品種のお話

有名じゃないイタリアワイン|少しマイナーな土着品種で新食感宣言!

2026年1月15日

有名じゃないイタリアワイン|少しマイナーな土着品種で新食感宣言!
 
地ブドウの国であるイタリアには、あなたの知らないブドウ品種とワインがたくさん潜んでいます。有名な国際品種を飲みなれた方にとっては、ワイン選びは「安心感」と引き換えに「驚き」や「楽しさ」を失いつつあるのかもしれません。あえて味の想像ができない1本を手に取ることは、自身の味覚の地図を広げる知的な冒険です。日常の食卓を「発見の場」に変える、ちょっとマイナーな土着品種のおすすめワインをご紹介します。

有名ではない土着品種のワイン8選

 
イタリアで政府が認可している品種は約600種類。一方で未登録のものを含めると、一説には2000種類以上と言われています。なので「珍しい」にはキリがない。知っている品種はむしろごく一部に過ぎません。
 
なので今回ご紹介するのは、「有名ではない」土着品種。しかし、どれもイタリアの風土に根ざし、今日までつくり続けられてきたものばかり。もし気に入ったなら、ぜひ他の生産者のものも探してみてください。そこから、あなただけの新しいワインライフが始まります。
 
 

寒い時期に旨い重厚感

プーリア州/黒ブドウ

 
プリミティーヴォやネグロアマーロで有名なプーリア州。それらよりも更に濃厚で力強い味わいのワインをつくるのが「ススマニエッロ」。よりタンニンが豊富で色も濃く、重厚感のある味わいになります。
古いデータなので参考程度ですが、2000年時点での栽培面積はわずか72haしかありません。
 
このワインは、オリエンタルなスパイスや香木を思わせる独特のニュアンスがあり、国際品種では決して体感できない神秘的な風味を愉しめます。
 
 

通称「バローロ・ビアンコ」!?

ピエモンテ州/白ブドウ

 
白ワインでありながら、ほのかなタンニン(渋み)を感じる。それがこの「ティモラッソ」という品種の個性です。
 
通常、白ワインの渋みは樽熟成や果皮浸漬(オレンジワイン製法)に由来します。しかしこのワインは、果皮が大変厚く豊富にタンニンを含むので、それが白ワインの製法でも抽出されるのです。
ピエモンテを代表するタンニンの豊富な赤ワイン「バローロ」になぞらえて、「バローロ・ビアンコ」と呼ばれることもあるそうです。
 
タンニンがあるワインは、ある程度油脂があり噛み応えのある食材とよく合います。牛肉や鶏肉のたたきなどにはピッタリでしょう。
 
 

軽快で上品で華やか、こんなのあったんだ!

ピエモンテ州/黒ブドウ

 
ピエモンテのDOCG「アックイ」といえば通常は甘口微発泡ですが、こちらは非常に珍しい「辛口のスティル(非発泡)赤」です。ブラケット種特有の華やかなアロマはそのままに、驚くほど上品で軽快な口当たりに仕上げられています。
 
ピノ・ノワールを愛好する方なら、このスイスイと身体に染み入るような心地よさに驚くはず。生産者の卓越した技術と品種の個性が融合した、赤ワインの既成概念を覆す一杯です。
 
 

スッキリさと骨太感を併せ持つ

マルケ州/白ブドウ

 
マルケ州を中心に栽培されるヴェルディッキオは、中心であるマルケ州だけでも3500ha程度。この地域ではメジャーな土着品種です。
 
面白いのはマルケ州の中でも、海のヴェルディッキオと山のヴェルディッキオで明確に個性が分かれる点です。鉱物的なミネラル感を持つ魚介に合いそうなタイプか、味わいの骨格がしっかりした力強いタイプか。このフォンテヴェッキアはどちらかと言えば前者でしょう。
魚介料理はもちろん、リッチな質感のパスタ料理とも素晴らしい相性を見せてくれます。
 
 

熟したブドウは涙がこぼれちゃう

マルケ州/黒ブドウ

 
「ラクリマ」には「涙」の意味があります。これはブドウが熟したときに果皮が破れやすく、果汁が涙のように零れ落ちる様子から。周辺の州にも亜種があるなかで、こちらは「ラクリマ・ディ・モッロ・ダルバ」を使ったワイン。
 
ストロベリーやブルーベリーなどのフルーツの香りが零れ落ちそうなほどみずみずしく、ジューシーでまろやかな口当たり。国際品種の「力強さ」とは対照的な、優しく包み込むような果実感は、一度知ると忘れられない魅力に満ちています。
 
 

お花畑のような香りに思わず笑顔

カンパーニア州/白ブドウ

 
ファランギーナはナポリ周辺の火山性土壌で栽培される白ブドウ。古くは古代ローマ時代に「不老不死のワイン」として賞賛された甘口ワイン「ファレルノ」の原料であったと言われます。つまりそれほど長くこの地で重宝されてきたものなのです。
ゲヴュルツトラミネールほどではないものの、香りが華やかな「アロマティック品種」に分類されることも。柑橘やトロピカルフルーツ、花の香りが豊かに広がります。高い酸味を持ちながらもボディ感があり、なかなか主張の強い品種と言えます。
 
この甘い香りのイメージどおり、ちょっと糖分を残した醸造がまた絶妙。かといって食事を邪魔するほどの甘味ではありません。ファランギーナのある食卓は、より華やいで感じることでしょう。
 
 

バローロ生産者の普段飲み

ピエモンテ州/黒ブドウ

 
ピエモンテ特産のバローロは素晴らしいワインですが、あまり普段飲みに適している味わいではありません。豊富なタンニンと高い酸味、高級感がありすぎるのです。もちろん値段も高い。
 
ではピエモンテの人はどんな赤ワインを普段飲んでいるかというと、このドルチェットだといいます。品種名には「少し甘い」という意味があるそうで、これはワインが甘いのではなく酸味が低めだということから来ているそう。早熟でネッビオーロやバルベーラより早く熟すので、それらが熟しにくい寒い年にも良質なワインがつくれます。
黒系ベリーフルーツにスパイスの香り。口当たりは丸くジューシーで、適度なタンニンはありながらも滑らか。上質な日常を愉しむための「究極の普段着ワイン」と言えるでしょう。
 
 

チャーミングな果実味に肩の力を抜いて

サルデーニャ島/黒ブドウ

 
サルデーニャ島は歴史的にスペインとの結びつきが強い島です。この「モニカ」という品種もスペインから持ち込まれたものと考えられています。収量をしっかり抑えないと特筆すべきワインはつくれないと言われますが、普段飲み用としてはそのやさしい個性がいい。
 
小難しさのないフルーティーな味わいが特徴で、イチゴやベリーのよく熟した香り。肩の力を抜いて飲みたいシンプルなフルーツ感。柔らかい口当たりが魅力です。
 
 

イタリアが土着品種の国である理由

 
イタリアワインの世界は、一生をかけても「飲み尽くす」ことができません。極めて多種多様で、いくらでも未知のワインが見つかります。
その理由の一つが、先述のとおりブドウ品種の数が多いこと。なぜこれほどまでに多種多様で、常に未知の感動が潜んでいるのか。その背景にある、イタリアならではの歴史的・文化的理由を考察してみます。
 
 

1. 世界No.1生産量を支える巨大な市場

 
イタリアとフランスはともにワインの生産量世界一。その年の豊作・凶作で度々順位が入れ替わります。注目すべきはそれを支える強大な市場の存在です。
 
ブドウ品種が多様なだけではワインはつくれません。それを消費する市場があり、売れる見込みがないといけないのです。
イタリアの人口は約6000万人であり、一人当たりのワイン消費量は年間43L前後。かつて1970年代には100Lを超えていたと言われます。まずそれほど大きな国内市場があるのです。
 
さらにイタリアはその生産量の半分を輸出しており、最大のワイン輸出国です。
世界中で「イタリアワイン」は、どこでも見かけ親しみのあるワインであること。大量に消費されるからこそ、多様なワインをつくることが可能であると言えます。
 
 

2. 「国際品種」という選択肢があっても選ばれる

 
土着品種が多い一方で、フランス原産の国際品種からも多くのワインがつくられます
カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラー、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー・・・。こういった有名品種のワインもたくさんあります。これらフランス由来 of 品種でも、高品質で高価なワインがつくれることが既に証明されています。
 
それでも土着品種もつくり続けられています。お金をとりやすい国際品種に植え替える選択肢もあるというのに、です。
その事実には注目すべきでしょう。
 
 

3.地理的・気候的な多様性

 
イタリアの国土はそう広いとは言えませんが、非常に多様な地形と気候が見られます
よくブーツの形に例えられますが、その足首部分の中央にはアペニン山脈が通り、東西を分断しています。北部の方はアルプス山脈に隣接し、気候は山の影響を受けます。面している地中海の影響はもちろんのこと、それを超えたアフリカ大陸の影響も受けます。
 
 
そしてイタリアは20の州すべてでワインがつくられています。気候の多様性が、品種の多様性を生む土台をつくります。
 
 

4.交流の盛んな歴史の末に

 
イタリアはその位置ゆえ、様々な国の影響を受けてきました
紀元前においてワイン造りを持ち込んだのはギリシャ人だと言われます。アフリカからもブドウが持ち込まれたこともあるそうです。
 
島国である日本と違い、ヨーロッパの歴史においては国境線は幾たびも動いてきました。そのたびに離れた地域の人が郷土のワインをつくろうと、ブドウを持ち込むことがあったのでしょう。
数千年にわたる品種交配の試験場であったことが推測されます。
 
 

5. 誇り高き郷土愛「カンパニズモ」

 
19世紀の後半まで、イタリアは小さな都市国家や領土の集まりでした。だからでしょうか。「カンパニズモ」と呼ばれる郷土愛が非常に強い傾向があります。
国際的に評価が高いものよりも、地元の慣れ親しんだものが一番と考える。そんな文化なのです。
 
「フランス系品種の方が高いワインがつくれそう」と知ったとしても、「それでも昔ながらのワインをつくり続ける」そんな人も多いのでしょう。
さらに近年は、絶滅しかかっていた土着品種を復活させる動きも見られます。先ほど紹介したピエモンテ州の「ティモラッソ」などはまさにその例です。
 
 

他にもある土着品種の国

 
土着品種のワインが多い国は他にもあります。ポルトガルやジョージアなどがその例です。
どちらの国も政策が関係します。特に1900年代後半の時期に、ポルトガルは鎖国に近いスタンスをとっていたこと。ジョージアは旧ソ連の一部であり、欧米の文化が入ってこなかったことが原因です。
フランス系国際品種が広く栽培されるようになっていった時代。その影響を受けなかった国が、土着品種の宝庫として残っているのです。
 
イタリアの土着品種で楽しさを覚えたなら、ポルトガルやジョージア、あとはギリシャなどのワインも試してみると面白いでしょう。
 
 

国際品種と比べて土着品種の特徴を考察する

 
何百・何千とある土着品種をひとまとめに、その特徴を語ることはできません。それでも多少の傾向ならあると筆者は考えます。
有名な国際品種のワインと比べると、イタリアの土着品種の傾向が見えてきます。
 
 

あか抜けない野性的な風味

 
特に黒ブドウ・赤ワインにおいて、土着品種のワインにはあか抜けない素朴な風味を持つものが多いように感じます
 
それと比べたとき、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールといった国際品種は風味が洗練されています。この「洗練」とは、多くのワインで感じるフルーツや花といった明確な香りをピュアに感じるということ。
 
 
逆に土着品種のワインからは、動物的な野性味や、土や埃のようなニュアンスもよく感じます。それ単独では美味しそうと思えない香りが、風味に複雑さを添えているのです。先にご紹介した「ススマニエッロ」などはその一例です。
だからこそ風味がより多様で驚きのあるものになり得ます。
 
 

料理を完成させる白ワインの「心地よい苦味」

 
とりわけ沿岸地域でつくられる白ワインには、余韻に心地よい苦みを感じさせるものが多いように感じます
ヴェルメンティーノ、インツォリア、グリッロなどは、高い酸味とミネラル感が特徴。苦みを感じるものも少なくありません。
そういったものの方が、海鮮料理とあわせたときに美味しく感じます。この要素があるからこそ、新鮮な魚介料理と合わせたときにワインが「ソース」のように機能し、料理の旨味を劇的に引き立てるのです。
 
これは「地元の料理にあわせてワインが選ばれていった」結果なのかもしれません。
 
 

風味の派手さが控えめで飲み飽きない

 
カベルネ・ソーヴィニヨンのような豊富なタンニン。リースリングのようなシャープで高い酸味。ゲヴュルツトラミネールのような華やかで甘い香り。
 
そんな分かりやすい派手な風味は、土着品種には比較的少ない傾向です。そんなワインが選ばれてきた理由があるはずです。
数百年前の交通が未発達だった時代。わざわざ他地域からワインを取り寄せて庶民が飲むことは稀だったはず。地元でつくる同じワインを来る日も来る日も飲み続けるわけです。
 
派手で個性的な風味のワインより、飲み飽きない控えめなワインの方が美味しく感じる。毎日の食事に寄り添うワインの方が心地よく感じる。そうして現在の土着品種が選ばれ残ったのでしょう。
 
 

予測できないワインを選ぶメリット

 
先のワイン紹介や商品ページの文章を精読したとて、全く経験のないワインの風味を詳細に予想することはできないでしょう。
あなたの好みにあうかどうか。それについては「飲んでみるまで分からない」という無責任なことしか言えません。
 
国際品種とくらべて安心感がないのが土着品種のワインです。それでも選ぶ理由があります。
 
 

比べない純粋な満足感

 
「舌が肥える」ということがあります。
それまで好きだったものも、より高価で美味しいものを食べ飲みすることで、以前ほど満足できなくなること。自分の中での基準が上がってしまうことです。
国際品種ではとかくそれが起きやすい。いくらでも高価なワインがあるからです。
 
「家飲みの安いワインなんだから、比べても仕方ない」と頭ではわかっています。
でも先日感動したワインと意識せずとも比べてしまう。「この値段にしてはいいじゃん」であって、手放しの賞賛ではない。
 
その点で初めて飲む土着品種のワインは、自分の中で確たる評価基準がありません。何が正解かわからないからこそ、比べることなく目の前のワインが好きか嫌いかを判断できる。その気楽さこそが、いつもと違う満足感につながるはずです。
 
 

日常の食卓が発見の場に

 
土着品種は往々にして、ワインからはあまり嗅ぎなれない香りを持ちます。
例えば私は先ほどのラクリマから、ブルーベリーではなく駄菓子のブルーベリーガムのような、香料的な香りを感じます。他の品種からは今のところ似た経験はありません。
 
「これ、何の香りだっけ?」
 
一人の晩酌であれば深い思索の時間に。パートナーとの食事であれば会話が弾むきっかけになります
 
 
全てのワインがそうとは言いませんが、ワインにおける新体験の期待を持てるのが土着品種です
その分、ワインが口にあわない心配もあります。それも含めて楽しめるようになれば、日常の食卓が発見の場になるでしょう。
 
 

土着品種のワインで日常にワクワクを

 
大人になって経験を積むほど、純粋に「ワクワクする」機会は減っていくものです。慣れ親しんだ日常の中で、心が待ち遠しくなるような瞬間を見つけるのは簡単ではありません。
好きなアニメの続き。週末のお出かけの予定。勝つか負けるか分からないスポーツの試合。子供のころほどワクワクできなくなっていませんか?慣れてしまうからです。
 
だからこそ子供には味わえないお酒のワクワクを。「こんな品種飲んだことない。どんな味がするんだろう?」そんなワクワクを日常にプラスしませんか?
単に美味しいお酒を飲んで酔うばかりではありません。知的好奇心を満たし、感性を揺さぶる「プラスアルファ」の満足感です。
 





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




YouTubeバナー

-品種のお話
-, ,