《このワインについて》
「ランチ32」という名前は畑の番号であり、生産者のシャイド・ヴィンヤーズが1972年に初めて植樹した思い入れのある畑だといいます。
このワインの特色は、実売2000円以下という価格帯なのに「Monterey」という産地表記があるところ。
基本的にこの手ごろな価格帯のものは、「California」の広域な産地表記です。そうしておけば年によって広いカリフォルニア各地からブドウを調達して味づくりができます。安定して安く美味しいワインをつくりやすいのです。
それに対してランチ32は自社畑です。ブドウの供給源が変わるわけではないので、小地区の表記ができます。そのメリットは飲み比べの面白さ。他の小地区の産地表記されたワインと同じ品種で比べることで、産地による味わいの違いを感じ取れます。
こういった小地区が表示されたワインは、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンならだいたい4000円以上で探さないとあまり見つからないでしょう。それが1000円台で楽しめるのはお得感があります。
《モントレーについて》
セントラル・コーストの北部にあるモントレー・カウンティは冷涼産地のひとつ。ブドウの生育期には海から内陸部に向かって強い風が吹くので、冷却効果が高いからです。海に近いほど涼しくなるので、その距離によってピノ・ノワールなどのブルゴーニュ品種を植えるのか、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのボルドー品種を植えるのかを選択しています。
その気候によってワインは豊かな酸味を蓄えます。同じ品種で他の地域と比較したとき、甘いニュアンスは控えめで上品な味わいに仕上がる傾向です。
シャイド・ヴィンヤーズではその強い風を利用して風力発電に取り組んでいます。クリーンエネルギーを利用することで、サスティナブルなワイン造りを実践するためです。余剰な電力を売るほどだというので、よほど継続的に強い風がふくのでしょう。
《テイスティングノート》
ブラックベリーやプラムなどのベリーの香りからは、過熟のニュアンスは感じません。モカやスミレなどのアロマも感じる端正な香りです。味わいもベタっと平坦なものではなく、みずみずしい果実味がほどよい酸味とバランスをとっています。力強いというほどではありませんが適度な渋味。香ばしい余韻があります。
《生産者について》
シャイド・ヴィンヤーズの創業者であるアル・シャイドがカリフォルニア州モントレーにワイナリーを設立したのが1972年。当時はモントレーの黎明期。わずか4haの畑からのスタートでした。
彼はモントレーの可能性を信じ、カリフォルニア大学デイヴィス校のA.J.ウィンクラー教授に助言を仰ぎます。教授は生産地を積算温度をもとにリージョンI~IVに分類したことで知られています。シャイド・ヴィンヤーズはI~IVそれぞれに属する畑を取得し、様々なワインを生産できるようになっていきます。今では順調に発展し、自社畑1600ha、年間生産量180万haという巨大なワイナリーに成長しました。
大量生産するから安くて美味しい。それをきっちりと実現しているワイナリーです。
Ranch 32 Cabernet Sauvignon