《キレイ系グルナッシュ》
グルナッシュはフランスのローヌ地方南部で広く栽培されているブドウ品種。白変異種(グルナッシュ・ブラン)やグリ変異(グルナッシュ・グリ)もありますが、「グルナッシュ」といえばグルナッシュ・ノワール、黒ブドウです。
ローヌの低価格帯では、リーズナブルなのに果実味豊かで飲みごたえがあるのが魅力。しかし決して安ブドウではなく、「シャトーヌフ・デュ・パプ」などの高級品も生み出します。
赤や黒のベリー、スミレの花のような風味とブドウ糖度が上がりやすいのが特徴で、アルコール15%を超えるパワフルなワインも珍しくありません。濃密で力強いスタイルは、スペインのプリオラートや南オーストラリア州などでも同じです。
南アフリカでもそのようなパワフルなグルナッシュもつくられていますが、全く違ったタイプが近年人気です。
早摘みによりアルコール度数を抑え、抽出を淡くしてタンニンをあまり抽出せずに仕上げる赤ワイン。ときに「薄旨系」と呼ばれるキレイ系グルナッシュです。
このスタイルにするにはブドウの質が高くないと、単に「薄っぺらいワイン」になっちゃうのでしょう。主につくられるのは、非常に高い樹齢のグルナッシュの畑があるスワートランドです。
いいブドウを使うのでどれも安くありません。日本で3000円ほどのものは見かけず、5000円スタートです。ハッキリ言って高い。しかしこの上品さと透明感、口当たりのなめらかさの共存は、ピノ・ノワールだとしたら5000円じゃとてもききません。
《生産者について》
女性醸造家モレリース・ニューマン氏が2011年に始めたブランドが「モメント・ワインズ」。彼女は「アナイスボス」というワイナリーで醸造長を務めながら、兼業で間借りしてこのワインをつくっています。だからまだまだ規模は小さいですが、だからこそ本当につくりたいものだけをつくっています。
《テイスティングノート》
ローズやザクロ、ダークチェリーのような繊細なアロマ。奥にココアのような香ばしくスモーキーな香りがあります。色合いは非常に淡く、それに比して口当たりも軽やかで素晴らしくシルキー。アルコール12.5%(2021VT)の上質な赤ワインは、グルナッシュに限らず近年なかなか見つからないはずです。風味の複雑さは申し分なく、一口飲めばこのワインが他だものじゃないことがわかります。
Moment Wines Grenache Noir