低価格帯からプレミアムワインまで幅広いワインで「価格以上の美味しさ」。
それを可能にするのは、協同組合のデメリットをメリットに変える工夫です。
プーリアの恵まれた気候のものと、一口で虜にされるような濃厚でリッチなワインの数々。
サン・マルツァーノのワインを知れば、きっと身近な人とその美味しさをシェアしたくなることでしょう。
サン・マルツァーノの1番人気はこのワイン
当店COCOSでも昔から非常に人気が高く、輸入元としても稼ぎ頭のこのワイン。
特に強いのが試飲販売です。百貨店のイベントなどに出品すれば、一口試飲したお客様が次々に買っていく!プラカップのほんの少量でも『価格以上の価値』が伝わるからです。
テイスティングノート
まるでとっても濃厚なブドウジュースにアルコールを加えたかのような味わい。ブラックベリーやプルーンのような色濃く熟したフルーツの濃密な香りが豊かに広がります。力強い味わいなのは間違いないのに、渋味は穏やかで適度な酸味があってとっても親しみやすい。どっしりと重たいのにワインを飲み始めの方にもおすすめできる味わいです。
人気の理由
ワインの風味表現って、それを読みながら飲んでもいまいちピンと来ないものもあるはずです。
その点でこの「コレッツィオーネ」は、説明通りの味わいがダイレクトに脳に届く!そういう意味で「分かりやすい」味わいです。
3000円弱の赤ワインとして他を圧倒する香りのボリュームと風味の濃密さ。それを1口目からしっかり実感するので、プラカップの少量試飲であったとしても「他のワインとは違う!」と感じさせてくれる。なかなか替わりの効かないワインです。
だからこそ試飲販売すれば爆発的に売れますし、一度飲んだ人は何度もリピートしたくなるのでしょう。
本記事ではこのコレッツィオーネをつくるサン・マルツァーノについて紹介します。初めて知る方はまずはコレッツィオーネでこの生産者のパワーを感じていただきたい。一度ならず飲んだことがある方は、なぜサン・マルツァーノのワインが美味しいかを知って、ぜひ他のワインにも注目してみてください。
「良いワイン」をつくるとは
「良いワインの定義とは何か」それは決して一つには定められません。専門誌で高得点の高級ワインだけが良いワインではありません。「これ買ってよかったな~」と笑顔になるなら、それは少なくともあなたにとっての良いワインです。
その答えの一つとして、「たくさん売れ続けるワイン」というのは否定できないでしょう。それはつまり多くの消費者が何度も選んで購入する味と価格だから。それだけ多くのブドウやワインを造るために必要なものを消費し、経済を回している証だから。多くの人を幸せにし続けているワインだから。
そういう視点で見るなら、サン・マルツァーノは間違いなく「良いワイン」をつくっています。
サン・マルツァーノの急成長
サン・マルツァーノは「協同組合」という生産形態です。
1962年、プーリア州に畑を持つ19人のブドウ栽培家、農家が集まってサン・マルツァーノを設立しました。最初は名もなきワインとしてタンクごと売却していましたが、1996年から「サン・マルツァーノ」ブランドとして自社ワインの製造を開始。その美味しさと手頃な価格は瞬く間に一般消費者のハートをつかみ、今では世界60か国以上で楽しまれています。
その成長の過程で多くのブドウ栽培家がこの協同組合に加盟しました。
協同組合という生産形態は決して珍しくありません。しかしサン・マルツァーノほどの成功を収めているところはそう多くないはずです。
仕組み上のメリットはそのままに、デメリットをなくす。その工夫がサン・マルツァーノの成功の秘密。先見の明がある代表取締役のフランチェスコ・カヴァッロ氏の手腕によるものです。
協同組合のメリットとデメリット
協同組合がつくるワインの中に傑出したものは、正直そう多くはありません。
農家への支払いは基本的にブドウの重量あたりで支払われます。
ブドウの品質を明確な基準で判別できたらいいのですが、現実にそれは困難。だからブドウの質に対して細かく価格をつけることはできません。だからこの形態だと「質より量」になりがちです。収量制限をあまりせずたくさんブドウを収穫した方が、農家は儲かりますから。
なので協同組合がつくるワインは、その地の平均的なものと比べて風味の凝縮感に欠けるものが多いです。
その分価格は魅力的です。
基本的に協同組合の生産量は多いので、発酵タンクや瓶詰設備といった設備投資にスケールメリットが生まれます。醸造はきちんと経験を積んだ醸造家を雇って、農家は栽培に専念する場合も多いです。
ドメーヌもののワインに比べ、「ワインの品質はやや低く、価格はぐっと低い」。そんなワインが多い協同組合。
しかしサン・マルツァーノに関しては「ぐっと低い価格はそのままに、品質は平均を上回る」からこそこれほど人気なのです。
サン・マルツァーノ 価格以上な3つの理由
協同組合という形態でありながらサン・マルツァーノのワインが美味しい理由。
「ベストを尽くす」というシンプルにして肝要な彼らの哲学が実践されているというのもあります。でも根性論で安くて美味しいワインはつくれません。そのための創意工夫があります。
価格以上な理由を筆者は次の3つだと考えます。
- プーリアの恵まれた気候と土着品種
- 最先端技術を広く実践する栽培と醸造
- ラインナップに込める想いと戦略
「濃厚ワインならお任せあれ」プーリア州
まずはサン・マルツァーノのあるプーリア州がブドウ栽培に圧倒的に適しているという点でしょう。
よくイタリアは長靴の形に例えられます。プーリア州はそのかかとの部分。
イタリアの大部分は地中海性気候です。夏に乾燥し雨は冬場にまとめて降ります。ブドウの生育期に晴れが多ければ、ブドウはよく熟します。加えてカビなどのブドウの病気のリスクが低いため、手間がかからず安定していいブドウが録れます。
夏にはアフリカ大陸からの南風「シロッコ」が吹きます。この熱風もブドウの完熟を助けます。
同じブドウ品種なら暖かい環境ほど早く糖度が上がります。一方で1本の樹になるブドウの房を増やす、つまり収穫量を増やそうとすると糖度は上がりにくくなります。
プーリアの高温な気候なら、たくさんブドウを育ててもしっかりブドウが熟してくれます。だから安くても濃厚なワインをつくれるのです。
ただ暑いだけの環境だと、酸味が低くなりすぎて厚ぼったくつまらないワインになってしまいます。
その点でプーリアはイオニア海、アドリア海の2つの地中海に挟まれた土地。畑の気温を下げる冷たい風も入ってくるうえ、なだらかな丘陵地帯のため風が遮られません。夜間は気温がしっかりと気温が下がり、その寒暖差が適度に引き締まった味わいを生みます。
選別を勝ち抜いたからこその「土着品種」
「土着品種」とはその土地で昔から多く栽培されてきたブドウ品種。その上で他の地域であまり栽培されていないものを言います。
イタリアのワインづくりの歴史は非常に長いです。昔から戦争も多い国ですので、他地域のブドウが持ち込まれることも多かったでしょう。
プリミティーヴォ、ネグロアマーロ、ネーロ・ディ・トロイアといったサン・マルツァーノが主力とするブドウ。それらだけが昔から栽培されてきたのではありません。様々なブドウの栽培が試みられてきたはずです。あるものは枯れ、あるものはブドウが熟しにくく、あるものはワインが美味しくなかった。そういったものは歴史の中に消えていき、地元の人たちにとって栽培しやすく美味しいワインになるブドウだけが選ばれていった。
その結果が現在プーリアで「土着品種」と呼ばれているブドウです。
プーリアの気候、プーリアの畑に適したブドウを中心にワインをつくる。だから無理せず良質なワインをつくれるのでしょう。
ベストな収穫作業の難しさ
ブドウをベストなタイミングで収穫することは大きく品質を左右します。収穫が早すぎれば風味が成熟せず、遅すぎれば酸が落ちてしまいます。
それがわかっていても、理想的なタイミングで全てを収穫するのは決して容易ではありません。
ブドウ栽培において圧倒的に人件費がかかるのが収穫作業です。逆に1年のうち他の時期はそうたくさんの人手はいりません。だから少数の社員が畑を管理し、季節労働者を雇って収穫を行うのが普通です。
畑が広大ならそれだけたくさんの人の確保が必要。しかもその地域一帯がだいたい同じタイミングで収穫を迎えるので、人員は取り合いです。
協同組合ゆえの収穫の強み+α
サン・マルツァーノでは正社員として雇用している農業の専門家がベストな収穫のタイミングを指示しています。つくりたいワインのスタイルに応じたブドウを、経験だけでなく最新の研究をもとにした知識に基づいて判断しているのです。
醸造学校を出た栽培家・醸造家は、家族経営のドメーヌ型生産者とて珍しくありません。しかし日々の作業があるなか、そのノウハウをアップデートするのは簡単ではありません。
その点で規模の大きな協同組合なら、栽培・醸造それぞれのエキスパートを専門職として雇用できます。その技術を加盟員に広くシェアできるのが協同組合の強みです。
さらに完璧な収穫に対するインセンティブを出しています。適熟でのブドウ収穫が、サン・マルツァーノのワインが美味しい理由の一つです。
先ほど協同組合のブドウは品質を上げにくいと述べましたが、サン・マルツァーノはその困難に挑んでいます。高い品質には報酬を高める仕組みを構築。結果としてプーリア州でブドウ栽培家に対して最も高い金額を支払っている協同組合なのです。
サン・マルツァーノにブドウを卸すことで、栽培農家にとって他より儲かる。それがサン・マルツァーノのブドウ品質を支えています。
卓越したワインを生む「アルベレッロ仕立て」
一部の畑はブドウ畑でよくイメージする棚仕立てではなく、アルベレッロ仕立てと呼ばれる株仕立ての一種を採用しています。その中にはかなり樹齢の高い樹もあるのだとか。
ブドウが葉の日陰に隠れることで日焼けを防ぎ、暑く乾燥した土地でも樹が枯れにくいのがメリット。作業の機械化ができず手間はかかりますが、ブドウの質は非常に高いといいます。
「安くてつまらない」にしないために醸造の工夫
これだけ多くのワインをつくるためですから、醸造設備には最新の機材を導入しています。
その一つがロータリーファーメンター。回転する発酵槽は果汁と果皮の接触を促し、短期間で色素や風味を抽出できるといいます。その効果で渋みは控えめながらもフルーツの風味豊かなワインになるそうです。
より優しく搾ることができるプレス機も、ワインの味わいに雑味が少ないことにつながっているのでしょう。
熟成に使うオーク樽も工夫しています。一般的なフレンチオークとアメリカンオークに加え、コーカサスオークも使っているといいます。
タイプ | 特性 | ニュアンス |
---|---|---|
フレンチ・オーク | メインで使用 | ヴァニラ、ココナッツ、クローヴなど |
アメリカン・オーク | トースト香、キャラメル香 | |
コーカサス・オーク | 過度に他の要素を与えない | スパイシーなニュアンスを程よく与える |
エチケットデザインが全く違うラインナップ
サン・マルツァーノは1000円程度の手頃なワインから7000円クラスの高級ワインまで幅広くつくっています。しかしそのエチケットデザインにはあまり統一感がありません。
「消費者それぞれが、自分にあった価格・自分にあった味でサン・マルツァーノのワインを楽しんでほしい」きっとそのような意図ではないでしょうか。チンクァンタを好きな方が、セッサンタアンニを「同じつくり手のワインだ」と認識しなくても構わない。
様々なラインナップそれぞれが強い個性を持ったワイン。一度飲んだら記憶に残るようなアイコニックな存在なので、「サン・マルツァーノ」というブランドをあえてあまり前に出さないのでしょう。
それだけ1本1本のワインに自信があるということ。様々なシーンに対応するサン・マルツァーノのラインナップをご紹介します。
あらゆるシーンに対応するラインナップ
サン・マルツァーノは非常に多くのワインをつくっています。
日本に輸入されているものはその一部とはいえ14種類もあります。COCOSではネット販売という特性と他の品揃えとの兼ね合いから絞ってはいますが、それでも9種類!
どのグレードでもそれぞれに魅力な理由。キーワードは「シェア」です。
いつもの晩酌ワインとして人に勧めたくなる「タロ」
「人当たりのいい味わい」それゆえに一度飲んだらだれかに勧めたくなるのが「タロ」のシリーズです。
プリミティーヴォは紛れもなくプーリア州の特産土着品種。フィアーノはこの州では有名とは言えませんが、近くのカンパーニャ州で有名です。
どちらもこの品種のワインとしてはやや安め。フルーツの香りが豊かに広がるものの、『濃厚』という言葉が似あうほどの力強さはありません。果実味は豊かであるものの、渋味や酸味は控えめ。特にフィアーノは本来酸味が高い品種であるのですが、タロは比較的おだやかでやさしい印象です。
風味豊かでありつつ渋味や強すぎる酸味といった嫌われかねない要素が弱い。そんな人当たりのいい味だからこそ、気に入ったなら相手の好き嫌いをあまり心配せずおすすめできます。
このワイン、安いのになかなか美味しかったから、今度飲んでみてよ!
そんな風に友人知人にお気に入りをシェアするのはいかがでしょうか。
一口で分かる濃厚さはシェアしてこそ
ガツンと濃密な風味のワインは、みんなで分かち合っても満足度が下がりにくいのがいいところです。
高いアルコールが示す通り完熟したブドウ由来のフルーツ香に、新樽100%熟成ゆえの甘く香ばしい風味。
冒頭で述べた通り一口目から存分に美味しさを訴えてくるワインです。
「コレッツィオーネが美味しいのは知っているから・・・」という方は、こちらは間違いなく気に入るはず。
発売からそう何年もたってない「M」は、土着品種ではないメルロー100%。まさに「サン・マルツァーノ流のメルローの表現」といいますか、「コレッツィオーネの延長線上にあるメルロー」という印象。品種特性かさらに口当たりがつややかでスムーズ。濃厚なのにスルッと入ってくるワインです。
あくまで筆者の意見ですが、この2本は開けてすぐ1杯ずつで飲むのが一番最後の一口までおいしい。つまり5~7人くらいでシェアするのがベスト。飲み続けていると少し飽きがきそうなぽってりとした口当たりだからです。酸味が低いのであまり日持ちはしない予想です。
ブレンドの工夫がアロマティックで華やかな香りを生んでいる「エッダ」。
この価格帯で新樽100%熟成をするだけでもコスパ感はあるのですが、樽シャルドネというだけでは正直替わりがききます。
しかしモスカートのような華やかなフルーツ香があることで唯一無二のワインに。「エッダが好きなので似たワインをください」と言われても正直困ります。
「樽リッチなのにフルーツの香りも豊か。こんなワインもあるんだよ!」と皆に教えたくなるようなワインです。
カジュアルな飲み会の場。たとえば友人宅で食事をするから手土産として持っていくワインの中の1本としていかがでしょう。
きっと「こないだ持ってきてくれたワイン美味しかったな~」と記憶に残るはずです。
特別な日に皆で囲んで大満足の1本
あなたの記念日に彩りを添える1本として。
お世話になったワイン好きの方へのお礼として。
レストランに持ち込んで特別なディナーと楽しむ1本として。
日常の中のご褒美となり、日々の活力となるのがこの3本です。
低価格帯で成功を収めているワイナリーがつくる5000円クラスのワインは、「高そうな味」をしっかり訴えてくる。私はそう感じています。
膨大な生産量のなかの選りすぐりだからという理由。2000円前後で十分美味しいのだから、その倍以上の価格を出す価値を飲み手に納得してもらわなきゃという想い。それらが要因でしょう。
この3本もまさにそう。凝縮感の高さはいわずもがなで、これより濃いワインが想像できないくらい。
さらに「コレッツィオーネ」などのクラスと大きく違うのは、しっかりとその果実味を支える酸味がある点です。紛れもなく高い樹齢のブドウを使っているがゆえで、濃厚なのに飲み飽きしません。
特別な日に大切な人とシェアする1本として申し分ない。一方で抜栓翌日以降の味も期待できるので、たとえ独り身の方への贈り物であってもためらう理由はないでしょう。
目指すは「ワインをシェアすることの美しさ」
ワインの魅力は分かちあうことで増していく。難しいことを考えずとも、一緒に「美味しいね」と言えることの喜び。
プーリア州に根差して、多くの栽培農家とともに世界品質のワインをつくるサン・マルツァーノは、ワインをシェアすることの美しさをだれよりも良く知っています。
ワイナリーの経営者と労働者じゃない。協同組合と個人個人の栽培農家の対等な関係。ワイナリーのあるプーリア州としての成功を目指すこと。
それが協同組合のワインとしてふさわしい値段と、その仕組みとしては異常ともいえる品質を支えています。
サン・マルツァーノのワインをぜひ身近な方とシェアしてください。その1本はあなただけで飲んだとしても、気に入ったならぜひ友人に教えてあげましょう。
このワインがより美しいものにする空間と時間が、今よりもっと広がるはずです。