《日本ワインにも「テロワール」の概念を》
「畑が違えば土壌や細かな気候などの栽培条件が異なり、それがその土地固有の典型的な味わいとしてワインに表現される」
この考えがブルゴーニュワインのブランド価値を支えているものであり、高額なワインに多くの人が夢中になる理由の一つでしょう。
これだけ多様なワインが流通する日本市場で、一つの銘柄を飽きずに飲み続けてもらうのはなかなか難しいことです。だからこそ限定したテロワールによる希少価値の高いワインの生産に、多くの生産者が取り組み始めています。
マルスワインが近年リリースを始めたキュベシリーズもまさにそう。契約栽培農家の名前を表記したワインです。
ブルゴーニュの畑違いほど明確な風味の差は感じられないでしょう。それには歴史が足りません。代わりに素晴らしく手ごろです。
日本ワインの未来に期待しながら、キュベ違いを並べて飲み比べてみると面白いでしょう。
《このワインの特徴》
相山泰さんの畑は山梨県韮崎市穂坂地区にあります。山梨県のなかでも特に栽培条件に優れた地区で、日照や寒暖差に恵まれています。
この畑の特徴は、ワイン用ブドウの栽培で一般的な「垣根仕立て」で栽培を行っていること。日本の気候、それから生食用ブドウの栽培には、「棚仕立て」という栽培法が一般的には適しています。なのでマスカット・ベーリーAの栽培も棚が主流なのですが、風味の凝縮感を高める目的で垣根仕立てにチャレンジ。
結果として他のキュベより風味豊かに仕上がっています。
《生産者について》
鹿児島に本社を持つ焼酎メーカー本坊酒造が、洋酒生産に乗り出すために山梨県に1960年に設立したのが、マルス山梨ワイナリーです。
今や全国に400近くある日本のワイナリーの中で、比較的手ごろな価格で楽しめるのがマルスワインの魅力です。それは安定した生産量と財務基盤を持つため。
2017年にはマルス穂坂ワイナリーも設立し、たくさんの観光客を受け入れています。
Chateau Mars Muscat Bailey A Cuvee Aiyama Taira