽しめるのが『ヴィレッジ』シリーズです。
上手く貴腐菌がついた年にしかつくれないため、そのヴィンテージが無くなると下手すると2、3年待ち。そんなことも珍しくないデザートワインがこちら。貴腐ワインとしては割と求めやすい価格です。
たくさんの人の「美味しい」が集まるポール・クルーバー
総じてポール・クルーバーの味わいは、王道のど真ん中。ブドウ品種の特徴が素直にグラスから感じられます。
エルギンという冷涼な気候を活かした味わいながら、酸味を強調した通向けの味わいというわけではありません。
むしろかなり詳しいプロのなかには、「樽熟成などの"お化粧"が強くて好きじゃない」という人もいるくらい。
もちろん、全ての人に「美味しい」と言わせられるワインなんて存在しません。
だからこそポール・クルーバーはよりたくさんの人の「美味しい」にハマる味を目指した。
ポール・クルーバーの目指した美味しいと思ってもらいたいたくさんの人のなかに、きっとあなたもいるはずです。