《香り豊かなシャルドネの亜種》
ブルゴーニュにて突然変異で生まれたシャルドネのクローン『Entav809』は、「シャルドネ・ムスク」と呼ばれています。当初はそうと気づかれずカナダに持ち込まれ、オンタリオ州で盛んに栽培されるようになりました。
その名前の通りムスク(じゃ香)の香りがするのが特徴。マスカットに似た上品に甘い香りがあります。
3000円以下のシャルドネにおいて、香り豊かなものといえばブドウの熟度が高く樽熟成しているものが大半です。冷涼産地産で樽香なしや控えめのものは、どうしても香りのボリュームが大きくはなく派手さがありません。そのつつましさが好きという気持ちもわかりますが、物足りなさを感じる人も。
その点でこの「プラクシス」は、タスマニアの冷涼気候を反映した12.5%程度の低いアルコールなのに非常にアロマティック。ワインを選ぶ際に香り重視の方にとっては、山ほどあるシャルドネの中で選んで飲む価値があります。
《テイスティングノート》
マスカットのようなフレッシュなアロマが広がり、その奥に青りんごや桃などの冷涼系シャルドネの香りがあります。口当たりは軽やかでスムース、透明感のある果実味をキレのいい酸味が支えており、ドライな余韻にはオレンジのニュアンスも感じます。
《生産者について》
ムーリラのオーナーであるデイヴィット・ウォルシュ氏はプロのギャンブラー。ポーカーの稼ぎでこのムーリラのワイナリーを入手したといいます。芸術に対する関心が強く「Museum of Old and New Art」通称MONA新旧美術館を所有しています。
それもあってかムーリラのエチケットは毎年まったく異なるデザイン。見た目でも楽しませてくれます。
「ムーリラ」とは数あるアボリジニの方言で「水辺の岩」を意味しているそうで、もともとは1948年にイタリア移民が土地を購入し、1958年に植樹したものでした。1962年に最初のワインづくりが行われた記録が残っているそうで、タスマニアでもかなり早い時期です。現在はカナダ人のコナー・ヴァン・デル・リースト氏にワインづくりを任せています。
Moorilla Praxis Chardonnay Musque