《ドイツとアルザスのリースリング》
アルザス地方はドイツと国境を接しており、歴史的にも何度も国境が変わった地域。ゆえにブドウ品種も共通しており、ともに最高品質のワインはリースリングでつくられます。
ゆえにアルザスとドイツは似ていると考える人も多いのですが、リースリングオタクの視点から述べると全く違います。
アルザスに近いドイツの地方はファルツの南部やバーデン。ピノ・ノワールなどのブルゴーニュ系品種が盛んで、リースリングの銘醸地はもっと涼しい地域にあるからです。ドイツと違いアルザスのリースリングは、もっと暖かい気候の特徴が表れるのです。特に上級クラスでその傾向が顕著です。
《テイスティングノート》
生産者HPで確認した2022VTのアルコール度数は13.69%。まずドイツで見ることはない数字です。まさに「フルボディ」と言っていいほどの味わいの密度と重量感を持ったワインで、コンポートにした柑橘やトロピカルフルーツのアロマを持ちます。味わいは完全にドライで力強いもの。酸味はリースリングとしては低めとはいえ、全体からすると「高い」と分類する上品なものです。風味の緻密さや余韻の長さにスタンダードとは一段違う高級感を感じます。
《生産者について》
アルザスの中には自然任せのつくりで個性を出そうという生産者が近年少なくありませんが、ドメーヌ・ジンクは違います。流行に流されるのではなく、品種の個性を忠実に表現するワイン。ともすれば「ありきたりでつまらない」と捉えられかねませんが、それは教科書通りの味わいでいつ飲んでも期待通りの味である安心感の裏がえしです。
ジンクでも有機栽培を行っておりビオディナミに転換中。それは「偉大なワインは台地から生まれる」という信念に基づくから。同時に「醸造には最新の注意が必要」とも考えており、不介入主義とは一線を画しています。
味わいの方向性としては同地域のトリンバックやヒューゲルと似ているかもしれませんが、14haの決して大きくない畑で大手生産者と同等のコストパフォーマンスを実現しているのは称賛に値します。
Domaine Zinck Riesling Terroir Wasserfal