BYO、"Bring Your Own"とは、レストランなどの飲食店にワインを持ち込んで飲むことです。
プロの料理に合わせて好きなワインを楽しめるというのが、ワイン好きにはうれしいところ。
ただし、BYOする上で知っておくべきマナーというものがあります。
自分たちも飲食店さんも気持ちよく、BYOを楽しむコツをご紹介します。
そもそもBYOとは
先ほど述べた通り、BYOとは「Bring Your Own」の略。
ただし飲み物であれば何でもいいというわけではなく、アルコール飲料のみ。基本的にはワインのみです。
どのような意図でシステムが出来上がったのでしょうか。
BYOのはじまり
BYOはオーストラリアで始まった習慣だといいます。
オーストラリアでは、レストランがお酒を提供する許可を取るのがなかなか難しいそうです。
そこで「うちはお酒提供できないから、その辺で買ってきたもの飲んでいいよ」というシステムにしたのが始まりだそうです。
店側としては、管理に手間がかかりスタッフの教育も必要な酒類提供を無理にやるより、フードの販売に注力した方がいいということでしょう。
推測にはなりますが、ハンバーガーなどのあまりお酒が出ない業態、売り上げにおけるアルコール比率が低いお店ほど積極的なんじゃないでしょうか。
その習慣が輸出されていって、日本でもBYOができるお店は少なからずあります。「BYO」という言葉が広がっているとは言えませんが、ワインの持ち込みが可能なお店は意外と多いです。
BYOにかかる費用
当然ながらBYOには料金がかかります。通常は「持ち込み料」と呼ばれます。
たいていは「ボトル1本持ち込み〇〇円」という風に決まっています。
相場では1000円~3000円ほど。お店の業態や客単価によって変わり、高級なお店だと4000~6000円ほどでしょう。
持ち込み料と食事の代金の他に、持ち込みするワインの購入費も必要です。
BYOする利用者側のメリット
この費用をかけてまでワインを持ち込みする理由は何でしょうか。
それは自宅で飲むにはもったいないとっておきのワインを手ごろに楽しめること。
プロの料理と特別な空間で味わうことができる点です。
BYOはお手頃?
ワインの持ち込み料は、通常は「1本〇〇円」というように定額です。
それに対して飲食店のボトルワインの金額は、通常「原価率〇%」のように定率です。つまり、高額なボトルほどワインの小売価格とレストラン価格との差額が多きくなります。
もちろん、通常は手ごろなボトルほど利益率を高く設定し、高価なボトルは利益率を下げるといった値付けをするところも多いです。ボトルの値段によらず、サービスの手間はほぼ変わりませんから。
それでも、ワインショップで5000円のワインがレストランで1万円強なら、良心的といえる値付けです。
つまり高価なワインを楽しみたいのであれば、レストランで注文するより持ち込み料を払ってでも持参した方が安いのです。
参考
持ち込むワインはなんでもいいってわけではありません。「なにを持っていこう?」と迷った際はこの記事を参考に。
好きなワインが飲める
ワイン好きにとってBYOで一番ありがたいのが、「飲みたいワインが飲める」という点でしょう。
ワインは星の数ほど種類がある、とはちょっと言い過ぎかもしれませんが、圧倒的に多種多様なのは確かです。
だから自分が飲みたいと思っているワインがそのレストランに置いてない、ということは普通です。むしろ目当てのワインが置いている場合の方が少ない。
例えば「ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンが1万円くらいで飲みたい」のように、ワインの”タイプに"希望があるなら、取り寄せてもらえばいい。お店との関係性にもよるでしょうが、フランチャイズ契約に縛られたチェーン店でなければ対応してもらえるでしょう。
ただし、ワインは買いたいと思っても買えないものも多い。
数が限られていて、運かコネがないとお金を積んでも手に入らないワイン、たくさんあります。
さらにヴィンテージというものがある。20年30年前のワインで特定の銘柄となれば、なかなか狙った通りには手に入りません。
そういう貴重な銘柄をレストランで楽しもうと思えば、自分で確保しておいてBYOする以外にないのです。
プロの料理と最高の状態で
BYOをする際のサービスはお店に寄りけりです。
最低限というならグラスを貸してもらうだけで抜栓するところからセルフサービスという場合。ワインの扱いに長けたスタッフのいないお店や、客単価の低いお店などではそういう場合もあると知っておきましょう。その分、持ち込み料は安めの場合が多いです。
もし本当に高級なワインを持ち込むのであれば、ベテランのソムリエさんがいてすべてお任せできるお店が安心ですよね。
ワインの温度管理やグラスの選択、抜栓のタイミングなどベストな状態で提供してくれるはずです。
ならばこそ、ワインに見合ったプロの料理と楽しみたいものです。
ワインは家で飲んでもお店で飲んでも中身は同じですが、料理はそうではありません。プロの料理を家で用意するのは困難。
ワインのグレードにあった料理と楽しんでこそ、とっておきのワインを開ける価値があります。
このように、BYOは「ワイン好きなら利用しないともったいない」といえるほど、メリットがあります。
ただし、自分の都合だけを考えていては、お店に嫌われる痛い客になってしまう。飲食店側の考えを知れば、おのずと守るべきマナーもわかってきます。
飲食店側の考え
日本において「酒類の提供が煩わしいから」という理由でBYOを受け入れるお店はほぼないでしょう。
BYOができる飲食店の考え方。それはおそらく次の2つです。
〇BYOできることをアピールして、集客につなげよう
〇BYOしてもいいよ
お酒は飲食店の稼ぎ頭
多くの飲食店において、お酒は欠かせない収益源です。
その中でも特にワインは、高単価を狙える商品です。
よって本心では、どの飲食店もBYOよりワインリストから飲んでほしい。その方が儲かる。
そう思っているんじゃないでしょうか。
とはいえすべてのお客様がワインを飲むわけじゃない。
1人のお客様が飲むドリンクから平均してこれくらいの利益を得たい。この金額をもとに持ち込み料は決められているはずです。
原価ゼロでこれくらいの利益を得られたら、まあいいかなと。
つまりBYOは飲食店側からすると、もろ手を挙げて歓迎するようなものではない、ということをまず知っておいてください。
料理や他のドリンクで利益を
先述のとおり、ワインの持ち込み料だけではそれほど飲食店のもうけはありません。
だから期待しているわけです。しっかり料理も食べてほしいな。持ち込みのワイン以外にもドリンクを注文してほしいなと。
なので「ワイン持ち込みは〇〇円以上のコース料理の注文が必須」のように取り決めているお店もあります。
ワインを普段から嗜まれている方は、ある程度お金に余裕がありグルメな方が多いです。
ワインの持ち込みOKにすることで、そういう方が来店してたらふく食べてくれることを、お店側は期待しているのです。
BYOがOKなお店、NGなお店
上記のようなお店側の思惑をふまえると、ワインの持ち込みができるお店/断られるお店それぞれの理由が見えてきます。
まずはBYOを断るとしたらどういう理由か。
まず一つは、お店の設備やスタッフ的に対応できない場合。通常ワインを提供していないお店に持ち込むのが難しいでしょう。
もう一つは、お店の収益に占めるワインの割合がかなり高いお店。逆に言うと食べ物で儲けられないお店。ワインバーなどがそれに当たります。それほど本格的でお金をとれる料理を用意していないので、お店提供のワインを飲んでもらわないと困るんです。
2軒目利用を想定したお店は難しいと言っていいでしょう。
一方でお店の看板となる料理があって、ワインもある程度提供しているお店は、BYO可能なことが多いです。
お店のHPなどに持ち込み料の記載がある場合はもちろん、記載がなくても問い合わせてみたら可能だったという場合も。
「記載がなくても持ち込みできるか聞いてくるということは、BYOに慣れたお客様なんだろう。ということは、気に入ってもらえたら通ってくれるかな」
こう期待しているお店が、「BYOして"も"いいよ」というスタンスのお店なわけです。
BYOする際のマナー
マナーというのはお互いが気持ちよく過ごすための行動規範です。
自分が持ち込むワインを楽しむだけではなく、お店側に「BYOで売り上げは減ったかもしれないけど、このお客様に来てもらえてよかったな」と思ってもらえること。
そのためのコツをご紹介します。
マナーが大事な理由
「こちらがお金払っているのに、なんでそこまで気にかけないといけないんだ」
そう考えてマナーのなっていない持ち込みをする人が増えればどうなるでしょうか。「BYOしてもいいよ」というスタンスのお店は、NGにしてしまうかもしれません。別に積極的に受け入れたいわけではないのですから。
「コース料理注文必須」などのお店が増えれば、アラカルトでいろいろ好きなものだけ食べたいお客様に不利益です。
マナーを大切にしないと、「ルールで縛る」しかなくなります。
互いに思いやりを持てば、世の中のいろいろなシーンがもっと円滑に回るんじゃないでしょうか。
マナー① 予約の時に持ち込みを伝える
よほど親しい間柄でないなら、ワインを持ち込む前に予約時にそのことを伝えましょう。
お店に入っていきなり「持ち込み料払うからこれ飲んでいい?」と聞くのはあまり良くない。お店としてBYOがOKのスタンスなら問題ないでしょうが、持ち込みの可否がわからないお店は事前に確認しましょう。
初めて訪れるお店で予約の際に聞いてみるのも悪くはないです。
もし可能なら、1度はお店のワインを飲んだ上で帰り際に「ところでこちら、ワインの持ち込みってできるんですか?」と聞いてみるといいでしょう。それはつまり、お店の料理が気に入ってまた来たいという意思の表れなので、BYOの可否に関わらず嫌な顔はされないはずです。
マナー② お店のリストにはないとっておきのワインを
ワインの持ち込みをするなら、わざわざ持ってくる価値のあるワインで。
一番最悪なのは、「持ち込んだ方が安くつくじゃん!1000円のワインなら持ち込み料あわせても2500円だよ!」みたいな考え方。こういう考えの人が気前よく料理を注文することはありませんから、お店の人もいい対応をしようとは思いません。クレームにならない程度の塩対応をされても文句は言えません。
「自宅で開けるのはちょっともったいないなと感じるワイン」
そんなとっておきのワインこそ、レストランで楽しんでください。
マナー③ レストランスタッフの手に余るものはNG
もともと飲食店で働いていた身としては、お店の格に合わない高級すぎるものも扱いに困ります。
1脚1000円くらいのグラスをつかって、せいぜいボトル5000円くらいのワインを提供しているお店なのに、10万円のワインはベストな状態で提供できません。さすがにそんな方はおられませんでしたが
20年以上前の古酒も勘弁してください。古くて脆くなったコルクは抜栓が難しいです。どのソムリエさんでも抜栓に自信があるわけじゃない。ちなみに筆者もできません。
腕に覚えのあるソムリエさんがいる、もっと高級なお店にいってください。
かなり高価なワイン、古いワインを初めて持ち込む際には、予約時に銘柄を伝えて確認をとった方がいいでしょう。
マナー④ ワインはできれば事前に預ける
古酒とはいかないまでも、10年近く経過した赤ワインの中には、澱があるものもあります。
澱は振動で舞うので、飲む前に立てて静止しておく必要があります。そうでないと、ボトルの途中から口当たりが悪くなります。
そういったワインは、予約日の1週間前にはお店に預けておくといいでしょう。宅配便で送るという手もあります。
若い赤ワインや白ワイン、スパークリングワインは、ハンドキャリーつまり直接持参してもいいですが、預けておいた方がしっかり飲み頃温度で提供してもらえます。
マナー⑤ ドリンクメニューからも注文する
例えば白ワイン、赤ワインを持ち込むなら、最初はお店のグラススパークリングから始める。
スパークリングワインを持ち込むなら、メインディッシュに合わせて赤ワインを注文する。
そんな風に、持ち込んだワインだけじゃなくお店のメニューからも注文しましょう。料理に合わせてワインをバランスよく楽しめますし、より好感度が得られるというものです。
マナー⑥ ボトルワインは1杯残して
ワインに関心のあるスタッフ・ソムリエさんなら、あなたが持ち込んだとっておきのワイン、「飲みたいな~」と思っているものです。
中身がある程度減ってきたら、1杯分くらいを残して「あとは良かったらスタッフの方で楽しんでください」と伝える。あなたのジェントルマンポイントは爆上がりです。
もっと直接的に、抜栓時に「マスター、差し支えなければ一緒に飲みましょうよ」と提案してみてもいいでしょう。自分の飲める量は減ってしまいますが、そうやってお店の人と一緒に飲んだワインの方が記憶に残っているものです。
この⑥に関しては、「マナー」というほど義務的なものじゃありません。「そうした方が、お店の人と仲良くなれるよ」というコツのようなもの。
別に飲み切ってしまってもがっかりされることはないのでご安心を。
BYOできるお店を探す
「ワインを持ち込む」という習慣は、私はある歳までそんなものがあることを全く知りませんでした。
知ったきっかけは、ワイン好きの知人にレストランに連れて行ってもらったこと。身近にそういう習慣のある方がいないと、なかなか知りえないことです。
実はBYOできるお店、結構あるというけど、いきなり聞くのはハードル高いな。
初めてだから、きっちり持ち込み料の決まったお店がいいな。どうやって探せばいいんだろう?
そんな方の心強い味方として、「Winomy ワイノミ」というサイトがあります。
阪神百貨店さんが運営されているサイトで、ワイン持ち込み可能なお店を検索できます。
このサイトを通してなら持ち込み料が安くなるプランなどもあるので非常にありがたい。
まだまだ掲載店舗が少ないのが残念なところですが、東京・大阪ならそこそこ選べます。
「このワイン、どうせならプロの料理とあわせて飲みたいな」
そんなワインが手元にあるなら、行きたいお店があるか一度見てみてもいいでしょう。