《モーゼルの辛口リースリングの魅力》
高級なリースリングがつくられるのは、粘板岩土壌の冷涼産地。ドイツのモーゼル地方、ラインガウ地方、ミッテルライン地方、ナーエ地方の一部などです。
その中で一番手ごろな価格帯から選択肢があるのが、モーゼル地方です。このワインのように、2000円前後からもいろいろ選べます。単純に他の産地に比べて面積が大きいので、ラインナップの幅が広いんです。
味わいは辛口から甘口、極甘口までいろいろ。どれも上質なものがありますが、もし食事と一緒にワインを飲むのが習慣であるなら、まずは辛口からでしょう。
ただし高級な辛口リースリングは、時に飲み手を拒絶するような雰囲気を持つものがあります。高い酸味とミネラル感が原因です。熟成すればそれが美味しさのもとになるのですが、待てない。
その点でこの「リースリング・インクライン」は、モーゼルらしい上品さがありながら、何も考えずに飲める気軽な雰囲気も併せ持ちます。柑橘や白桃などの控えめで上品な香り。凝縮感はそれほど高くなく軽やか。ほんの少しは甘味があるのでしょうが、集中しないと感じ取れないほどです。上品な酸味はありますが、この地方としては抑え気味で、厳しさは感じさせません。
《生産者について》
ゼルバッハ家は1600年代からこの地区でワインづくりを行う名門生産者。「ゼルバッハ・オスター」という名義で自社畑からつくるワインをリリースしています。一方で「J&H ゼルバッハ」はブドウやワインを買い付けて瓶詰し販売する、いわばネゴシアンとしての業態。本家よりもより低価格に普段飲みのワインとして心地いいものを提供しています。
J&H Selbach Riesling Incline