Pick Up 生産者

Pick Up生産者 ラーツ シュナン・ブランとカベルネ・フランのスペシャリスト

2020年3月24日

 
シュナン・ブランとカベルネ・フラン。
「ブドウ品種の中だとこれが好き!」そう言える方は、かなりのワイン通でしょう。
 
2000年に設立の若いワイナリーが、今では「シュナン・ブランといえば、カベルネ・フランといえばラーツだ」そう言われるまでになりました。
南アフリカだけでなく、世界中で。
 
メジャーなブドウとは言えないかもしれませんが、それでも20年でワールドクラスと認められるのは並大抵のことではありません。
南アフリカのワインツアーで多くの参加者が「ラーツは別格だった」と語る、その秘密をご紹介します。
 
 

ブルーワー・ラーツ なぜこの2品種に注力?

 
ブルーワー・ラーツが2000年にステレンボッシュにラーツ・ファミリー・ワインズを設立する前。
多くの生産者と同様、いくつかのワイナリーで修業を積み、様々なスタイルのワインを手がけました。
 
ある時彼は気づきます。
そのワインに何か足りないとき。
もうちょっと果実味があれば。もうちょっとスパイスのニュアンスが欲しい。そんなとき。
 
 
自分はカベルネ・フランをブレンドするという選択をしがちだ。
カベルネ・フランを加えたら上手くいく、と。
 
では、カベルネ・フランだけでワインをつくったら、どうなるだろう。
そこからカベルネ・フラン単一でワインをつくる試みが始まりました。
 
 
カベルネ・フランは1970年代に南アフリカに持ち込まれました。
当初はあくまで補助品種。カベルネ・ソーヴィニヨンを中心としたブレンドに混ぜられるブドウでした。
 
 
しかしながら、カベルネ・フランの単一ワインは2005年の時点でもわずか17種類。
 
 
シュナン・ブランは南アフリカでもっとも広く栽培される品種ですから、白ワインをシュナン・ブランに特化するのは珍しい選択ではありません。
しかし2000年の設立時、赤ワインはカベルネ・フランに特化するというのは、勇気ある決断と言えたでしょう。
 
 
結果的にはラーツがつくるカベルネ・フランの品質は認められ、カベルネ・フラン単一ワインは増加傾向にあります。
2016年の時点では147種類にまで増えたと言います。
 
ブルーワー氏が決断したのは、なにも「好きだったから」「珍しかったから」だけではありません。
この畑がで素晴らしいカベルネ・フランができるという確信があったからです。
 

ラーツのテイスティングルーム

 
 

美味しさの秘訣は土壌と地形にあり

 
ラーツ・ファミリー・ワインズの建物から数百m。
目視できる距離に彼の畑はあります。
 
 
 
丘と呼ぶべきか山と呼ぶべきか迷う斜面に、ラーツの畑はあります。
 

ラーツの畑の上部から。実際立ってみると写真以上に急斜面に見える。

 
写真では伝わりにくい、足がすくむような急こう配。
 
斜面の一番上にカベルネ・ソーヴィニヨン、その下にカベルネ・フランの畑が広がります。
この畑は南向き。日照時間が限られるため、非常に冷涼です。
 
向かいには地殻変動でつくられた山があり、赤や黄色い土が見られるところは、鉄分が多い砂岩。
そして畑のあるこの斜面は、花崗岩が見られます。
 
花崗岩は、こすると火打石のような香りがするのが特徴。
その花崗岩の中でも、珍しいドロマイト花崗岩という土壌なのが特徴です。
 
 
ドロマイトとは日本語に訳すと苦灰石。
耳慣れない言葉ですが、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複塩という状態です。
白色~桃色がかった灰色で、日本国内では石灰石があるところの近くに広く分布します。
 
カルシウムやマグネシウムなどの金属は重いため、雨水の浸食などによりだんだんと地中の深いところに潜ります。
ドロマイトは花崗岩を分解する作用があるため、それが混ざり合って母岩となります。
 
ブルーワー氏はこの違いがどうワインに洗われるかまでは語ってくれませんでしたが、このドロマイト花崗岩がラーツのワインを特別なものにしているのは間違いありません。
 
 
花崗岩土壌でつくられるカベルネ・フランとして、当店ではオーストラリア、ヤラ・ヴァレーのデントンがつくるカベルネ・フランを扱っています。
ラーツのものと共通して、過剰な凝縮感がなく地味深さのある味わい。
機会があるならぜひとも飲み比べて頂きたい2本です。
 
 

ラーツがつくるシュナン・ブラン

 
ラーツについて語るとき、ついついその卓越したカベルネ・フランに注目しがちですが、実はラーツの生産量の8割を占めるのはシュナン・ブランです。
 
中でも、「バイヤーが訪ねてきたとき、必ず最初に出すのはこのワインなんだ」と語るのがこちら。
 

ラーツ オリジナル シュナン ブラン

 
一番手ごろなワインでありながら、一番大事
ラーツを知るにはまずこれから飲むべきというワインが、このシュナン・ブラン。
 
2つのブロックからとれたシュナン・ブランをブレンドしてつくられます。
 
一つはラーツの特徴でもあるドロマイト花崗岩のブロック。
このブロックは酸味を残すため、少し早めに収穫します。
フレッシュな酸味とミネラルのほか、柑橘類やライム、メロンのような風味をワインに与えます。
 
もう一つは砂岩土壌。
ストーンフルーツやトロピカルフルーツ、パパイヤのようなアロマが表現されています。
 
オーク樽は使わずに、ステンレスタンクで澱と共に6-8か月熟成。
 
 
樽を使わないシュナン・ブランとして、南アフリカを代表するものの1本に挙げられるほどの出来です。
 
 
 

オールド ヴァイン シュナン ブラン

日本未入荷 5000円弱?
 
ピーチメルバやネクタリン、アプリコットのような上品でありながらよく熟したアロマも魅力的。
しかしながらオリジナル・シュナン・ブランと明らかに違うのは、そのストラクチャー
いわば味わいの立体感が全く違いました。
 
個人的なイメージですが、シュナン・ブランという品種の味わいは、水平方向の広がりだと感じています。
口に含んだ時に舌全体にさっと広がって、爽やかな酸味が舌の両脇の付け根あたりを刺激してくる。
しかし口蓋のほうに広がる立体的な広がりに乏しい。
 
しかしながらオールド・ヴァインのシュナン・ブランは、その厚みが違う。
 
豚の生姜焼きとトンテキくらい違います。
逆にわかりにくい?
 
50%の樽発酵・樽熟成をメインとして、ステンレスタンクのものを25%と、コンクリートタンクのものを25%ブレンドしています。
 
私のつたない言葉では表現しきれないので、日本に輸入されたならすぐ紹介したいと思います。
 
 

イーデン ハイデンシティー シュナン ブラン

 

一般に、ブドウは密植した方が品質が上がると言われます。
 
それは、樹と樹の感覚が狭いことで水分や栄養を取り合って、より地中深くへと根を伸ばすからです。
 
例えばブドウの畝の感覚を1.5mに設定し、その畝に1m置きに樹を植えると、1ha当たり6667本という計算になります。
畝の感覚は多くの畑でこれくらいが多く、樹の感覚は1~1.5mくらいが多いかなという印象。
 
およそ8000~10000本/haで『密植』と言われます。
 
 
当然ながらデメリットも存在します。それはそのコスト。
単純に考えれば、狭い間隔で樹を植えればたくさん収穫できそうな気がしますが、実際にはそうではありません。
むしろ、栄養を取り合うので収穫量は下がります
 
しかも植樹の際にたくさんの苗木が必要になるので、初期投資がかさむ
加えて畝の感覚が狭いとトラクターが入れられず、作業が手作業になります。
 
 
私は訪問する前から、数字の上での密植は知っておりました。
 
しかし実際に目にする『密植』は、全く違う。
ラーツのワイナリーの周りに広がる僅か0.6haの畑。そこに6000本の樹を植えているそうなので、1万本/haとなります。
 
実際に目にすると、この間隔。
 

イーデン ハイデンシティーの畑 棒仕立て

 
間隔が狭すぎて、一般にみられる垣根仕立てにすることが出来ず、例えばドイツの急斜面の畑などで見られる棒仕立てという栽培法がとられます。
 
栄養を争うからでしょうか。一つの畑なのに、ブドウの熟すタイミングが樹によってまちまち。
ですので収穫の際は1列ずつブドウを食べて、十分熟しているかを見極めて収穫すると言います。
 
その甲斐あって、味わいの凝縮感は格別
フルーツ感、スパイス感、ハーブ感が高いレベルでバランスよく絡み合う、非常にユニークなシュナン・ブランと言えます。
 
2009年植樹のこの畑は、まだ樹齢10年そこら。
これから樹齢とともに品質が上がることは明白で、非常に楽しみなワインです。
 
 
 

ラーツがつくるカベルネ・フラン

 

ドロマイト カベルネ フラン

 
ラーツ自慢のドロマイト花崗岩土壌で育つカベルネ・フラン。
 
ステンレスタンクで発酵ののち、300Lのフレンチオーク樽で14~16か月熟成。
過剰なバニラ香がつかないよう、3~5年目の古樽のみを使います。
 
さらに3割強を全房発酵することで、ワインにスパイス感を与えています。
 
南アフリカで有名なワイン評価誌「プラッター」で最優秀カベルネ・フランに選ばれた経歴を持ちます。
 
 
ブルーワー氏いわく、「カベルネ・フランに必要なものが全てそろっている。」
ラーツの赤ワインは、まずはこのボトルから入るべきです。
 
 

ファミリー カベルネ フラン

 
カベルネ・フラン単一で作られるワインとしては、南アフリカで最高峰のうちの1本
 
このカベルネ・フランが育つ畑は、標高250m~450mにあり、常に強い風が吹きます。
その結果、ブドウの粒も房も小さくなるそうです。
 
それだけ味わいが凝縮されるので、それに合わせて25%は新樽で熟成されます。
 
ブルーベリーやカシスの香りが非常に美しい、カベルネ・フランです。
 
 

イーデン ハイデンシティー カベルネ フラン

日本未入荷
 
シュナン・ブランと同じく密植栽培されたカベルネ・フランが、ラーツがつくる最高額のワイン。
こちらは試飲する機会はありませんでした。
 
現地価格を参考にするなら、日本に輸入されるとしたらおそらく2万円台半ば~3万円くらいが相場でしょう。
 
 
 

最高品質を追い求めて MR・デ・コンポステラ

ココス未入荷 定価15,000(税抜き)
 
ブルーワーとその従兄弟のガヴィン。それから南アフリカで黒人として最初に栽培・醸造の学位をとった Mzokona Mvemve氏。
その3人のコラボレーションによってつくられるワインが、このMR デ・コンポステラです。
 
 
コンポステラCompostellaとは、コンポ(=一緒に)とステラ(=星)を合わせた造語。
3人一緒に輝くと言いう願いを込めています
 
このワインに使われる5つの品種、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、プティ・ヴェルド、マルベック。
それぞれ別個に醸造したワインを、1年樽熟した状態で3人が試飲し、100点満点で採点。
90点以上をつけた樽のみを用いて、高得点順の割合でブレンドしてつくられます。
 
よってブドウ品種の割合は毎年変わる。
90点以上をつけるワインが十分にない場合は、リリースされない。
 
南アフリカの最高峰ワインを目指すというコンセプトで作られたこのワインは、それこそ5万円、10万円をつけるナパ・ヴァレーのカルトワインにすらケンカを売れる味わいです。
 
 
 
ラーツの美味しさの秘訣は、まずはドロマイト花崗岩土壌をはじめとしたテロワール
そして類まれなるブルーワー・ラーツのセンス。
 

ブルーワー・ラーツ氏と筆者。そう見えないことは承知の上ですが、2人が持っているのはマグナムボトルです。

 
 
世界最高峰と言ってもいい、シュナン・ブランとカベルネ・フランをぜひご賞味ください。
 
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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