ワインのできるところ

あなたは飲んだことありますか?ちょっとマイナーな生産国特集

2021年6月30日

 
あなたはどこの国のワインが好きですか?
いつもの生産地でもしもマンネリを感じているなら、ぜひちょっとマイナーな生産国も試してみましょう。
普段の家飲みに適した価格で、個性的なワインを楽しむことができます。
SNSで写真を投稿すれば、「こんなとこでもワインをつくってたんだ!」となるかも?
 

国別ワイン生産量

 
ワインの生産国といえば、どこを思い浮かべますか?
フランス?イタリア?スペイン?
実はこの3か国で、世界の約50%を生産しています。
 
国ごとのブドウ畑の面積やワイン生産量は、OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)が統計をとっています。
2021年7月現在では、2020年の生産量の概数値が最新のデータです。
それに基づいたワイン生産量ラインキングを記載します。
 
 

メジャーなワイン生産国 生産量TOP10

 
生産量の多い順番に10か国挙げると次の通り。
中国を除けば、どの国もワインショップのみならずスーパーや量販店で見かけることでしょう。
 
ワイン生産量 2020年
(単位は100万hL)
1位 イタリア 47.2
2位 フランス 43.9
3位 スペイン 37.5
4位 アメリカ 24.7
5位 アルゼンチン 10.8
6位 オーストラリア 10.6
7位 南アフリカ 10.4
8位 チリ 10.3
9位 ドイツ 8.9
10位 中国 8.3(こちらのみ2018年)
 
 

ちょっとマイナーな生産国 生産量TOP11-20

 
生産量において11~20位となると、値としてはずいぶん小さくなります。今回はこれらの国を「ちょっとマイナーな生産国」と定義します。
ヴィンテージによって順位は大きく入れ替わりますのでご承知ください。
 
11位 ポルトガル 6.5
12位 ロシア 4.7
13位 ルーマニア 3.6
14位 ニュージーランド 3.3
15位 ハンガリー 2.9
16位 オーストリア 2.7
17位 ブラジル 2.2
18位 ギリシャ 2.0
19位 ジョージア 1.7
20位 モルドバ 1.2
赤字で表記した国のワインを今回ご紹介します。
 
全世界合計254-262mhL
 
 

ちょっと珍しい産地のワイン

 
マイナーな生産国の中には、東ヨーロッパの国々も少なくありません。
こういった地域でワインを選ぶなら、ブドウ品種によって2通りの選び方があります。
 
 
フランス系の有名なブドウ、「国際品種」のワインにするのか。
その土地に根差した、聞いたこともないブドウ、「土着品種」を試してみるのか。
 
 

マイナー産地の「国際品種」

 
「国際品種」はいわばその国の初心者向けです。
生産者は自分たちの国が輸入ワイン市場では知名度が高くないことを認識しています。
だからこそ、普段慣れ親しんだブドウ品種でワインをつくり、初めて手に取る人にとっても味の想像がしやすいように
土着品種と国際品種、両方を作っている生産者なら、国際品種でまずワイナリーの名前を知ってもらって土着品種も試してもらえるように、という狙いです。
 
なのでマイナー産地でも国際品種ではそうハズレを引くことはありません
これには売る側の事情も影響しています。
 
 

輸入元のバイヤーとして

 
もし自分が輸入元のバイヤーだったとして、まだ取り扱っていなかったちょっとマイナーな生産国からワインを仕入れるとなったら、こう考えます。
 
KATAYAMA
そのとちに根差した土着品種のワインもぜひ紹介したい。しかし手に取ってもらいやすいのは国際品種だから、両方ラインナップしよう。
その方が輸送コンテナのロットも組みやすくなる。 国際品種が手に取りやすいとはいえ、ボルドーやブルゴーニュの5000円と、マイナーな生産国の5000円は全く違う。2000円以下くらいの低価格帯のもので販売本数を稼ごう。
まずはメジャーな国の人気なワインに近いスタイルで、価格優位性が示せるようなものにしよう。
 
私がバイヤー経験があるわけではないのであくまで推測ですが、そう外れてはいないと思います。
 
 
そして国際品種を比較的低価格で生産できるワイナリーは、多くがスケールメリットを享受できる大規模ワイナリー
そういうところは最新の設備を備え、国際的なワインコンサルタントを招聘したり、ワインメーカーがメジャーな国で修業経験のある人だったりします。
つまり、我々が普段口にするワインの味も、そのつくり方も熟知しているのです。
 
だからこそ、「そう外れない」と言えるのです。
 
一方で
せっかく珍しい国のワインを飲むのなら、変わった味わいを楽しみたい。口に合わないかもしれないのは、仕方のないリスクだ。
 
という探究心豊かな方もいるでしょう。
そんな方にとっては、万人受けしそうなスタイルのちょっとだけ安い国際品種のワインは、物足りないかもしれません。
 
 

マイナー生産国の「土着品種」

 
世界には商業的に栽培されているブドウ品種は1500種類程度あると言われます。
そのうちのせいぜい10種類程度が国際品種。他は概ねその主要国でしか栽培されない、土着品種なのです。
なので「土着品種の味わいは・・・」なんて到底括れるものではありません。
 
 
だからこそ面白い。
数百年、数千年という栽培歴史のなかで、どうしてその品種・そのスタイルが伝統となったのか
その土地の環境と、その品種の栽培特性がマッチしたから。
その土地の郷土料理、食文化や味覚と、その品種の味わいが相性がいいから。
なにかしらの理由があるはずです。
 
伝統の土着品種からつくられるワインには、その土地の文化と歴史が詰まっていると言えるでしょう。
ワイン1本飲んで理解できるとは申しませんが、そう考えるならば聞いたことのない品種を試してみる心理的ハードルは下がるはずです。
 
 

COCOSおすすめ ちょっとマイナーな生産国のワイン8選

 
生産量でTOP11-20の生産国のうち、当店で取り扱いのあるもの8か国8本のワインをピックアップしてみました。
 
 

ポルトガル

 
ポルトガルは長年の鎖国政策の影響で、現在に至るまで国際品種がほとんど見られない国です。
しかも白ワインも赤ワインもブレンドすることが多いため、品種でワインを選ぶ人にとってはとっつきにくい国であることは否めません。
 
その中で最初の1本としてポルトガルを試すなら、「ヴィーニョ・ヴェルデ」がおすすめです。
 
 
「ヴィーニョ・ヴェルデ」を直訳すると「緑のワイン」。海洋性気候で雨が多く、ブドウの完熟が難しくて緑がかった色合いのワインが多くつくられたことが所以です。
今は栽培技術も上がり完熟は十分可能になりましたが、すっきりさわやかでアルコール低めなスタイルは継承されています。
 
 

ルーマニア

 
ルーマニアは黒海に面した東ヨーロッパの国。
国際品種の栽培も盛んで、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、リースリングなども多く栽培されています。
そのルーマニアにおいて「値ごろ感のあるピノ・ノワール」として人気なのがこちら。
 

ラ ヴィ ピノ ノワール 2018 ドメーニレ サハティーニ

 
いわゆる「薄旨系」の味わいを目指しており、カリフォルニアのピノ・ノワールが好きな方にはきっと不評でしょう。
しかし数年前に「リアルワインガイド 旨安大賞」で表紙を飾った知名度はなかなかのもので、今もよく売れています。
 
 

ニュージーランド

 
ニュージーランドがこの順位にいるのは、意外なのではないでしょうか。
それほど、日本のワイン市場での存在感は小さくないです。
オセアニアと日本で、船の輸送がしやすいのはあるでしょう。
しかしそれより、純粋にニュージーランドに美味しいワインが多く、よく売れるからたくさん輸入されているという理由が大きいでしょう。
ワインづくりの歴史が長くないニュージーランドは、国際品種に特化した国ですので、手に取りやすいという理由もあるはずです。
 
 

マヒ マールボロ ピノ ノワール 2018

 
マールボロはニュージーランドの南島、その北端に位置します。ニュージーランド産ワインの7割以上は、このマールボロで作られている最重要産地。ソーヴィニヨン・ブランが最も多く、世界中で人気です。
赤ワインで最も多いのがピノ・ノワール。ブルゴーニュほどの酸味の強さはありませんが、カリフォルニアやチリほどがっちり筋肉質でもない。イチゴやチェリーのような、軽やかで鮮やかな果実味を持つワインが典型的な特徴です。
 
 

ハンガリー

 
様々な土着品種を栽培する一方で、シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種の栽培も少なくない国です。
例えば黒ブドウの「ケークフランコシュ」は、オーストリアなどでメジャーな「ブラウフレンキッシュ」と同じ。このように東ヨーロッパには別名だが実は同じブドウというのは少なくありません。
とはいえ最も重要なブドウは「フルミント」でしょう。
 
 

オーストリア

 
オーストリアはドイツと国境を接し、同じドイツ語圏であるため混同されがち。ワイン法の用語も共通項が見られます。
しかしその実気候は温和であり、冷涼なドイツとは違うところも多くあります。
白ブドウならグリューナー・フェルトリーナー、そして黒ブドウならブラウフレンキッシュとこのツヴァイゲルトが有名です。
 
 

ゲゼルマン ツヴァイゲルト 2018

 
余談ですが、実は北海道で2番目に多く栽培される黒ブドウでもあります。
ワインの色合いが少し青みがかったようなものも多く、紫色のフルーツを思わせる香りを感じます。酸は高いものが多いのですが、ピノ・ノワールの酸味とはわりと方向性が違います。心なしか梅っぽい酸味に感じます。
 
 

ギリシャ

 
近頃話題に上ることの多いギリシャワイン。
ローマ帝国がワインづくりをヨーロッパ中に広めるよりさらに昔から、ワインをつくり飲む文化のあった国です。
白ブドウのアシルティコや、黒ブドウのクシノマグロが有名ですが、今回はあえて「マラグジア」というギリシャ固有のブドウをご紹介します。
 

ミロナス ワイナリー マラグジア 2019

 
乾燥に強い早熟のアロマティック品種で、バジル、ライム、オレンジ、バラの花びらのような香りを持つことが多いそうです。よく熟してから収穫するミロナス・ワイナリーのものは、桃やアプリコットのような香りも感じます。
一つ目のウサギのエチケットが印象的で、SNS映えもいいかも!
 
 

ジョージア

 
ジョージアは近年、白ブドウを赤ワインのように果皮とともに発酵させた「オレンジワイン」で話題になり、輸入量も増えつつあります。
それゆえ「ジョージア = オレンジワイン」みたいなイメージがありますが、実際は黒ブドウも多く栽培されており、その筆頭として挙げられるのがこの「サペラヴィ」。
 
 

サペラヴィ 2018 マカシヴィリ ワイン セラー

 
フルボディの力強いスタイルで、私はやや荒々しい野性味を感じます。
スパイスを効かせたり、少し臭みのある肉料理には、これくらいの方がマッチします。
 
 

モルドバ

 
ルーマニアとモルドバは国境を接しており、同じ国だった時期もあるだけあって、ブドウ品種に共通するものもいくつか見られます。
 

ラダチーニ フィオーリ フェテアスカ ネアグラ 2017

 
「黒き乙女」を意味するフェテアスカ・ネアグラもそのひとつ。オーストリアのブラウフレンキッシュとも似た雰囲気があり、端正なベリー系の果実味がある、意外と親しみやすい赤ワインです。
 
西ヨーロッパに比べて海の影響の少ない東ヨーロッパは、冬の寒さが厳しい国が多くあります。
ブドウの樹は休眠中の冬でも、あまりにも寒いと枯死してしまいます。フェテアスカ・ネアグラの耐寒性は、そういった国々での栽培にてきしていたのでしょう。
 
 

あまり出回らないマイナー生産国のワイン

 
ちょっとマイナーな生産国のワインは、飲もうと思ってもなかなか小さなワインショップやワイン売り場では扱っていません。
 
TOP11-20を合計した生産量は35.8mhL。第3位のスペイン1国にすら満たない量です。
世界の12.3%にすぎず、グラフにするなら「その他」とまとめられても仕方のない量です。
 
生産量が少ないゆえに、ワインがほとんど国内で消費され、輸出に回ることが少ない国も多くあります。
21位のスイスなどはまさにその典型。国内市場が十分あり、経済的に強いので人件費が高く、価格競争力を持たない。故にほとんどが国内消費され、輸出は数%のみです。
 
 
だからといって美味しいワインがない理由にはなりません
むしろ一般受けを捨てるかわりに、あなたの好みにドンピシャでハマるワインが、ひょっとしたら見つかるかも。
土着品種のワインは粗削りのものが多い故、あなたにとってのハズレに出会う可能性はありますが、大当たりに出会う可能性も捨てきれません。
 
今回ご紹介したちょっとマイナーな生産国のワインは、基本的に自宅で普段飲める価格です。
SNSに載せたなら、「ワイン作ってるのも知らなかった国のワインを飲んでいるワイン通」アピールができることでしょう。





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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