Pick Up 生産者

Pick Up 生産者 南アフリカワインはじまりの地で コンスタンシア・グレン

2020年3月27日

 
1659年2月2日。その日、南アフリカで初めてワイン用ブドウを醸しワインが作られました
その地こそ、ケープタウンの南側に位置するコンスタンシアだったといいます。
 
そこに居を構える9つのワイナリーの一つ、コンスタンシア・グレン。
そのワインには南アフリカきっての冷涼産地であるコンスタンシアの魅力が詰まっています。
 
 

コンスタンシアってどんなとこ?

 
ケープタウンを見下ろすように聳え立つ、テーブルマウンテン。
そこから連なる山脈、テーブルマウンテン山脈が南へ伸び、コンスタンシア山脈へと続きます。
 
 
 
その東側、偏西風から守られるようにして広がるコンスタンシアの街。
ケープタウン周辺で最も地価の高い住宅地だそうです。
日本でいうと田園調布や芦屋といったところでしょうか。おしゃれで立派な家ばかり。
 
 
そんな高級住宅街のそばにワイナリーを構えているということは、資金力の現れかも。
資金に乏しければ、農地を売り払って住宅地として販売した方が手っ取り早くお金になります。
そうせずにワイナリーを続けているだけでも、金銭的な余裕があると推測できます。
 
その表れの一つが、9つのワイナリーに共通する「Constantia」の浮き彫りが入ったワインボトル
共通のロゴが入ったボトルを使うことで、コンスタンシアというブランドの育成を図っています。
 
 
コンスタンシアは南アフリカで最も古い産地であるとともに、新世界で最も古い産地でもあります。
そしてワイナリー9軒ということから分かる通り、最も小さな産地。
しかしながら、無視できない素晴らしい栽培環境でもあります。
 
 

コンスタンシアのテロワール

 
大西洋から吹き込む湿気を含んだ風が、山脈を越えるときに雲を作って雨を降らす。
コンスタンシアのあるケープ半島は、東西を大西洋とフォールス湾に囲まれて最も冷涼かつ最も雨の多い地域です。
 
それでも年間降水量は1000mmくらいで、日本平均の1500mmに比べると随分少な目です。
 
 
私が訪問したのは2月の中旬。
デヴィッド・ナディアのあるスワートランドでは概ね収穫が終わり、ステレンボッシュでも白ブドウは終わって黒ブドウがもうすぐという季節。
コンスタンシア・グレンではソーヴィニヨン・ブランの収穫もまだ始まっていませんでした。
 
ソーヴィニヨン・ブランはあと1週間ほど。
黒ブドウは3月半ばに収穫予定とのことです。
 
ブドウは通常、開花から100日前後で収穫を迎えると言われます。
やや冷涼産地であるボルドーでも110日ほど。
それがコンスタンシアでは収穫まで120日もかかるそうです。
 
 
冷涼な気候であるので、栽培品種は白ブドウが中心
中でもソーヴィニヨン・ブランが主力であり、コンスタンシアに400haあるブドウ畑のうち、およそ200haはソーヴィニヨン・ブランです。
 
 
その中でコンスタンシア・グレンは黒ブドウの栽培量の方が多い珍しい生産者
その理由は立地にあります。
 
テーブルマウンテン山脈とコンスタンシア山脈のつなぎ目。そこだけ窪んだように山脈が低くなっているところがあります。
これが「コンスタンシア・ネック」と呼ばれるもの。
 
 
山脈東側に広がるブドウ畑は、山脈によって西日が遮られるのも冷涼な理由の一つです。
しかしコンスタンシア・ネックの西側では山脈が低いため、他の地域よりも1時間も日照が長いのです。
 
結果、黒ブドウもよく熟すため、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、マルベック、プティ・ヴェルドといったボルドー系品種も多く栽培しています。
 
 
 

コンスタンシア・グレン

 
コンスタンシア・ネックの東側斜面に広がるのが、コンスタンシア・グレンのワイナリーと畑。
60ha所有する面積のうち30haがブドウ畑です。
 
1998年までこの地はブドウ畑ではありませんでした。
その年ここを山火事が襲い、すべてを焼き払ってしまいます。
 

オーナーのHorst Praderさん

 
オーナーたちと「これからどうする?」と話し合ったとき、みんなワインが好きだったこともあり、ブドウ畑にしようという話になりました。
 
粘土質が多く保水性がいいため、南アフリカでありながら灌漑をしていません
雨のあとも地面は地表近くから乾いていきます。
灌漑をしないなら、ブドウの根は水分を求めて下へ下へと育っていきます。
 
それに対し灌漑をすると、地表近くで水分を得られて根を伸ばす必要がありません。
簡単に言うとこれが「無灌漑の方が品質がいい」と言われる理由です。
 
 
とはいえやはり雨の多さを反映してか、収穫前のブドウの実はパンパン!
特にマルベックなどは、ステレンボッシュで見たカベルネ・ソーヴィニヨンの実の倍くらいの直径がありました。
 

粒の大きさがバラバラのマルベック。大きいものは食用ブドウくらい。

 
それもあって、コンスタンシア・グレンのワインから「凝縮感」や「力強さ」はあまり感じません。
しかしブドウが熟していないわけではなく、「重さはなくて風味は健全」なのが持ち味。
 
1万円、2万円のワインの味は全くしませんが、バランス感は絶妙に素晴らしい
価格相応であるとともに、強く印象に残るわけではないのにまた飲みたくなる味なのです。
 
 
 

コンスタンシア・グレンのワイン

 
コンスタンシア・グレンは4種類のワインを生産しています。
ソーヴィニヨン・ブランの単一は別として、他の3つには「ツー」「スリー」「ファイヴ」という数字がワイン名になっています。
これはブレンドしている品種の数。品種はボルドーブレンドです。
 

コンスタンシア グレンのレストラン。週末になると地元の客で賑わう。

 

コンスタンシア グレン ソーヴィニヨン ブラン

ココス未入荷 定価2600円(税抜き)
 
フレッシュな風味を重視して、ステンレスタンクで醸造されたソーヴィニヨン・ブランの単一ワイン。
 
パッションフルーツとシトラスの風味がバランスよく感じられ、とても明るい印象。
ソーヴィニヨン・ブランの特徴香であり好き嫌いが分かれる、メトキシピラジン由来の青い香りはごくわずかで、むしろプラスに働いています。
 
アルコール度数が13.85%もあるのが信じられないくらい(テイスティングで12%くらいかと思いました)非常に清涼感あふれる白ワインです。
 
 

コンスタンシア グレン ツー

 
2018年ヴィンテージはソーヴィニヨン・ブラン68%とセミヨン32%。
600Lの大樽を使うほか、セメントのエッグタンクを使います。
 
コンスタンシア・グレンにもありました。
今流行りの陶器製エッグタンク。
 
 
もとはといえばジョージアのクヴェブリ。
陶器でできた大きな容器に、ワインの果汁と果皮・梗なども一緒に入れて発酵・熟成を行います。
 
南アフリカで使われているものは、陶器製にせよコンクリート製にせよ材質は違いますが、その形の理由は同じ。
発酵によって生じる熱やガスを利用して自然と対流が生まれ、よりしっかりと抽出が行われるように。
 
陶器製エッグタンクは、空気を通します。
なのでオーク樽熟成のように、ワインには適度な酸素接触があります
しかしオーク樽と違い、バニラ香やオークの風味はつきません
 
酸素接触によって落ち着いた雰囲気の安定した熟成ポテンシャルのあるワインをつくりたい。
でもオークの風味はつけたくない。
 
そういう意図で、南アフリカで陶器製エッグタンクは使われているようです。
 
とはいえ見かけたエッグタンクは3個ほど。
コンスタンシア・グレンの生産規模からすると、まだまだ実験の段階なのでしょう。
 
 
単一のソーヴィニヨン・ブランに比べると、酸素接触の分フレッシュな果実感は減ります。
その代わりに程よくリッチで厚みのある口当たりが生まれます。
 
 
フレッシュすぎない果実味、ふくよかすぎないボディ、控えめな凝縮感。
このワインのキモはバランス感なので、申し訳ありませんが言葉では絶対に伝わりません。
「ちょうどいい」という言葉がすごく似合う白ワインなのです。
 
 

コンスタンシア グレン スリー

ココス未入荷 定価3500円(税抜き)
 
メルロー中心にカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。
まるでボルドーのセカンドワインのような、ファイブの弟分的なポジションです。
 
新世界のボルドーブレンドでありながら、やはりカリフォルニアなどとは方向性が大きく違います。
大きく違うのは「果実の甘い風味」がほとんどないこと。そういう意味ではボルドー的です。
適当な日本語がない表現の「Savory」と
う言葉が当てはまりそう。
 
同価格帯の右岸ボルドーから、若いころのとげとげしさを抜いてやさしさを足した。
そんなイメージのワインです。
 
 

コンスタンシア グレン ファイブ

 
イギリスのワイン評価誌、デキャンタのワインアワードで97点を獲得したのが、ファイブの2015年ヴィンテージ。
専門誌の評価で劣るものの、2016年も負けじと素晴らしい出来です。
 
 
2016年のブレンド比率はカベルネ・ソーヴィニヨン 30% 、 カベルネ・フラン 29% 、 メルロー 23% 、 プティ・ヴェルド 12% 、 マルベック 6%。
2016年は比較的温暖なヴィンテージだったため、カベルネ・ソーヴィニヨンが良く熟し、その比率を上げることで熟成ポテンシャルを持たせています。
 
コンスタンシア・グレンの特徴は、12%ものプティ・ヴェルドをブレンドすること。
もちろん比率は年によって変わりますが、ボルドーやナパに比べて明らかに多いです。
これはごろごろとした石を含むやせた土壌の、プティ・ヴェルドに最適なブロックがあるから。
 
たまたま現地で2015年、2016年の比較試飲の機会に恵まれました。
2016年の方がマルベック比率が少ないためか、土っぽさが控えめで洗練された印象があり、私はこちらのヴィンテージの方が好みでした。
 

右端の貴腐ワインはレストラン限定

 
 
 
コンスタンシアは南アフリカワインはじまりの地。
当初栽培され、ヨーロッパに出荷されたのは、甘口の白ワインでした。
 
当然、コンスタンシア・グレンではその甘口も作っています!
しかしその生産量の少なさゆえでしょうか。残念ながら、ノーブル・レイトハーベストはコンスタンシア・グレンのレストランでの提供のみ。
日本への輸出はおろかワインショップでの販売もないとのこと。
 
 
 
コンスタンシア・グレンのワインに共通するのは、適度な凝縮感の低さ。
それは決して収量が多いことによる安っぽさではありません。
雨の多いコンスタンシアというテロワールを反映しながら、長いハンギングタイムによるきちんと熟した風味。
 
上質で高級感がありながら濃すぎない
ゆえに素晴らしくフードフレンドリー
食事を引き立てる「ちょうどよさ」こそが、コンスタンシア グランの魅力です!
 
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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