ワインの選び方

美味しいから伝統となる、マネされる!|ブレンドだから美味しいワイン8選

2026年2月28日

 
「美味しいワインを造る」という醸造家の意志と安定した品質。これこそが、単一品種にはないブレンドワイン最大のメリットです。なかでも歴史ある産地の伝統的スタイルには、長く飲み継がれてきた必然ともいえる理由があります。今回は各地の伝統的なブレンドと、その思想を継承した他産地のワインをご紹介します。構成に込められた造り手の想いを感じながら、奥深い調和の魅力を体験してみませんか。
 

ブレンドだから美味しいワイン8選

 
「伝統的なブレンド」と言われるものは、ヨーロッパの歴史ある産地で昔からつくられてきたものです。その一部は遠く世界の裏側でも模倣され、高品質なワインがつくられます。
他のワインもつくれたのに、あえてこれを選択した。その理由をワインの美味しさから考察しましょう。
 
 

不安定な気候だからこそ「補完」の知恵

日本/山形県|ボルドーブレンド(赤)

 
天候に左右されるブドウの出来を、ブレンドの工夫で補完する。ボルドーに倣って山形県でつくられるのがこのワインです。凝縮感と飲みごたえのある味わいは、毎年共通している魅力です。
 

ボルドーブレンド(赤)とは

一般的にはボルドーの左岸でつくられるものを指します。つまりカベルネ・ソーヴィニヨンを主体にメルローやカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドをブレンド。マルベックが入ることもあります。
ボルドーブレンドの特徴は上品さが前提のバランス感。ある程度の力強さと凝縮感がありつつ、程よく樽香が香り、適度な酸味がまとめ上げます。

 
 

セミヨンのコクで差別化をはかる

アメリカ/テキサス州|ボルドーブレンド(白)

 
「テキサス州」という物珍しさも、ソーヴィニヨン・ブラン単一だとかすんでしまっていたかも。セミヨンがコクを与えるからこそ、勢いではなくじっくり味わいたい深みを感じます。
 

ボルドー・ブレンド(白)とは

ソーヴィニヨン・ブランをベースに、セミヨンと時にミュスカデルがブレンドされ、中~上級は樽熟成されます。
ロワールやマールボロのソーヴィニヨン・ブラン単一ワインとは全く別物。フルーティーさやハーブ感は控えめで、セミヨンのブレンドと樽熟成からくるリッチな口当たりが魅力。引き締まった酸とあいまって、熟成ポテンシャルもあります。

 
 

香りの複雑さから「まるでシャンパン!」

オーストラリア/タスマニア|シャンパーニュブレンド

 
世界中で栽培されるシャルドネ&ピノ・ノワールに加え、ムニエまでブレンドするのは、まさにシャンパーニュのスタイル.熟成によるイースト香が、香りに贅沢感をプラスしています。
 

シャンパーニュブレンドとは

シャンパーニュで栽培されるブドウの代表は、ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネ。その3品種をブレンドするのが、スタンダードクラスのシャンパンの基本です。ニューワールドの産地ではムニエは省かれることが多いですが、伝統的方式による上質なスパークリングワインは世界各地でつくられています。
他の品種を使ったものにくらべ、より洗練された風味に感じることが多いです。

 
 

生粋の普段飲みワイン!

フランス/アルザス|エデルツヴィッカー

 
「エデルツヴィッカー」は、たいていそのワイナリーで最も手頃なワイン。日常使いのカジュアルなワインと位置づけられ、飲んでて飽きない穏やかな風味。料理との相性も幅広いのが魅力です。
 

エデルツヴィッカーとは

アルザスの伝統的な白品種のブレンド。おそらく始まりは余ったブドウのごちゃ混ぜ。上級ワインをつくる際、品質で劣ったりタンクサイズに合わないものを、まとめて仕込んだのでしょう。
結果的にそれが、スッキリ爽やかで程よくアロマティックな好ましいワインになった。自家消費用にピッタリなので造り続けられ、伝統となったのではないでしょうか。

 
 

製法も含めて伝統の味

イタリア/ヴェネト|ヴァルポリチェッラ

 
ヴェネト州の特産「ヴァルポリチェッラ」を選ぶ際は製法にも注目。このワインにように「リパッソ」とあれば、熟したベリーの果実味と、適度に濃くて滑らかな味わいが期待できます。
 

ヴァルポリチェッラとは

コルヴィーナ、ロンディネッラ、モリナーラの3品種のブレンド。ほぼ単一品種として飲む機会はありませんが、コルヴィーナが酸とチェリーの風味を、ロンディネッラが味わいの骨格を、モリナーラがスパイス感とフレッシュさを与えていると言われます。
表記される製法が重要です。通常のヴァルポリチェッラは軽快な口当たりのガブ飲みワイン。対して「アマローネ」とつけば、干しブドウからつくる甘濃くフルボディな味わい。「リパッソ」はその中間で、ほどよく濃厚ながらカジュアルな味わいです。

 
 

自国で生み育てた品種への誇りを

南アフリカ/ステレンボッシュ|ケープブレンド

 
ピノタージュを中心としながら、ボルドーワイン的なバランス感を目指したのがうかがえるブレンド。ピノタージュ単一では弱い、味わいの骨格や上品さがプラスされ、高級感を獲得しています。
 

ケープブレンドとは

ピノタージュは1925年に南アフリカで開発された品種。そのフルーティーさは活かしつつ、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのボルドー品種で、タンニンや酸を補い力強い味わいにします。
スモーキーさやコーヒー、チョコレートなどの風味が特徴として挙げられます。南アフリカでもボルドーブレンドはつくられています。そこにピノタージュが加わるとどう変わるのか。比べてみるのも面白いでしょう。

 
 

南ローヌ的なジューシーさを目指して

アメリカ/カリフォルニア州|GSMブレンド

 
柔らかく熟した大粒ベリーの風味に独特のスパイシーさ。単一品種ではなかなか出せないジューシーさと複雑な風味の共存を、「コート・デュ・ローヌ」に倣ったブレンドで完成させています。
 

GSMブレンドとは

グルナッシュ・シラー・ムールヴェードルの頭文字をとったブレンドで、オーストラリアなどでも使われる名称です。
ローヌ地方南部のスタンダードワイン「コート・デュ・ローヌ」で最も一般的なブレンドです。
フルーティーさが魅力だが、渋味が控えめで平坦になりやすいグルナッシュ。力強さとスパイシーな風味が特徴だが、厳格になりがちなシラー。パワフルな味わいが魅力にも欠点にもなりうるムールヴェードル。
品種ごとの強みを活かし、弱点を補うものとして、非常に理にかなっています。

 
 

シラーの濃厚さを和らげる

アメリカ/ワシントン州|ヴィオニエの混醸

 
力強く上品なワインをつくりやすいワシントン州にて、あえて少しのヴィオニエをブレンド。これはきっと、力強さを少し和らげて、フルーティーさを加えるためでしょう。パンチがあるのに親しみやすい味わいです。
 

なぜヴィオニエを混醸するのか

ローヌ北部のコート・ロティなどでは、数%のヴィオニエをシラーと同じタンクで発酵させるのが伝統です。シラーの産地としては涼しいコート・ロティ。かつてはブドウの熟度が足りていないとき、ワインの色づきを安定させる意味がありました。
温暖化が進んだ現在、ブドウの未熟が問題になることはほぼありません。それでもこのブレンドが続けられるのには、濃厚さを和らげ、ヴィオニエのアロマティックさをプラスする狙いがあるのでしょう。

 
 

単一品種に対するブレンドワインのメリットとは

 
ブレンドワインはそれほど人気がありません。特に当店のようなインターネット通販がメインのお店では、売り上げ上位はブドウ品種名が表記されたワインが大半です。
その大きな理由は選びやすさでしょう。ではその選びにくさに勝る、ブレンドワインを手に取る理由はあるのでしょうか。
 

ブレンドワインとは

この記事で言う「ブレンドワイン」とは、複数の品種がブレンドされ、基本的に品種名表記のないワインを意味します
「カベルネ・ソーヴィニヨン」と表記されていても、一定量まで他品種をブレンドすることが、多くの国の法律で許可されています。たとえ単一品種100%のワインでも、複数の産地のブドウがブレンドされる場合も多いです。今回、それらは一旦置いておきます。

 
 

単一品種のワインは選びやすい

 
種類が多すぎて何を選んでいいかわからない
ワイン初心者の誰もが経験するはずです。
 
 
自分でワインを選べるようになるガイドとして、広く紹介されているのが「ブドウ品種の特徴を知って、好みのものから選ぶ」方法です。
カベルネ・ソーヴィニヨンなら渋味の強い赤ワイン。ソーヴィニヨン・ブランなら爽やかな後味の白ワイン。そういった品種の名前と典型的な味を覚え、好みを判断する。非常に分かりやすいです。
 
ワインを楽しめるようになる一歩として、私も推奨します。一方で、品種で選ぶ”だけ”で満足するのはもったいない。ブレンドワインの魅力も今回は知ってほしいと考えます。
 
 

ブレンドワインは安定する

 
ブレンドワインはその比率を調整することで、毎年同じとは言わないまでも、似たような風味を提供できます。安定性が高いのです
 
多くのワインにはヴィンテージが表記されます。それはヴィンテージが違えば味わいが違うという証でもあります。2023年のワインと2013年のワインでは熟成により味が違います。それだけでなく、熟成による違いがほとんどない2023年と2022年でも、ワインによっては大きく味が違うのです。
それだけブドウの出来栄えがその年の天候によって違い、それが風味に直結するということ。単なる良し悪しだけでは語れない、様々な特徴がグラスから感じられるのです。
 
 
あえて違いを楽しみたい。ヴィンテージの特徴を感じたいというケースもあります。一方で贈答品やパーティーに使う場合など、期待通りの味であってほしいことでしょう。
風味の安定性で優れるのは、単一品種・単一畑のワインより、ブレンドワインです。
 
 

ボルドーで磨かれたブレンド技術

 
フランスのボルドー地方は銘醸地として有名ですが、決してブドウを育てやすい環境ではありません。
 
 
その大きな理由が海洋性気候。一年を通して雨が降ります。雨が降れば畑の湿度が上がり、カビ由来の病気のリスクが上がります。収穫直前の雨は、ブドウの腐敗や水ぶくれによる凝縮度の低下にもつながります。
これがイタリアのような地中海性気候なら、雨は冬にまとめて降るので、ブドウの生育期は乾燥しています。
その上霜害(そうがい)のリスクもあります。春先に樹が活動を始めてから急に冷え込むと、新芽が凍って死んでしまうことがあるのです。
 
一種類の品種ばかり栽培していると、新芽が出る時期や収穫の時期が、畑全体でだいたい同じです。それゆえ雨や霜の影響が品質や収穫量に直結します。
複数品種を栽培することで、活動のタイミングがズレます。そのズレがリスクヘッジとなるのです
 
美味しさを求める以前に、ボルドーでは安定生産のために欠かせなかったのです。
 
 

ブレンドには目指す「美味しさ」がある

 
ワインの味わいはこれほど多様なのです。ワインのブレンド比率を決めるにあたり、醸造家の頭の中には、「こういう味わいが良いワイン」という理想があるはずです
 
それはワイナリーがこれまで築いてきた伝統を守るものであったり、あるいは近年の流行を取り入れた多くの消費者に好まれる味であったり。
こういう味が美味しいと言ってもらえるはずだ。そのためにベストなブレンドはこうだ
 
 
もちろんその醸造家の腕にもよりますし、ヴィンテージによっては理想に届かない場合もあるでしょう。長期熟成型か今飲んで美味しいものを目指すかという違いもあります。
それでもブレンドワインには「美味しいワインをつくる」という醸造家の意志が、より多く込められているはずです。
 
「〇〇のテロワールを表現する」と話す場合も同じです。醸造家がその土地の個性と考えている風味に近づくようなブレンドをしているわけです。
 
 

伝統産地のブレンドを故郷でも

 
伝統的なブレンドワインのスタイルを目指し、"必要"ではないのにブレンドをすることもあります。それが理想だからです
 
気候の安定した地域、たとえばナパ・ヴァレーやチリのマイポ・ヴァレーにおいて、ブドウ品種をブレンドする”必要”はありません。単一品種でも高品質なワインをある程度安定してつくれます。
それでもカベルネ・ソーヴィニヨンにメルローやカベルネ・フランなどをブレンドする「ボルドー・ブレンド」はつくられています。時にボルドーワインよりも高い値段をつけます。
それは生産者・醸造家が考える美味しいワイン、目指すスタイルがボルドーワインだからです。
 
伝統国の大手生産者が海外に出資し、ワイナリーを設立する例もあります。一方でアメリカ・オセアニア地域の人がヨーロッパで修行し、故郷でも修行先に倣ったスタイルのワインをつくる例も多いです。
 
 

つくり続けられるには理由がある

 
そのワイナリーがオリジナルでつくるブレンドワインにも、美味しいものはたくさんあります。一方で「飲んでみないと美味しいか、口にあうか分からない」というデメリットも。
品種のブレンドは単なる足し算ではありません。わずか数%の割合でも全体の雰囲気をガラリと変えてしまうこともあるからです。
 
 
その点で今回ご紹介したブレンドワインには、ある程度の安心感があります。「ブレンドしない」という選択肢もあるなかで、あえてそのブレンドを選んでつくる。それは伝統的なワインのスタイルを理想として目指していることの証だからです
 
ボルドーブレンドのワインが好きな方なら、知らない産地・知らない生産者がつくるものでも、好みのタイプであることは期待できる。そんな安心感があるのです。
 
 

ブレンドを通して感じる職人の意匠

 
いくつかの品種をブレンドしているワインを深く味わえば、「ワインは人がつくっている」ということを再認識します。
 
「好みは人それぞれ」と言いますが、ワインのような嗜好品にとってはなおさら。
「自分はこれが美味しいと感じるが、消費者はどうだろう?この味が喜ばれ、売れるのだろうか」きっと多くの醸造家が悩んでいることでしょう。
それでも醸造家はブレンド比率や醸造法を調整し、味を決めないといけない。そこにワインの評価や従業員の生活がかかっているのです。選択が軽いわけがありません。
 
 
単一品種のワインに比べ、より多くの選択肢の中から、この味を決めている。そういう意味でブレンドワインは、より造り手の意匠が現われたワインと言えます。そんなところまで想像しながら飲んでみると、目の前のグラスの1杯は、価格以上の深みを持つのではないでしょうか。
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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