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引っ越しのお祝いにおすすめ! グレネリー・エステイト

2020年3月15日

 
 
引っ越し。
ちょうどこの3月は引っ越しのシーズンです。
仕事のため、家族のため、様々な理由で引っ越しを経験する方は多いでしょう。
 
引っ越しの際は、新たな地での期待と不安を抱くもの。
友人の引っ越しの際、新天地がすばらしいところであることを願って贈るもの。
自身が引っ越しをする際、新たな地で素敵な出会いがあることを願って飲むもの。
 
グレネリー・エステイトのワインをおいてほかにないでしょう。
 
 

南アフリカでワインをつくる レディ・メイの決断

 
フランス、ボルドーのメドック地区。その中でもとりわけ著名シャトーがひしめくポイヤック村。
そこに年の歴史を誇る2級シャトー、シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドがあります。
(正式名称は長すぎるので、たいていは「ピション・ラランド」と略されます。)
 
そのオーナーであったメイ・エレーヌ・ド・ランクザン夫人
1988年に南アフリカを訪問した際、この地がとてつもない可能性を秘めていることに気づきます。
 
入念な準備の末、メイ夫人は2003年にグレネリーを設立。
南アフリカでのワイン生産を始めます。
 
 
 
これだけなら、別に珍しいことではありません。
例えば最も有名なアメリカワイン「オーパス・ワン」は、「シャトー・ムートン・ロートシルト」というボルドー1級シャトーを所有するロートシルト(英語名ロスチャイルド)家と、カリフォルニアワインの父ロバート・モンダヴィのジョイントベンチャー。
お金持ちの多いボルドー格付けシャトーの生産者やシャンパーニュの生産者が、ニューワールドでワイナリーを設立するのは珍しくありません。
 
 
グレネリーが特異なのは、メイ夫人がピション・ラランドを売り払ってしまったこと
2007年にシャトーをルイ・ロデレール社に売却し、南アフリカに移り住んでしまったのです。
 
決してピション・ラランドの経営が上手くいっていなかった訳ではないでしょう。
むしろピション・ラランドはメイ夫人の代になった1978年以降、評価を上げています。
現在の市場価格は、新しいヴィンテージで2万~2.8万円ほど。それを年間18万本ほど生産します。
 
しかも当時、メイ夫人は78歳。
 

メイ・エレーヌ・ド・ランクザン夫人 御年95歳!

 
おばあちゃん、アグレッシブすぎないですか!?
 
つまり南アフリカ、ステレンボッシュという新天地がそれだけ魅力にあふれたものだったのでしょう。
 
 
銘醸地ボルドーで成功をおさめながらも、まだまだ発展途上な南アフリカに引っ越ししてしまった
この経緯が、『引っ越し祝いに贈るワイン』としてグレネリー・エステイトを推す理由です
 
還暦をとうに過ぎての挑戦という意味で、「これからもお達者で」という意味を込めての定年退職のお祝いに女性に贈るのもいいかもしれません。
 
 

設立から20年足らず 最新の技術を用いたグレネリーのセラー

 
先日筆者は南アフリカワインツアーに参加し、グレネリーを含む10数か所のワイナリーを訪問してきました。
その中でとりわけ清潔で美しかったのがグレネリー・エステイトのセラーです。
 
グレネリーの醸造施設・セラードア・レストランなどの施設がはいった建物は、丘の斜面を活かす形で作られています。
これは最近のワイナリーに多いグラヴィティーシステムを採用しているから。
 
 
上層階にブドウを運び入れ、そこで選果・除梗などの処理ののち、地下1階で発酵、地下2階で熟成、地下3階で貯蔵といったようにワインが下へ下へと進んでいきます。
重力を利用することで、ポンプを使わない醸造が可能となり、よりワインにやさしくピュアな味わいになると考えられています。
 
 
その発酵用ステンレスタンクが並ぶ階層が、ともかく清潔に保たれています。
ワイナリーを見学すると、大なり小なりブドウの発酵した醸造所のニオイがするもの。
 
 
ワイナリー見学は日本ではまだ身近ではないでしょうが、日本酒の酒蔵見学をしたことがある方なら、なんとなく想像がつくでしょう。
 
その藏の香りが全くしない。
これができて2,3年のワイナリーならわかります。
完成後15年経過しているのです。
 
ここまできれいなワイナリーは、以前オーストラリアで見学したデ・ボルトリと並んで、私の少ない経験の中ではNo.1です。
 
 
美しいのはセラーだけではありません。
セラーを取り囲むように広がる畑もまた、きれいに整備されています。
 
グレネリーはオーガニックなどの認証を取っているわけではありませんが、除草剤などを使わない農法。
なので畝の間には下草が茂っています。
リーフロールという葉っぱが赤く変色する病気になっているものもほとんどなく、とても健康そう。
 
 
畑の合間に植えられているオリーヴ。
このオリーヴの並木が隣の畑との垣根になり、除草剤などが流れてくるのを防いでくれるのだとか。
ワイナリーではグレネリー自家製のオリーヴオイルも購入できました。
 
 
質の高いグッズも販売される直営ショップ。
本格的なフレンチ料理を楽しむ人でにぎわい、夕焼けがとても美しいレストラン。
そして何より、メイ夫人が集めたグラスのコレクションルーム。
 

文化財級のグラスコレクションがずらり

 
見学経路には、2000年前のものとされるアンフォラ(陶器製のワインの保存容器)が展示されていました。
リアルに博物館並みです。
 
 
私たちにグラスコレクションを詳解してくださったメイ夫人。
「君たち、気に入ったものを一つずつ持って帰りなさい」なんて仰ってましたが、身の丈に合わなさ過ぎてムリ!
冗談、、、ですよね?
 
 
 

素晴らしいコストパフォーマンス グレネリーのワイン

 
グレネリーのワインは3つのクラスに分けられます。
 
フレッシュさを楽しむリーズナブルな単一ブドウでつくられる「グラスコレクション」のシリーズ。
熟成期間の長く1ランク上の味わい「エステート リザーヴ」のシリーズ。
そしてフラッグシップワイン「レディ メイ」。
 
その全てに共通する安定した品質とコストパフォーマンスは、長くレストランで使われる秘訣です。
 
それは決して、機械化・大量生産によるコストダウンではありません。
 
 
例えば当店でも人気のアタラクシアやキャサリン・マーシャルのワインは、安いとは言えません。
設立して10年20年では、設備投資の回収のためにワインにその価格を乗せる必要があるのです。
 
その点、ラステンバーグのような設立の古いワイナリーは別。
定期的に設備を更新するにも余裕があり、価格に乗ってきません。
 
グレネリーは設立が新しいにもかかわらず、その資金力はけた違い
広大な敷地、芸術的なワイナリー施設、そしてグラスコレクションを見れば一目瞭然です。
その資金力をもとにリーズナブルな価格で提供してくれるのですから、消費者としては楽しまなければ損です。
 
 
 

グラスコレクション シャルドネ

 
グレネリーの敷地に入ってほどなく広がる畑。
盆地になっているため、一番冷気が溜まりやすいところに、シャルドネの畑はあります。
 
すばらしくきれいに選定され、畝の間に生える下草と共にとても美しい状態に保たれています。
 
なかなかたくさんのブドウがついているので、面積当たりの収穫量を聞いてみると、80hl/ha程度と割と多め。
しかしグレネリーのワインから、収穫量が多すぎることによるシャバシャバな感じは受けません。
樹齢が若いこともあるのでしょうが、(17年程度)これが適正な収穫量なのでしょう。
 
ランチタイムに飲むのにピッタリのフレッシュなタイプのシャルドネです!
 
 

エステート リザーヴ シャルドネ

 
500Lのフレンチオークで熟成されたシャルドネ。
一般的な225Lの小樽ではなく大樽を用いるのは、オークの風味をつけすぎないようにとの目的。
 
フレンチオークで11か月熟成。リッチにしすぎないようにバトナ―ジュは行いません。
それは絞った状態の果汁が十分に質が高く、リッチだから。
 
大阪の有名なワインバー「赤白(こうはく)」さん。
フレンチおでんが名物のお店で、そこで「大根のポルチーニ茸ソース」とのマリアージュが提案されています。
 
 

グラスコレクション メルロー

 
南アフリカは暑いので、実はメルローは難しい品種。
特に水分を多く必要とするので、栽培が難しいのです。
 
グレネリーでは東向きの涼しい斜面をつかって栽培
そこは粘土質の土壌があって保水性に富んでおり、メルローに向いているのです。
 
アロマティックで黒い果実やドライハーブ香りがあり、フレッシュでありながらしっかりとした味わいの骨格を持ちます。
 

グラスコレクション カベルネ フラン

 
チェリーや鉛筆の芯、土のようなアロマ。
フレッシュでエレガントな印象。
 
カベルネ・フランとしてはあくまでボルドースタイル。
醸造長のルーク(Luke O'Cuinneagain)はボルドーで修業していたこともあり、そのスタイルと踏襲しています。
 

Luke O'Cuinneagain Winemaker

 

グラスコレクション カベルネ ソーヴィニヨン

 
黒い果実、カシス、レッドベリー、クランベリーのような香り。
ほどよくしっかりとした骨格がありながら、重すぎず、程よいタンニンとともにスムースな飲み口。
 
ステンレスタンク発酵の樽熟成で、生き生きとした印象です。
 
 

エステート リザーヴ レッド

 
日本で販売中の2012年と、2013年を比較試飲できました。
 
17世紀ごろ、ボルドーではローヌや北アフリカからシラーを買ってブレンドしていた時期がありました。
収穫期の天候が不安定なボルドーでは、ブドウを完熟させるのが今よりさらに困難で、赤ワインが淡い色となってしまうことが多かったそうです。
それを補うべく、良く熟して色が濃く、リッチな果実味を与えるシラーをブレンドしていたのです。
 
今では地方をまたぐブレンドをすればテーブルワイン扱いとなってしまいますので、そのようなワインはほとんどありません。
例外としてその時代の復刻版的な意味としてつくられる、シャトー・パルメの「ヒストリカル・ナインティーズ」が有名です。
 
エステート・リザーヴもその時代を参考に、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、プティ・ヴェルドの他にシラーをブレンドしています。
 
リザーヴ・レッドの目指すところはヴィンテージの表現
 
温暖であった2012年は、香り高くリッチな印象。
逆に冷涼な2013年は、引き締まってエレガントなイメージを持ちます。
 
 
様々な色があつまって絵画となるように、いろいろな品種があわさってアートのように形作られるのがブレンドワインの魅力だと、彼は語ります。
しかしそれらが一つになってハーモニーを奏でるには時間が必要。
なのでワイナリーで数年寝かせてリリースされます。現地でもこれから2013年をリリースするところ。
 
2000円台半ばのワインを6,7年熟成させてリリースできるのは、ワイナリーがお金をもっている証拠です。
 
 

レディ メイ

 
メイ夫人の名前を冠したフラッグシップワイン
これも2012年と2013年を比較試飲。
エステート・リザーヴで感じたヴィンテージの違いがそのまま表現されています。
 
ステンレスタンクでの発酵後、12か月澱と共にマロラクティック発酵と熟成、その間様子をみながらちょっとずつブレンドしていき、一度樽を入れ替えてさらに12か月間熟成のうえ瓶詰されます。
 
レディ・メイは2008年がファーストヴィンテージなので、発売からわずか5年目、6年目のヴィンテージ。
にもかかわらず素晴らしい完成度。
 
ボルドースタイルのブレンドで、これにはシラーは入っていません。
長い熟成を見込んだフラッグシップワインで、グラスの中でも成長を見せます。
スワリングしていると、どんどん様々な香りが上ってくるのです。
 
彼はグレネリー設立の年、フランス、ボルドーでメイ夫人とともに1873年のボルドーワインを開けて飲んだと言います。
まだフルーツの感じが残っており、素晴らしいワインだった!
 
グレネリーでも目指しているのは100年の時を耐えうるワインだそうです。
 
 
後ほどレストランにて2008年のレディ・メイと、2001年のシャトー・ピション・ロングヴィル・ラランド(市価2~3万円)を比較しました。
非常に似た方向性ながら、質で全く負けていない!
さすがに余韻に感じるフィネスは劣るものの、当時わずか4年という樹齢を考えると、これからもっと伸びていき、やがて超えるかもとすら感じました。
 
 
グレネリーのブドウは2003年もしくは2004年に植樹されたもの。
グレネリーのワインはどれも熟成能力があり、特にエステート・リザーヴ以上は寝かせた方が美味しくなる。
 
しかしグレネリーの場合は、若いヴィンテージほど樹齢が上がってレベルが向上しています。
ポテンシャルがどんどん伸びていることを考えると、若いヴィンテージを選んで飲むべきか、非常に悩ましいところです。
 
 
 
私の乏しい経験でも感じてしまいます。
南アフリカは、ブドウを育てるのに最高の環境のひとつだと。
 
南アフリカを旅し、現地のブドウ畑を見て、メイ夫人はそれをより実感したのでしょう。
その決断が、現在『グレネリー・エステート』という形になっているのです。
 
ボルドーから南ステレンボッシュへ。
遠く離れた地で最高の環境を得られた喜びを、このワインを通して感じてください。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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