友人を招いたときや恋人と食事をするとき、スムーズにワインを抜栓したい!
コルクのワインもコルクじゃないものも、ポイントを押さえればそう難しくありません。
今回はワイン初心者の方が自信をもって開栓できるよう、ワインの栓を5つのタイプに分けて開け方をご紹介します。
これだけ知ってたら超古いワイン以外は自信をもって抜栓できます!
ワイン栓の種類とその目的を知る
そもそもワインに栓がしてあるのは、中身がこぼれないようにという目的と、ワインを酸化から守り状態を保存するという目的があります。
ワインは非常に酸性度の高い飲み物です。だから酸素を通さず錆びないガラス瓶に入れられ、弾力性があるコルクで栓がされてきたのです。
近年になりコルク以外の栓も登場し、またコルクの種類も多様になってきました。
ワインの栓によるメリット・デメリットを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ワイン栓の種類
代表的なワインの栓は下記のとおり
コルク ┳ 天然コルク +蝋封
┣ 合成コルク
┣ 圧搾コルク
┗ ハイブリッドコルク
スクリューキャップ
ガラス栓
コルク栓のいろいろ
コルクの材質に関わらず抜栓方法は同じです。
最も採用率が高く、最も失敗が多いのが天然コルクです。
天然コルクでもグレードが高いものはかなり丈夫なのですが、安いものや古いものは結構もろいです。正しく抜栓しないと途中でコルクが折れてしまうことがあります。
合成コルクは別名プラスチックコルクとも呼ばれ、合成樹脂によってできたコルクです。途中で折れたりとかは基本ないのですが、ごくごくまれに瓶とくっついてしまって、とんでもなく固いものがあります。
店頭で稀に「このワイン、コルクが固すぎて抜けないんだけど・・・」とワインを持ってこられることもあります。大抵は腕力で抜くのですが、瓶が欠けて怪我をすることがあるのであまりお勧めはしません。
圧搾コルクは最近採用が増えているもの。「DIAM」というブランドをよく見かけます。コルク片を固めてつくるもので、合成コルク同様失敗が少ないのが特徴です。
かなり丈夫で硬いので、抜栓したあと再び瓶に挿せない場合も多いです。
ハイブリッドコルクはまだあまり見ませんが、プラスチックの部分とコルクの部分が合わさってできています。見た目に驚くかもしれませんが、ごく普通に抜栓できます。
コルク栓はすべて抜栓方法は同じですが、キャップシールに覆われているのか蝋に覆われているのかで少し違います。
それではスクリューキャップと合わせて順に開け方をみていきましょう。
①通常のコルク栓を失敗なく抜栓するコツ
こちらにソムリエナイフを使った抜栓の方法を解説した動画を載せておきます。
全体の流れはこれを見ていただくとして、それぞれのポイントを解説します。
ソムリエナイフでキャップシールを切る
通常のワインはこのように、コルクを打ったうえで瓶口がキャップシールに覆われています。
この材質はスズやアルミが主流。安いものだとプラスチック系のものです。
キャップシールを切ってからコルクを抜くのが普通です。ソムリエナイフには「ナイフ」の名の通りホイルカッターがついており、これでキャップシールを切ることができます。
キャップシールを切る位置を、瓶口すぐ近くにするのか、その下にするのかは議論が分かれるところです。
私の周りには下側を切る人が多いのですが、別にルールではないのでどちらでも結構です。
実は9割がたのワインはキャップシールを切らなくても引っこ抜けます。(写真のようなシールでとめられているものは無理)
切るのが苦手で、上手くなる必要も感じない方は、ポンと引き抜くのもアリでしょう。
コルクスクリューをねじ込む
ソムリエナイフを時計回りに回してコルクにスクリューをねじ込みます。
このとき目指すのは、真ん中にまっすぐに挿すことです。
これが端によっていたり斜めになっていたりすると、失敗の原因となります。
挿す深さはコルクの底を突き破るギリギリがベスト。でもそれはコルクとスクリューの長さを把握していて初めてできることです。
ワイン初心者は、まずはスクリューの根本までしっかり挿すのが安全と考えてください。
コルクを引き上げる
瓶口にフックをひっかけてコルクを引き上げます。持ち上げるほうの手はなるべくソムリエナイフのフックから遠い方の端に力がかかるようにします。
ソムリエナイフの種類、シングルアクションかダブルアクションかでやり方は少し違います。
ソムリエナイフのタイプについては後述します。
ここで気を付けるのは、スクリューが真下を向いたままコルクをまっすぐ上にあげること。それとソムリエナイフの支点が瓶口から外れないようにしっかり持つこと。
ハンドルを上げることばかりに気を取られると、斜め方向に力が入ることがあります。コルクが途中で折れる原因です。
まっすぐ引き上げれば、テコの原理で簡単に持ち上がります。女性で腕力がないからといって、難しいことではありません。
コルクの状態をチェックする
プロはコルクを抜いたら必ず臭いを嗅いで状態をチェックします。
これはコルク臭がないか、カビに由来するコルクの事故である「ブショネ」でワインがダメになっていないかを確認するのです。
ブショネとはなんぞやということは、こちらの記事でご紹介しております。
最初はだれしもわかりません。
何度か経験するうちにわかってくるものですが、ある程度長年ワインを飲んでおられる方でもよくわからないという人もいます。
なんとなく「コルクは抜いたら臭いを嗅ぐものだ」程度に思っておいてください。
②蝋キャップされたコルク栓を抜栓する
蝋キャップのワインは、蝋の上からいきなりスクリューを挿してしまいます。
こちらの動画で解説しております。
蝋キャップの中には、ボロボロと崩れやすいものもあります。
動画のワインの蝋キャップはゴムみたいな感触で全然ボロボロ崩れませんでした。なのでこの場合は破片を取り除かずとも抜いてしまってOK。しかしボロボロこぼれるものだとワインの中に入ってしまったりするので、少しコルクを上げた状態で取り除いてしまうのをおすすめします。
プロはこうします
プロの中にはソムリエナイフで蝋キャップを取り除いてから抜栓する方も多いです。その方が美しく見えますし、ボロボロごみが落ちなくてスマート。切りやすくするために、蝋の部分を手でしばらく温めるといいそうです。ただテクニックはある程度必要ですし、ソムリエナイフもよく切れるものを使う必要があります。動画では「おうちで開けるには」という前提で、誰にでもできる方法を紹介しました。
蝋(ろう)キャップの意味
通常のキャップシールは瓶口に覆いかぶさっているだけです。空気を通さないような密閉効果はあまり期待できません。
空気の遮断が完ぺきではないコルク栓を補助すべく、蝋でより厳重に密閉しているのです。
コストはより高くなるので、通常は中級から高級ワインに採用されます。2000円台くらいではあまり見かけません。
ただ、酸素を遮断すればいいとは必ずしも言い切れません。その作り手の考え方、目指すワイン次第です。
ゆえに蝋キャップのものが高級品というわけでも、通常のキャップシールが悪いというわけでもありません。
どの材質のコルクでも蝋キャップをすることはできますが、コストをかけられるものに蝋キャップをするという性質上、どうしても天然コルクが打ってあることが多いです。
素朴な疑問。酸素を通したくないのなら、スクリューキャップじゃダメなんでしょうか?
使いやすいソムリエナイフのポイント
コルク栓のワインを飲むなら、ワインオープナーは必要。バレリーナ型(ウイング式)のオープナーやもっと簡単なものもありますが、やっぱりソムリエナイフを使い慣れることをおすすめします。
ソムリエナイフなら極論100円ショップのものやワイナリーロゴの入った協賛品でも抜栓は可能です。でもソムリエナイフならどれも同じわけではありません。
使いやすいソムリエナイフはどんなものか、ご紹介します。
キャップシールの切りやすさ
ソムリエナイフのホイルカッターは、やっぱり刃が長くて鋭い方が切りやすいです。
切れ味だけを求めるなら、「アスロ」というメーカーのダマスカスブレードを装備したソムリエナイフが私の経験上は1番。
ただ、切れ味が良すぎてケガしないか心配ですし、そもそも初心者におすすめできる価格ではありません。
かといって「短い刃の安物だと切れない」なんてことはなく、使い方次第なのでご安心を。
スクリューの長さ
スクリューの部分は長いに越したことはない。高級ワインに差さっている長いコルクをしっかりホールドできます。(コルクの長さは結構バリエーションがあります)
ただ、高級ではない若いワインを開けているうちは、スクリューの長さは関係ありません。
「長い方がいいけど、最初は別に気にすることではない」と考えてください。
とはいえスクリュー部分のコーティングの効果か、高価なものはよりスムーズにコルクに刺さります。高級品なだけのことはあります。
ダブルアクションかシングルアクションか
最初に購入するソムリエナイフは、ダブルアクションのものを断然おすすめします。
動画で使っているソムリエナイフはダブルアクションです。フックを引掛けてコルクを持ち上げるのを2回行います。テコの原理を用いているので、それほど強い力は要りません。
この方がコルクに横方向の力が加わりにくく、失敗しにくいです。
シングルアクションのソムリエナイフで引き抜くときは、スクリューを1回転分くらい残して1度持ち上げ、再びねじ込んでもう一度引き上げるという手順が基本。
文字で説明するとわかりにくいですね。当店の動画ではありませんが、こちらを参考にしてください。
T字のコルクスクリューはマジで使えない
時々こういったT字型のコルクスクリューが「コルク抜き」という名称で売られています。
これだけは本当におすすめしません!
テコの原理を使わないので、腕力でコルクを引っこ抜くしかありません。固くて抜けないのです。「コルク抜き」「T字型ワインオープナー」と書いてある名称を、私は否定したい!
缶切りについているスクリューもいっしょです。使い物にならない。
筋力に自身のある方以外は手を出さないことをおすすめします。
もっと上手に抜栓したい方は
シングルアクションのソムリエナイフで一気に引き抜く人もいます。持ち方と力の加え方にコツがあるので、初心者はマネしないほうがいいです。
それでもかっこよく抜栓したい方は、まずはCONEXTIONの藤次さんのinstagramをご覧ください。
アカデミー・デュ・ヴァンの大阪校では、藤次先生によるソムリエ試験実技対策講座も開催されています。
栓抜きにもなります
ソムリエナイフの多くは、栓抜きにもなるようにつくられています。
たまに微発泡ワインなどで王冠で栓がされたものがあります。
別途栓抜きを用意しなくても、ソムリエナイフで開けられますので覚えておきましょう。
コルクの抜栓に失敗したときは・・・
最初はだれしも抜栓中にコルクを折ってしまうものです。
途中で折れたコルクにもう一度スクリューを挿して救出するという方法もあります。
これはケースバイケースなので、「こうやったら」というのは言えません。経験と器用さがものを言います。
逆に一度ワインの中に落としてしまってから、道具をつかって引き抜く方法もあります。
こちらの動画で解説しております。
③スクリューキャップのワインを開ける
コルクじゃないワインの開け方も紹介していきましょう。
「スクリューキャップに開け方も何もないよ」と思っておられませんか?
意外と勘違いしている人がいます。実はスムーズに開けるコツがあります。
スクリューキャップのワインを開けるには、まずはこのネジがきってあるところと胴体部分を切り離す必要があります。
そのためにはキャップの部分を持つのではなく、胴体部分を持つ。そしてワインボトルの方を回す。
そうするとカリカリっとつなぎ目が離れますので、あとはスムーズにキャップが取れます。
④ヴィノロックのワインを開ける
ヴィノロックというのはガラス栓のこと。
ガラスでできた栓に、隙間を埋めるシリコンゴムがついています。
ガラスなので空気を通さず劣化もしない。亜硫酸の添加を極力抑えたつくりをしている生産者が採用していることが多いように思います。
とはいえコルクやスクリューキャップと比べるとずっとレアです。
これは単に瓶口にはまっているだけ。たいていはキャップシールで覆われています。
手で引っこ抜くこともできますが、ソムリエナイフが近くにあるならこのように刃を差し込んで開けると楽ちん。
⑤スパークリングワインを開ける
スパークリングワインも天然コルクか圧搾コルクで栓がされています。
抜栓に道具はいりません。しかし炭酸を閉じ込めているだけあり手順はワインとは違います。
こちらの動画をご覧ください。
スパークリングワインを開ける時の「ポンっ」という音
シャンパンを開ける時、いい音を出してコルクを飛ばしているの、見たことありませんか?
パーティーのような場でそれを楽しんでいるなら、別に問題はありません。
ただし、「抜栓時に音を立てないのが基本のマナー」というのは覚えておくべきです。
西洋のマナーって「静かに」が基本ですよね。フォークとナイフを使ってもなるべくカチャカチャ言わせない。麺を「ズズっ」とすすらない。
スパークリングワインも静かに開ける方がベターです。
そのためには勢いよくコルクを抜くのではく、ゆっくり押さえながら緩めること。最後にちょっとだけ漏れる「シュッ」という音は、「天使のため息」なんて呼ばれるといいます。
これだけ覚えれば安心
ここまでの5つのタイプが自信をもって抜栓できるようになれば、ほとんどのワインは怖くありません。
不安なのは古酒のもろくなった天然コルクくらい。20年以上前のヴィンテージなどを買わなければ大丈夫です。
まずはこの5タイプがスムーズに開けられるようになって、友人や恋人にかっこいいところを見せちゃいましょう。