頑張るばかりは続かない。大人には心の疲労回復につとめるリラックスタイムが必要です。
ゆっくりとワイングラスを傾ける時間は、日ごろのストレスを忘れることができるのでは。
時間をかけて楽しむなら、ワインだけで楽しめるものだとより嬉しいでしょう。
日々の緊張を解きほぐすような、リラックスタイムにぴったりのワインをご紹介します。
料理と合わせるべきワインとそれだけで楽しむワイン
冒頭で「ワインだけで楽しめるもの」と述べましたが、本来はどんなワインでもそれ単独で楽しめます。
身も蓋もない言い方をすれば、その1本のワインはそれにお金を払った人のものなのですから、好きに飲めばいいんです。
でも試飲していくなかでやっぱり、「あ、これは料理と一緒に飲みたいな」「レストランで出てきてほしいいな。」逆に「これはワインだけで楽しんだ方が良さそうだな」というものがあります。
料理に合わせるべきワイン
「料理とあわせたときこそこのワインは魅力が発揮されるな」というワインには、次のような特徴があります。
- 果実味、酸味、特定の香りといったものが突出していない
- リッチで重たい味わいではなく、スマートで適度な酸味のあるものが多い
- 飲んで「美味しい」と感じるが、何が美味しいのか言葉にしづらい
- その美味しさに対して値ごろ感がある
- 品種や産地がマイナーである
- そのワインだけで飲み続けるには、少し物足りなさがある場合が多い
裏を返せば、ワインショップなどの小売で売りにくいワイン。
もちろん特定の料理、ないし幅広い料理と相性がいいことは最低条件ですが、それ以上にレストランじゃないと売るのが難しいワイン、という意味も込められています
こういったワインはぜひダイニングテーブルで楽しんでください。
毎日の夕食といっしょに楽しむ晩酌が、よりワクワクするものとなるでしょう
それだけで楽しみたいワイン
先述の“料理と合わせたいワイン”の条件を一部裏返す形で、”単体で楽しみたいワイン”の条件を考えてみましょう。
その条件は次の通り。
- 物足りなさのないリッチな味わい
- 食べ物が欲しくならないこなれた渋味
- 派手さのあるボリューム豊かな香り
- 有名なブドウ品種
有名なブドウ品種である必要は特にないのですが、ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンをはじめとした国際品種は、ボリューム豊かで特徴のある香りを持ちます。
マイナー品種の中にそういった香りを持つものもあるのですが、有名ブドウから探した方が手っ取り早いのは確かです。
豊富なタンニンを含む若いワインは、時に渋味が荒々しく、それだけで飲み続けるのが疲れてしまうものもあります。
それを和らげるためには、一つは熟成させることですが、そんなの待ってられません。
しっかり樽熟成させることは、ある程度熟成の代わりになります。特に新樽を使った熟成をしたものは、樽を通した酸素接触をするので、若いうちからしっとりなめらかな口当たりのものもあります。(新樽100%熟成でもガシガシタンニンというものもあるので、これだけを判断材料にはできません)
同時に樽熟成は、リッチな風味に繋がります。
樽香をきかせすぎると料理との相性を損なう場合もありますが、単独で飲むならデメリットになりません。
これにさらに、飲み飽きしない風味の複雑さや変化があると言うことなしでしょう。
白ワインより赤ワインが有利
リラックスタイムにワインを楽しむなら、楽な姿勢でくつろげる場所でのんびり楽しみたいはず。
ダイニングテーブルよりもソファーや座椅子などでしょう。
そこに座ったら立ち上がりたくない!
つまりはワインボトルはあなたのそばに置きっぱなしです。
よって飲み頃温度がより室温に近い、赤ワインの方が有利。白ワインだとぬるくなって味わいのバランスが崩れるものが多いからです。
とはいえリッチな白ワインの中には15℃くらいの高めの温度でも悪くないものもります。
下記のスリーブ型ワインクーラーを用いれば、2時間くらいなら十分楽しめるでしょう。
ただし赤ワインでもアルコールが15%を超えるようなものは、温度が上がってアルコール臭さが目立つことがあるので、外した方が無難でしょう。
価格帯別 リラックスタイムに楽しみたいワイン
それだけで飲んで満足なリラックスできるワインの条件。
- 香りにボリュームがある
- 風味の複雑さや時間変化
- 樽熟成の風味強めでリッチ
- 温度が上がっていっても不味くならない
上記のような条件を満たすワインを、2000円台、3000円台、4000円台で選んでみました。
ワインだけで楽しむ分、ごまかしが効きません。1000円台では2000円台との違いをどうしても感じてしまうかと外しております。
ダイニング、そののちリビングへ
香りがなかなかのボリュームがあり、ユーカリや紫色の花、高級な家具の香り。あまり甘いベリー感はありません。熟した果実感に反して酸味はしっかり高く、タンニンはしっかり滑らか。
食事の肉料理に合わせて1杯。時間がたってタンニンがまろやかになってきたところでソファーに移動して残りを楽しむ流れがしっくりきます。
香りのボリュームと樽感が良き♪
ポール・クルーバーのエステートレンジは、果実感に対してやや樽感は強め。料理を選べば合わないわけでは決してないのですが、合わない食材があるものも事実。
無理に合わせるより、ソファータイムに価格に見合わぬボリュームある香りを楽しんだ方が、このワインの魅力を最大限引き出せるでしょう。
温度高めこそピッタリな味わいの厚み
複雑な風味を出しやすい天然酵母を使った発酵で、かつ新樽を30%使った発酵。
このブランドはカベルネ・ソーヴィニヨンもつくっていますが、厚みのあるなめらかな口当たりが特徴です。それもあってか、酸味は控えめ。ワシントン州のワインなのでカリフォルニアより寒いイメージがあるかもしれませんが、味わいからは涼しさはあまり感じません。
温度がだんだん上がっていく風味の変化を楽しむなら、これくらいがちょうどいい。ワインだけでも満足感のあるワインです。
飲み頃に入ったグレートヴィンテージ
2015年のボルドー、というよりフランスは猛烈に暑い年でした。日差しが強いとブドウは果皮を厚くして自身を守ろうとします。
豊富なタンニンを含むのでリリース仕立てのワインは渋味がきついものも多い年でした。それが数年の熟成を経て、手頃なクラスから飲み頃を迎えています。抜栓してから香りがダイナミックに変わっていくことでしょう。
ほのかな熟成香は温度高めで
収獲から7年。まだ果実感もしっかり残ってはいますが、ほのかに熟成感も出始めました。
暑かった2015年ヴィンテージ。果実感はもともと非常に凝縮しておりリッチです。熟成の香りをより楽しむためには、普通の赤ワインよりも少し高めの温度がベター。18℃くらいが目安ですが、15℃で飲み始めて自然と上がってくるのを待つのがいいでしょう。
白ワインだけど冷たいのNG!
リースリングはよく冷やして飲むキリっとしたワイン。そんなイメージがありますが、熟成したこちらのリースリングはむしろ冷やしすぎ厳禁。
15℃くらいの高い温度の方が、熟成による豊かな香りとねっとりとした口当たりが楽しめます。
辛口リースリングは熟成すると、ボディゆたかに口当たりオイリーに。簡単に言うと濃くなります。若いもののキュッ・キリッとはまた違った魅力があります。
ハマると抜け出せない"薄旨系"
リッチな風味のワインは満足度は高いものの、それだけで飲み続けるには、人によってはその濃厚さに飲み疲れするかも。
その点、抽出が淡い、いわゆる"薄旨"なピノ・ノワールは最高。軽やかな口当たりで疲れません。
ただし、ブドウの力が弱いピノ・ノワールを淡く抽出すれば、シャバシャバの酸っぱいワインになるだけです。色が薄いにも関わらす、香りが広がり余韻が長く続くためには、ひたすらにブドウのポテンシャルが必要。
だからちょっと高いんですが、これは3000円では表現でいない味のバランスです。
ナパ・ヴァレーの白はやっぱりリッチ!
赤ワインだけ、白ワインだけをつくる生産者って、実はあまり多くありません。とくにニューワールドには。
おそらくその理由は効率。
例えばナパ・ヴァレーはカベルネ・ソーヴィニヨンの聖地ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンは収穫が遅い。同じ設備を使ってカベルネの醸造が始める前に、収穫の早い白ブドウを醸造すれば、設備をより効率的に稼働できるのです。
という訳でナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの有名生産者は、ソーヴィニヨン・ブランも作っている例が多い。そしてカベルネよりずっと安い!ホーニッグもその一つです。
ニュージーランドのフレッシュなソーヴィニヨン・ブランとは全く別物。高級ボルドーのようなオーク樽を効かせてリッチな風味が広がるスタイルに仕上がっています。
お酒弱めな方は甘口をゆっくりと
「ワインだけで飲んでると、すぐに酔いが回っちゃって眠たくなっちゃうんだ」
そんな方は極甘口のデザートワインをチビチビやってはいかがでしょう。
デザートワインの多くは通常のワインよりもアルコールが低いだけでなく、自然と口に含む量も少なめになります。横に水を置いて適宜給水しながら飲めば、そう悪酔いすることはないでしょう。
忙しない日常にワインでリラックスタイムを
効率・合理性・スピード・・・現代社会で必要とされるこういった要素に、ワインはあまりそぐわない飲み物だと私は考えます。
だって考えてもみてください。ほとんどが水とアルコールである液体を重たいガラス瓶につめて、温度管理しながら地球の裏側に運んで消費しているんです。とっても非効率!軽くて丈夫な缶ならいいのに。現地の材料を使って消費地に工場を建てられたらいいのに。
そうはいかないのがワインなんです。
だからこそ、忙しない日常から切り離す時間を彩ることができる。
何を生み出すでもない、身体的に健康になるわけでも何かのスキルが身につくでもないその時間。
ワインと向きあうことで、時の流れに小休止ができる。
それはきっと、明日、また明日と頑張る日常のために必要な息抜きではないでしょうか。
特にソムリエ経験の長いプロは、ワインを飲むたびに「このワインにはどんな料理が合うんだろう?」と考えてしまいがち。でも実際おうちでは食事タイムとお酒タイムを分けておられる方も多いでしょう。 ごはんと一緒に飲むワインとの違いを意識すると、よりリラックスタイムを楽しめることでしょう。 |
特にソムリエ経験の長いプロは、ワインを飲むたびに「このワインにはどんな料理が合うんだろう?」と考えてしまいがち。でも実際おうちでは食事タイムとお酒タイムを分けておられる方も多いでしょう。 ごはんと一緒に飲むワインとの違いを意識すると、よりリラックスタイムを楽しめることでしょう。 |