品種のお話

品種のおはなし その7 スペインの代表品種 テンプラニーリョ

2020年1月12日

栽培面積は全品種中第4位
ワインの輸出量世界一のスペインにおける主力品種なのですから、当然日本の店頭にもたくさんのテンプラニーリョワインが並んでいます。
 
 
にもかかわらず「私はブドウの中でテンプラニーリョが好き」という方は、あまり周りにいないのでは?
それはそもそも、テンプラニーリョとはどんなブドウか、という話がされないからでしょう。
 
今回は飲んではいてもイマイチつかみきれない、テンプラニーリョの実態に迫ってみます。
 
 

テンプラニーリョ 概要

 
テンプラニーリョの歴史は古く、フェニキア人の時代から栽培されていたとされるので、約3000年前からスペインに存在したと考えられています。
少なくとも、2000年近く前の記載に「テンプラニーリョ」の名前が出てくるのだとか。
 
その名前は「Temprano早熟な」から来ており、他のブドウ品種に比べて成熟が早いのが特徴です。
 
 
以前の品種のおはなしでは、広く栽培されている国をランキングにしていました。
しかしテンプラニーリョにはそれが必要ありません。
 
総栽培面積約23万haのうち、実に約20万haがスペインで栽培されているからです。
残りのうち1.8万haはお隣のポルトガル。
つまりテンプラニーリョのほとんどは、イベリア半島産ということになります。
 
これだけ栽培面積が多くても、「地ブドウ」と言っていいのではないでしょうか。
 
地ブドウとそうでないものの違いは何かと言いますと、「ブドウ品種の味わいの特徴」が分かりにくいということです。
必ずスペインの気候・土壌・醸造技術や伝統の影響が乗っかってくるからです。
 
 
シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種はその点、特徴が分かりやすい。
フランスのものとイタリア、カリフォルニア、チリ、オーストリア、南アフリカ・・・様々な土壌・気候で育まれたものを比較する。
共通したものがあれば、それがその品種の特徴です。
 
 
しかし、テンプラニーリョはほぼスペインにしかない。
(ポルトガルではポートワインという酒精強化ワインの原料とされるので、赤ワインとしての比較は難しいのです)
 
実験的な量を生産している国もいくつかありますが、そのような量ではその土地の特徴なのか生産者の特徴なのかがわかりません。
 
 
つまりテンプラニーリョを理解するのに、そのブドウだけを見つめても仕方ない。
スパインワインの中で、テンプラニーリョはほかの品種とどう違うのか
それがポイントになります。
 
 
それを踏まえて私が考えるテンプラニーリョの特徴は、「味わいの力強さ」です。
 
 

テンプラニーリョの味わい

 
テンプラニーリョの特徴的な香りは、ベリー、プラム、タバコ、革、バニラ、ハーブなどと表現されます。
これには樽熟成由来の香りも含まれています。
 
スペインワインの熟成規定についてお話したとおり、スペインで長くオーク樽熟成したワインが上質とされます。
つまりスペインワイン、テンプラニーリョはオーク樽熟成させるのが当たり前であり、それを切り離して考える意味は薄いのです。
 
 
ただ、この風味の特徴はスペインの他の主要品種であるガルナッチャやモナストレルとも似通って感じます。
グラスに注がれたワインを、香りだけでこの3つの品種をかぎ分けるのは至難の業でしょう。
少なくとも私は全く自信がありまsん。
 
 
しかし注意深く飲み比べれば、違いは浮き彫りになってきます。
 
 
まずはガルナッチャとテンプラニーリョの違い
ガルナッチャのワインはタンニン・渋みがやや穏やかで、口全体に刺激が重たく広がるようなイメージ。
それに対してテンプラニーリョは、ぎゅっと締め付けられるような感じ。まさに収斂味です。
 
加えて果実味はガルナッチャの方が丸く全面に出ています。土の風味を感じることも多いでしょう。
 
一方でモナストレルも、しっかりとしたタンニンを持ちます。
渋さの質でいえばよりテンプラニーリョに近いでしょう。
 
モナストレルとテンプラニーリョの違いは味わいの広がり方
モナストレルは口に含んですぐ、ガンと口蓋まで濃い味わいが広がります。
そのあとは味の強さがすっと消えていく。ずっしりとした重量感をあまり感じません。
 
その重量感を舌の上でしっかり主張するのがテンプラニーリョ。
口全体を覆う果実とタンニンが、長く緩やかに消える。
味わいの濃さが長続きする、と言いましょうか。
 
そういったことをすべて含めて、「味わいの力強さ」と表現しました。
 
 
加えてテンプラニーリョは、酸味をしっかりと持ち、長期間の熟成が可能です。
 
これはテンプラニーリョの主要産地が内陸部、標高の高い山岳部であるから。
準大陸性気候で、夏は暑くなり最高気温は高くとも、夜は冷え込む寒暖の差。
それが温暖な産地にも関わらず、豊かな酸味を蓄えることを可能にしています。
 
 
スペインで熟成に用いられるのは、主にアメリカンオークです。
アメリカンオークの特徴はよりバニラ香が付きやすく、甘い風味のシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンができます。
 
しかし、テンプラニーリョにおいては甘い風味はかなり抑えめです。
むしろ上質なテンプラニーリョは、ボルドーの上級ワインのような厳格な香りに感じます。
 
これが「力強さ」といってもナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどとは大きくことなるところです。
また、タンニンが強いと言ってもイタリアのバローロとも大きく異なります。ボディ感はテンプラニーリョが圧倒的なのです。
 
 
1000円台くらいの廉価なテンプラニーリョは、その凝縮感の低さから、さっぱり飲める気安さ、親しみやすさもあります。
しかしテンプラニーリョの本質は飲みやすさでは決してないと考えます。
 
5000円以上のテンプラニーリョが感じさせるスケール感。
特に熟成させた飲み頃のテンプラニーリョは、圧倒されるような風味と奥深さを持ちます。
カベルネ・ソーヴィニヨンに負けない、偉大なワインを生み出すポテンシャルがあると考えます。
 
 
以上はあくまで私片山の経験に基づく考えである点にご留意ください。
スペインワインに精通している方々から、「見当違いだ」「そんな単純なものではない」とお叱りを受けないかヒヤヒヤしています。
 
 

テンプラニーリョは名前がいっぱい!

 
原産地呼称保護の対象でない廉価なワインを除いて、「Tempranillo」などの品種名が記載されることは稀です。
 
それもあってでしょうか、テンプラニーリョは非常に多くのシノニム、つまりブドウ品種の別名を持っています。
 
まずは地中海地方、ペネデス州では「ウル・デ・リュブレ Ull de Llebre」。
 
特に良質なテンプラニーリョを算出する内陸部地方カスティーリャ・イ・レオン州のトロでは、「ティンタ・デ・トロTinta de Toro
同州のアルランサでは「ティンタ・デル・パイスTinta del Pais」。
さらにリベラ・デル・デュエロでは「ティンタ・フィノTinta Fino
 
同じ内陸部地方のカスティーリャ・ラ・マンチャ州ラ・マンチャでは「センシベルCencibel
マドリッド州では「ティンタ・デ・マドリッドTinta de Madrid
 
そのほか検索したところ、こんなにもたくさんのシノニムが見つかりました。
 
* アリント・ティント
* アルビーリョ・ネグロ(Albillo Negro)
* アルデペーニャス(aldepeñas)
* アラゴネス(Aragonez)
* エスコベラ
* オホ・デ・リェブレ(Ojo de Llebre)
* クパニ(Cupani)
* グレナッチェ・デ・ログローニョ
* チンチリャーノ
* ティンタ・モンテイロ
* ティンタ・ロリス(Tinta Roriz)
* デ・ポル・アカ
* ネグレット(Négrette)
* ハシビエラ
* ピヌエラ
* フアン・ガルシア
 
(※ワインのサイトhttp://wine-effect.com/index.htmlを参考にしました)
 
これらのシノニムは、これからソムリエ、ワインエキスパートの資格を取ろうと勉強中の方以外は覚える必要はないでしょう。
ワインのエチケットにほぼ書いていないからです。
 
ですがただシノニムを羅列するだけでは芸がないので、どうしてそれほどシノニムが存在するのか、推測してみましょう。
 
 
上記のシノニムで目にする「Tinta de ~」の文字。「Tinta」はスペイン語で「染まった」や「インク」という意味ですが、「Vino Tinto」となると「赤ワイン」という意味になります。
つまり「ティンタ・デ・トロ」とは「トロの赤ワイン用ブドウ」という意味。
 
「なんて大雑把な名称」と思われるかもしれませんが、そうではないのかも。
トロで赤ワイン用のブドウといえばコレ、というほど一般的であり、長らく大切にされてきた証ではないでしょうか。
これだけたくさんあるテンプラニーリョの別名に、スペインのワイン生産者がテンプラニーリョにかけてきた思いが詰まっているように感じます。
 
 

テンプラニーリョの楽しみ方

 

〇高価格帯のテンプラニーリョ(¥5,000~)

【牛肉のステーキ もしくはワイン単体で】
赤ワインに肉といえばド定番ですが、やはりよく合います。
テンプラニーリョはしっかりとしたしなやかなタンニンを持っていますので、それに合わせるようにしっかり噛み応えのある赤身肉を。
サーロインやヒレのような柔らかい部位よりも、肉の味をしっかり感じる方がワインの風味と面白い絡みをするでしょう。
 

Photo by Simona Todorova on Unsplash

 
とはいえステーキなんてそうそう用意できないもの。
家庭で楽しむなら、むしろ何も合わせないのがいいかも。
 
凝縮感のあり渋味のしっかりとしたテンプラニーリョは、日持ちします。
2,3日は余裕で楽しめますし、むしろ渋味がまろやかになるでしょう。
 
食後に1,2杯だけを、テレビを見ながら読書をしながら楽しむ。
2,3日に分けて味わいの変化を楽しむといいでしょう。
 
味わいが濃いので、変に夕食と合わせようとすると、料理の味を圧倒してしまう恐れがあるのです。
 
 
 

〇中価格帯のテンプラニーリョ(¥2,000~¥5,000)

【ハモンセラーノ/ハモンイベリコ】
スペイン特産の生ハム、ハモンセラーノとハモンイベリコの魅力は肉の風味の強さ。
タンニンとともに酸味もしっかりとしたテンプラニーリョに、スペインの生ハムはベストマッチです。
 
生ハムとしてはイタリアのプロシュート・ディ・パルマも有名です。
価格も半分くらいで、手に入れやすい。
しかしどちらかというと脂の甘さが強調されるプロシュートは、おしいんですがやはりベストではない。
 
スーパーで売っている原産地呼称のない安い生ハムはあまりおすすめしません。
肉の風味の弱さをごまかすためにいろいろな調味料を使っていたり、ただ塩辛いだけだったり。
 
とはいえハモンセラーノの原木を買うのは現実的ではない。
小ぶりなものだと1万円台半ばで購入できます。別途ハムを固定する台と専用のナイフも用意すれば、最初はとってもテンション上がるでしょう。
 
 
全然なくなりません。すぐに飽きます。
パーティー開けどもなかなか減りません。
そもそも生ハムなんてたくさん食べるものじゃないので、ちょっとで十分。
 
デパ地下などの専門店で小さなパックを購入されるのをおすすめします。
 
 
 
 

〇低価格帯のテンプラニーリョ(~¥2,000)

この価格帯だとテンプラニーリョとはいえ、強いタンニンをもつものは稀です。
価格を抑えるために収量制限をあまりしていませんので、凝縮感も高くありません。
それでも同価格帯の他国に比べると、濃い傾向にはありますが。
 
低価格帯のワインを作るなら、大量に作って売らないと儲かりません。
なので強いタンニンをもった通好みの味に仕上げることはあまりないのです。
 
巷のスペインバルでグラスワインとして提供されるのは、通常この価格帯。
それも関係するのかしないのか、スペインの名物料理「アヒージョ」によく合うと感じます。
名物料理と言っても、高級レストランの料理ではなく、カジュアルなバルのタパス(小皿)料理であるアヒージョ。
 
「マリアージュ」と言えるほどピッタリ合うわけではありません。
ただ、ニンニクのきいたオリーブオイルの感触と、程よい渋みの赤ワインが、自然と寄り添うのです。
具材はあまり選びませんが、マッシュルームのアヒージョやせせり、砂ずりのアヒージョなどがおすすめです。
 
 
アヒージョは専用の平たい陶器の器で作るものなのですが、スキレットや100均の小さな土鍋でも代用できます。
グツグツいうシズル感とニンニクの香ばしい香りで、ホームパーティーで出せば盛り上がること間違いなし。
作るのは簡単なので試してみてはいかがでしょう。ただし、飛び散った油の掃除は大変です。
 
 
 
 
 
スペインを代表するブドウであるテンプラニーリョは、凝縮感と力強さをもったスケール感のあるワイン。
「まだあんまり飲んだことないなぁ」という方や、「飲んだはずだけど、その濃さしか気にしてなかったな」という方は、改めてその特徴を意識して飲みなおしてみてはいかがでしょう。
濃いワインを飲みたくなる、この冬の季節はピッタリです。
 

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