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用語解説 ドサージュとは? シャンパン・スパークリングワインの甘辛と選び方

2024年1月20日

【用語解説】ドサージュとは シャンパン&スパークリングワインの辛口・甘口表記を徹底解説 
 
「ドサージュ」という言葉の意味と程度を知れば、シャンパンやスパークリングワイン選びみ役立ちます。
それはスパークリングワインにおける製造工程の名称であり、仕上がりの糖度を意味する言葉だからです。
よく目にする「BRUT」などの表記は、ドサージュ量に基づいて味わいの辛口・甘口を表したものです。
ドサージュに基づく飲むシーンに応じたピッタリのスパークリングワイン選びをご紹介します。

 
 

スパークリングワインの醸造工程「ドサージュ」とは

 
「ドサージュ」という製造工程は、デゴルジュマン(澱引き)によって目減りした液量を補い、味わいの糖度調整をするためにリキュールを加えることを言います
もう少しイメージしやすくするため、伝統的製法によるスパークリングワインのつくり方を簡単にご紹介します。
 

「dosage」の発音

「ドサージュ dosage」はフランス語で、これをカタカナに表すなら「ドザージュ」と濁るのが発音ルールとして正解だそうです。
しかし私の感じる限りでは「ドサージュ」と表記されていることが多いようです。より多くの方に検索からご覧いただきたいので、少なくとも当面は「ドサージュ」表記を続けるつもりです。

 
 

スパークリングワインの製法

 
スパークリングワインの製法は大きく分けて何種類かあります。中級以上のスパークリングワインの大半に使われる、「伝統的製法」や「瓶内2時発酵」と呼ばれる方法を簡単に図解すると次の通り。
 
 
各工程を詳しく知りたい方は次の記事をご参照ください。
 
 
伝統的製法以外のスパークリングワインについてはこちら
 

シャンパン以外のスパークリングワイン 製法とワインの違いとは

   

ワインに表記される糖度とは

ワインの甘味の強さは、1L中に含まれる糖分をグラム数で表されます。「〇g/L」と表記します。
一般に「辛口」と言われる白ワインは4g/L以下、赤ワインは2g/L以下です。
一般的な飲み物に例えると、アクエリアスで47g/L程度。微糖の缶コーヒーですら約20g/Lです。
スパークリングワインは糖分が加えられているといっても、他の飲み物と比べると少な目です。

 
 

「BRUT」だけじゃない甘辛表記一覧

 
スパークリングワインによく見かける「BRUT」の文字。
これはドサージュで調整された仕上がり糖度を表しており、残糖が0~12g/Lの範囲にあることを示します。12g/Lの上限値であっても炭酸がしっかり保たれている状態では「甘い」とは感じません。
 
残糖度とか細かいことがよくわからなくても「BRUTと書いてあれば辛口」と思っておけば問題ありません。
 
 

スパークリングワインの各国甘辛表記一覧

 
「BRUT」表記が一番多いスパークリングワインですが、実は他の表記もあります。「BRUT」は世界共通ですが、言語によって表記が違うものも。ドサージュ量に応じた甘辛表記は次の表のとおりです。
 
フランスの呼び名 イタリアの呼び名 ドイツの呼び名 スペインの呼び名 残糖度

Brut Nature

ブリュット・ナチュレ

Brut Nature

ブルット・ナトゥーレ

Brut Nature

ブリュット・ナトゥア

Naturherb

ナトゥアヘルプ

Brut Nature

ブルット・ナトゥーレ

3g/L未満 リキュール無添加

Extara Brut

エクストラ・ブリュット

Extara Brut

エクストラ・ブルット

Extara Brut

エクストラ・ブリュット

Extara Brut

エクストラ・ブルット

0~6g/L

Brut

ブリュット

Brut

ブルット

Brut

ブリュット

Brut

ブルット

0~12g/L

Extra Sec

エクストラ・ドライ

Extra Dry

エクストラ・ドライ

Extra Trocken

エクストラ・トロッケン

Extra Seco

エクストラ・セコ

12~17g/L

Sec

セック

Seccoセッコ、Dryドライ

Ascicuttoアシュット

Trocken

トロッケン

Seco

セコ

17~32g/l

Demi-Sec

ドゥミ・セック

Semi-Secco セミ・セッコ、

Abbocato アッボカート

Halbtrocken

ハルプトロッケン

Semi Seco

セミ・セコ

32~50g/l

Doux

ドゥ―

Dolce

ドルチェ

Mild

ミルト

Dolce

ドゥルセ

50g/l~
 
 
「BRUT」を基準に甘くなっていく方向には想像がつきやすいでしょう。
でも「BRUT」以下の糖度はどう違うのでしょうか?
 
 

ドサージュの量で辛口の味わいはどう変わる?

 
BRUTの0~12g/Lの範囲で、甘味は感じずとも口当たりのボリューム感は大きく変化しますドサージュが多いとボリューム豊かでリッチな味わいになり、ドサージュが少ないとスマートで引き締まった味わいになります。さらに酸味や風味とのバランスが加わり、全体的な味わいの印象を形作ります。
  
シャトー・ド・ロレはシュナン・ブラン100%でBRUTと「BRUT ZERO (EXTRA BRUT)」をつくっています。比較すれば違いが分かりやすいでしょう。
 
 
ブドウ由来の熟した甘い風味や、長い熟成による酵母由来の風味を持つならば、少ないドサージュでもバランスがとれるでしょう。
逆にブドウの力が弱いなら、少し多めのドサージュを加えた方が親しみやすく飲みごたえのある味わいに仕上がります
それゆえ1000円台の手頃なスパークリングワインはどちらかというとドサージュ量が多め。「BRUT NATURE」はめったにありません。
 
 

「BRUT]と「EXTRA BRUT」って違うの?

 
よくよく見ると、6g/L以下の糖度は可能な表示が重複しています
3g/L以下のスパークリングワインは、「BRUT」「EXTRA BRUT」「BRUT NATURE」3通りの表記ができることになります。これって意味があるのでしょうか?
 
まず「BRUT」の表記がもっとも広く認知されています。だから単に「辛口スパークリングワインですよ」ということを示すため、大衆向けのスパークリングワインにあえて「EXTRA BRUT」を使わないということはあるでしょう。
 
 
「ドサージュは少ない方がブドウ本来の味わいが表現される」生産者はそう考えるようです。ブドウ以外に加えるものを少なくしたいのでしょう。だからか自社畑のブドウから個性のあるシャンパンをつくりた小規模生産者の方が、「EXTRA BRUT」「BRUT NATURE」の極辛口をつくる傾向にあると感じます。
 
例えばドント・グルレのこのワインは、1.5g/Lの「EXTRA BRUT」表記です。
 
 
ドサージュ量はブドウの熟度によってヴィンテージで変えることもあります
年によって「EXTRA BRUT」「BRUT NATURE」の表記を変えれば、別の製品と消費者は捉えることがあるかもしれません。だから3g/L以下でつくる場合も「EXTRA BRUT」表記をする。ラインナップとしてそう判断することもあるはずです。
 
昨年は「BRUT NATURE」って書いてあったから、この「EXTRA BRUT」は新しいワインなのかな?
 
こういうややこしさが生じないようにです。
一方で「BRUT NATURE」は「リキュールを全く加えてない」ということを示す場合に使われるようです。
 
 

こんなシーンにはこのドサージュで

 
スパークリングワインの味わいはドサージュ量だけでは決まりません。ブドウ品種や産地、生産者のスタイルなどが影響するので、「私はEXTRA BRUTが好き」のようには決まらないのです。
でもドサージュ量による味わいの傾向はあるので、飲むシーンによってはドサージュの知識がワインを選ぶヒントになるでしょう。
 
 

「Extra Sec」以上が活躍するシーン

 
「Extra Sec」「Sec」「Demi-Sec」「Doux」などに属する、ハッキリと甘さを感じるスパークリングワイン。
これらはワインに不慣れな方の入口として、親しみやすく感じてもらえるはずです。だからいろいろな経験値の人が集まるパーティーの際に用意する1本としてピッタリでしょう。
 
 
ドサージュ表記はありませんが、手頃な甘口スパークリングワインとしては「アスティ」が手に入りやすいです。
 
 
「DEMI-SEC」表記のこのカヴァは、キンキンに冷やせばそれほど甘くなく、温度上昇とともにまろやかな味わいに変化します。
 
 
実はこの上の3000円、4000円台が空白ゾーンで、甘口スパークリングワインがほとんど流通していません。
 
 
もっと価格を上げれば、甘口のシャンパンがあります。こちらは「DEMI-SEC」。
 
 
チューハイなどの甘いカクテルが好きな方には受けがいいでしょう。
 
 

「EXTRA BRUT」と「BRUT NATURE」

 
ドサージュをかなり絞ったこの2つのスパークリングワイン。スマートで酸味際立つ味わいは、まず夏の暑い時期に飲む1本として最適です。ジメっとした気分をふっとばし、汗をかいた体に染み込むような味わいです。
 
 
 
沈んだ気持ちをシャキっとリセットしたいといきにもいいでしょう。それにはスッキリ飲めるだけじゃなくて、自然と笑顔にさせてくれるような複雑で芳醇な香りが必要です。
 
 
参考記事▼
 
もう一つの提案は「泡が抜けても楽しみやすい」という点です。
ドサージュ量が少なければ、炭酸が抜けて甘味がもったり感じる味になるということもありません。
ただし甘味さえなければスティルワインになっても美味しいわけではないので、もともと美味しいスパークリングワインであることが前提。
 
 
お酒に強くなかったり、家飲みが毎日でない方も、泡がなくなっても美味しいなら一人暮らしでも開けやすいでしょう
 
 

「BRUT」のうちドサージュ多めのもの

 
便宜的に9~12g/Lを「BRUTのうちドサージュ多め」とします。
このあたりが一番味わいの豪華さを感じやすく、一般受けします。だから7人前後かそれ以上のパーティーにおける乾杯の1本に最適
一口目から「あ!美味しい!」となり、グラス1杯で満足できるでしょう。
 
 
またこういうタイプは香りが上がってこないほどキンキンに冷やしてもバランスが崩れません。だから激安のスパークリングについては、ドサージュちょっと多めのものをよくよく冷やしてグビっと飲むのが最適。給料日前の週末にいかがでしょう?
 
※ドサージュ情報不明
 
 

「BRUT」のうちドサージュ少な目のもの

 
ドサージュ6~9g/Lだと「BRUTのうちドサージュ少なめ」。
おそらくこのあたりがボリュームゾーンです。いろいろな種類から選べますが、ドサージュ量がわからないものも多いです。
 
シチュエーションで提案することは難しいのですが、「生産者を知るにはまずここから」というポジションと言えるはず。
特にシャンパン生産者にとってスタンダードクラスは、世界中の人に飲み続けてほしいワイナリーの看板商品です。自分たちが考える伝統の「美味しい」が、これくらいのドサージュ量であることが多い。つまり最も哲学が表れています。
 
 
いつ飲むかわからないけど買っておきたいとき。BRUTのドサージュ少なめなら活躍の幅が広いはずです。
 
 

知るとより捗るワイン選び

 
「BRUTと書いてあったらスパークリングワインの辛口」
極論言えばそれだけ知っていたら十分です。
 
でもドサージュ量を示す「EXTRA BRUT」など他の表記や、それでワインの味わいはどう変わるのかを知っておくのは無駄にはなりません。飲んだことのないワインについて味わいの予想をつけたり、シチュエーションに応じたワインを選ぶ助けになります
 
今度スパークリングワインを口にするとき、よければ「この残糖度はどれくらいだろう?」と気にして味わってみ





※投稿に記載しているワインのヴィンテージ・価格は執筆時のものです。現在販売しているものと異なる場合があります。
購入の際は必ず商品ページにてご確認ください。




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